先輩の彼女(2)-(Said:火神大我)-    

俺には部活の先輩と言う訳ではなく、割と関わりのある先輩が居る。
名前は、先輩と言う。

その人が先輩の彼女だと知ったのはつい最近だった。

俺にとってその人は、俺がよく通うマジバの店員であり、俺の風貌にも動じない異性の先輩といった感じだ。目付きの悪い、クラスメートが言うところの悪人顔で、クラスの女子からも頗る不評ではあるが、その人は気にした様子はまるっきり無い。

寧ろ、容赦無くノーを突きつける。

だからと言って、何時も何時も怒る訳では無く、本当に駄目な時だけ怒り、普段は穏やかな人なんだと思う。

後、色々なマジバに行くが、先輩の居るマジバのハンバーガーの提供速度はピカ一だと思う。

そう言えば黒子も絶賛してたか…。


先輩のセッティングしたバニラシェイクは神です」


起伏が少ない彼奴が、幸せそうにそう言っていたのが印象的だった。

そんな先輩と伊月先輩が付き合っているという噂がある。

クラスメートの女子はよく、恋話とか言って、彼氏自慢をするが、先輩から伊月先輩の事はあまり聞かない。


(ああアレか?騒がれたりするのが嫌だと言う、日本人特有の奥ゆかしい感じか)


などと勝手に解釈していたりもしたが、並べてみても、似合う二人。

静かな雰囲気とか、なんというかしっくりくる感じだ。

だが、実は先輩と伊月先輩は付き合って無いという。

それを知ったのは、たまたま学校で先輩からマジバのクーポン券を貰った時だったか。

クーポン券のお礼を言って、そう言えば同じ一年の部活仲間が、先輩達が付き合ってるという話しを思いだして、俺は何気なく口にした。


「クーポン券どうも…です。そう言えば、先輩ってウチの部活の先輩の彼女って聞いたんですが…マジですか?」


クーポン券のお礼だと思っていたのか、先輩は瞬きをした。


「唐突だね火神君。彼氏ね…んーちょっと違うんだけど、それって伊月君の事かな?」

「はい」

「んーと。伊月君とは性格には彼彼女では無くて、友達以上、恋人未満の関係かな」

「は?」

「だから、友達以上、恋人未満…お付き合いするかどうかのお試し期間って言えば分かるかな?」

「何か色々大変なんスね」

「まぁ、お互いこれで案外丁度よい距離だからね。良いと思うんだけど…他の人から見ると不思議なのかもしれないね」

「でも、先輩達がそれで良いなら良いんじゃないスカ?」

そう俺が言うと、先輩は柔らかく笑った。

「皆が皆、火神君のような子だと楽なんだけど。兎に角、まぁ私と伊月君の関係はそんな感じだよ。だから、火神君もあまり気にせず今まで通りでいてくれると嬉しいな」

「ああ。大丈夫…ですよ」

「ははは。有難う。でも、本当に火神君は敬語苦手だね…私は良いけど、少しずつ慣れないと駄目だよ」


そう明るく言って先輩は、去っていった。

俺は先輩の去った後を見ながら心底思った事が有る。

(色恋ってわけわからねぇ…まぁ…先輩がそう言うならそれでいいのか)

そう思いつつ、例え恋人になった所で先輩たちはあまり変わらないのだとそう思った。


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2012.11.4.(WEB拍手掲載:2012.10.3.) From:Koumi Sunohara

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