恋乞い 12  


秋空を眺めていた居たと思えば、築けば頬に冷たい風が突き刺さる冬が来て。
我がサッカー部も順当に、冬の国立の舞台に立った。

3年の先輩の最後の大舞台に、自分たちもはじめ周りの学校の選手も、気合の入り方が違った。
凛とした冬の寒さと…試合に張りつめた糸の様なそんな表現の似合う舞台。

全国での一握りの者しか立つことの許されない舞台に。

直接的に私が立つ舞台では無いけれど、マネージャーとして側で見ていた人間として…この夢舞台になつ重大さは分かるつもりでいる。

どこのチームも死力を尽くし戦い、涙し健闘をたたえ合う。
この高校サッカーの最高峰に2年連続出れた誉に万感の思いと言う言葉しっくりとくる。

結果としては、ベスト3。
全国3位と言う結果である。

勿論目指すは頂点であるが、この結果も素晴らしいものである事には変わりないし…この結果が次の高みを目指す為のステップになるのだ。

(正直…全員に百点満点あげたいくらいなんだけど…まぁ勝負は勝負だからね)

ここまで戦った、全てのチームと自分のチームを思い浮かべながら私はそう感じずにはいられない。

けれど、勝負は何時でも白黒をつける競技。負けがあるから勝ちがある…結果だけみればそうれまでかもしれないけれど…私はそのプロセスも大切な存在だと思わずにはいられない。
例え甘い考えであっても。

そんな訳で、我が海常サッカー部はこの結果を胸に、高校サッカーの頂を目指して再出発を図るのだ。

先輩…来年は絶対に先輩を優勝するところ見せますから」

「君たちの全力が見れれば、満足だよ。結果がついてくるとそれはそれで嬉しいけどね」

後輩の言葉にそう返せば、周りの皆も小さく笑いが起きる。
悔しくないと言えば嘘になるだろう…それでも、ピント張った糸は少し緩めないと切れてしまうことを、彼らはよくわかっている。

(理想…目標…それを完璧にクリアーする事ができるのは、一握りの存在だと知っているからね)

そう感じながら、私は少しだけ引き締めるような言葉を紡ぐ。

「有望な新人の補強もしたし…それ以外で入ってくる後輩もいるから、ウカウカしてられないよ」

「違いない…レギュラー争いは壮絶だからな」

「新入生には負けませんて…勿論先輩からもポジション奪うつもりスから」

私の言葉に、口々に後輩に同輩は言葉を交わす。

「そういえば、笠松の所には…何てたっけ…なんかスゲー1年獲得したんだっけか?

「ああ…確か、キセキの世代だかって…凄い子らしいよ。確かモデルもしてるって」

「モデルだ…何だリア充か?爆発すんのか?」

「いやいや先輩リア充全員爆発してたら、色んな意味で事件スから」

ボケる同輩に後輩の微妙なツッコミがさく裂する。

「まぁまぁ…苦労するのはバスク部さんで、ウチじゃないんですから良いじゃないですか…ね、先輩」

「そうだね。まぁ…モデルだろうが何だろうが、この弱肉強食の世界に生き残れないとそこまででしょうし…バスケ部が色々な意味で大変そうなのは目に見えるようだけど」

肩を竦めてそう口にすると、「そりゃそうか」と一同納得して頷いた。

(笠松君の血管が切れないと良いのだけど)

割と短気な笠松君を思い浮かべながら、私はそう思う。

「1年なんてあっという間に終わってしまうわ。桜が咲く前に新体制で動けるようにしなくちゃね」

私がそう口にすると、皆は大きくうなづいた。

春の足音はもうすぐそこまで来ているようだった。


NEXT→13


2015.8.28. From:Koumi Sunohara

-Powered by HTML DWARF-