先輩の彼女(1)-(Said:黒子テツヤ)-
僕の部活の先輩は皆いい人達ばかりです。
仲間を大事にするし、後輩の事も気にかけてくれる、優しく頼もしい先輩方です。
まぁ比較対称が、キセキの世代を有する僕の母校だから余計かもしれません。
気配が薄いとか、影が薄い僕にも気を配ってくれるし、キセキの世代までいかないけど、野生動物のような火神君に大しても割りと寛大です。昨年出来た、新設校であり、先輩が二年生しか居ないというのもあるかもしれませんが、僕は非常に居心地が良い場所だと心から思います。
そんな居心地の良い、誠凛バスケ部には影の薄い僕に割りと良い確率で気がついてくれる先輩が居ます。司令塔で、風紀委員をしている冷静で視野の広い伊月先輩です。
キセキの世代の黄瀬君のようなあからさまなキラキラしさがある訳ではありませんが、誠実な雰囲気を醸し出すイケメンさんです。
伊月先輩に彼女さんが居ると言う噂があります。それだけ、素敵な先輩なのだから、彼女が居ても可笑しくないと僕は思う。でも、どうせなら伊月先輩の彼女さんは素敵な人だったら良いと思うのは僕の勝手な願いなのですが…。
部活の最中に、伊月先輩とストレッチを組む事になった僕は素朴な疑問を口にした。
「先輩に彼女が居るっていう噂を聞いたのですが本当ですか?」
「ん。黒子はストレートだな」
「すいません。気になってしまったもので」
「黒子にもそういった俗物的なものに気になるだと、少しビックリしただけだ」
「そうですか?」
そう返す僕に伊月先輩は、何時もの柔らか表情を浮かべていた。
「俺に彼女云々の話な、一つだけ語弊があるんだ」
一旦言葉を切って、伊月さんが言葉の続きを紡ぎだす。
「正確に友達以上、恋人未満はの存在が居るってとこかな。俺としては、彼女と言い切りたいんだけど、彼女が頷いてくれないからさ」
伊月先輩の言葉に、僕は首を少し傾げる思いだった。
(黄瀬君と違って…真面目な先輩相手に、認めてくれない彼女さん…伊月先輩に問題何てなさそうなのに…不思議です…)
心の中で考える僕に、伊月先輩は僕の様子を気にした様子も無く言葉を続けた。
「何て言うのかな…相手あってのものだし…俺としては恋人って枠組みなくても良いと思うし…以外に俺のダジャレを馬鹿にしないで付き合ってくれる奴なんて居ないしな。本当に有難い存在なんだ」
晴れやかに紡ぐその内溶に、僕は引っかかりを覚えた。
(今…って…もしかして先輩?)
伊月先輩の言葉から出てきた、自分にとって聞き覚えのある先輩の名前に僕は頭を巡らせる。
僕のバスケでは無い…学校関係の先輩の顔が不意に過る。
同じ図書委員に所属していて、委員長を努めている、本が大好きで人当たりのいい先輩の先輩。
伊月先輩同様、影の薄い僕にも気付き、本談義に花を咲かせるその先輩を思い出す。
(先輩…確かフルネームがという名前だったような…でも同じ名前は結構あるだろうし…まさか?でも先輩なら伊月先輩とお似合いですが…)
「あの伊月先輩」
「ん?どうした」
「さんって…もしかして、図書委員の先輩の事ですか?」
おずおずと尋ねる僕に、伊月先輩は柔らかく笑う。
「ああ良く分かったなって…そうか、黒子はと同じ図書委員だったっけ。そう言えば、が素晴らしい文学少年と仲良くなったと言ってたけど…成程黒子のことだったのか。納得」
「そうですか…世間は狭いですね」
「本当にな」
「でも、先輩と伊月先輩なら本当にお似合いだと思うですけど…先輩って相当テレ屋さんなんなんですね」
そう僕が言った直後、後ろから日向先輩にどつかれた。
「だぁほ。テレ屋とか奥ゆかしいとかのレベルじゃなくて…と伊月の最初の関係がそもそも問題なんだつーの」
「ん?やだな日向、そんな事無いって」
「あるだろうが…。残念なイケメンの話題から始まって…ダジャレのネタ帳の事に辿り着き、自分よりオモシロイと思われるダジャレをに考えさせて…ダジャレ談義の出来る彼女にするならだって事で、交際に発展すること混みでダジャレを語り合う同志としてこれからヨロシクみたいに始まった、一方的な伊月要望で対等な立場じゃねぇつーの」
疲れた様に、伊月先輩と先輩のあらましを僕に説明してくれた日向先輩は本当に疲労困憊という表情でした。
「同意なしはよろしくないかと…」
日向先輩の言葉に、僕は部活の先輩より天秤は委員会の先輩に思わず傾いた。
「だから、語弊ってそこ。交際に発展すること混みでダジャレを語り合う同志としてこれからヨロシクって事で、との関係があるのは事実だから、残念ながら彼女じゃ無い。まぁ、も本気で無理ならソレすらも断るだろうから…あれだけどね」
「まぁ…には悪いが俺としては、人身御供として伊月の彼女に納まって欲しいところだが…あのダジャレに関しては同情に値するから微妙だぜ」
「僕も先輩と伊月先輩はお似合いだと思うので良いのですが…そんなに酷いんですかダジャレ」
「気になるなら、数冊貸すか黒子?」
瞳をキラキラさせて、そう言う伊月先輩に僕は折り目正しく御断りの言葉を告げ、そこでこの件についての話は終了と相成った。
(ただ…伊月先輩は少し涙目で…日向先輩はしたり顔をしていたように見えたのですが…気の所為でしょうかね?)
何て心の中でそう思ったのである。
後日、図書委員の部活中に先輩とこの事を話した時の先輩の表情は何時もより柔らかく見えた気がする。
「案外この中途半端な関係が心地よいのかもしれないかな」
伊月先輩との関係にそう言った先輩の言葉が、何となく一番しっくりくるような気がした。
(優しい先輩達に囲まれて僕は幸せ者ですね)
僕と先輩たちとの関係は、まだまだ始まったばかりである。
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2012.10.8.(WEB拍手掲載:2012.9.4.) From:Koumi Sunohara