〜不思議な魔法〜No2








一方その頃の、手塚はと言うと…。
乾と不二の質問攻めにあっていた。
実にお約束的な展開である。


「ねー何でかな、手塚」


一部の部員達が凍りつくと言われている、微笑みのままで不二は言う。
手塚は、それらの言葉を完全に無視をする。


(変に不二のペースに合わせると厄介だしな。聞かなかったことにしておくか)


「聞こえてるよね、手塚。無視するのは、よっぽど聞かれたくない内容なのかな?」


かなり、言葉が刺々しい不二。


(さっさと、吐けば良いのに…本当に頑固だよね手塚は)


不二はヤレヤレと思う。


「不二…」


手塚はさらに、眉間に皺を増やす。


(何故、その話題なんだ?それより、部活が成り立たないな)と手塚は思う。


「おや?当たりか、手塚」


ノートを開きながら傍観していた乾も続く。
その言葉が手塚の引き金を引いた。
ピク。
こめかみに青筋が1本現れる。


「不二、乾グラウンド20周」


手塚が、職権乱用とばかりに話を強制終了させる。
そう、何時も部員を黙らせる必殺技である。


「職権乱用だぞ、手塚…。まー良いけど、後で手塚の練習増やすから」
 

データーノートを開きながら、眼鏡を不適に光らせて乾が言う。


「久々に、手塚の面白い姿が見れそうだから…今日の所は引いてあげるよ」
 

両者は不敵な表情を浮かべ、そう言い切るとさっさと走り出した。


(そんなに、不思議なんだろか?に取材許可を取らせたのが…(-_-))


走る不二と乾を見て手塚はしみじみと思う。
質問の内容はと言うと、至極簡単。
“何故だけが、取材許可及びマネージャにしたのか”である。


青学テニス部は、女子マネージャを取ってない。
それは、わりとと言うか…かなり粒ぞろいで花のある部に、ミーハ根性の女子生徒が殺到した為である。
部活を円滑に行うのに支障がきたすと手塚が、良い顔をせず…必要無いと言い切った事により成立したようなもの。


ようするに、女子マネを入れないことは暗黙の了解になっていたと言うわけだ。
それなのに、の登場である。
他の部員が困惑や興味深いのは無理もない話だろう。
しかもあの手塚部長のお墨付き。
気になるな!と言う方がおかしな話であろう。


「手塚、でも本当に女子マネージャを入れるなんて、どうゆう風の吹き回しにゃ?」

 
菊丸が心底不思議そうに手塚に尋ねた。


「お前まで、その話題か…菊丸」

 
疲れた用に、手塚は菊丸を見る。


「でも〜今まで、マネ希望の女の子とかこの前取材に来た女の子だって、ココまで入れることだって無かったからにゃ。」


菊丸の言葉に、河村も珍しく賛同する。


「確かに英二の言うのもあるよね。手塚、多分簡単な説明ぐらいないと…皆納得しないんじゃないかな。と言うより…質問責めで部活にならないし…さんを連れてくるのに悶着あったようだしさ」


河村がやんわりと手塚に言う。
ため息一つつく手塚。


「分かった…彼奴等連れてきてくれ…説明するから」


額に手を置いて手塚は河村に言う。
河村は以外に早く折れた手塚を見て、少し驚いたが平然を装って頷いた。


「まったく…」

 
河村が居なくなった後に手塚はボソリと呟いた。





手塚が説明するとの事で、乾と不二は手塚の前に仁王立ちして手塚を見つめていた。


「やっと話す気になったの手塚?」
 

嫌なオーラを漂わせて不二は、手塚に向かう。
よほど先程走らせられた事に少し根に持っているようだ。


「説明ぐらいは、必要かと思ったからな」

 
当社比1.5倍ぐらい眉間に皺を寄せて手塚が答える。


「ふ〜ん、まー良いけど」

 
不二が意味深に手塚を見る。


「で…どうしてOKした訳?」

 
ノート片手にボールペンを手塚に軽く向けて、乾が尋ねる。


「…は、他の連中とは違って仕事に誇りを持って真面目にやっているからだ」


不動峰の伊武君を思い出させる様にボソボソと手塚が言葉を紡ぎ出す。
元々饒舌では無い手塚だったが、何時もよりも歯切れが悪い。
そこに気が付いて、不適に笑うのは勿論この方で…。


「他の子も真面目に、やってる人もいると思うけどね」


サラリと意味深い笑みを浮かべて不二が手塚に切り返す。


「何が言いたいんだ不二?」
 

眉間に皺を寄せて不二を見る手塚。


「公私混同で取材許可取らせてのかと思ってね」


ニッコリと言い切る不二。


「不二〜っ」


河村が慌てたように不二を呼ぶ。


「かまわん河村。不二悪いがそこまで、公私混同している覚えは無いぞ」


「“そこまで”ね。クス」


不二は不敵に笑う。
手塚はその言葉に“しまった”と思った。
が平然を装い不二を見る手塚。


「“そこまで”と言うことは、少しは有るって事だよね手塚。ふふふふふ。そんな怖い顔しないでよ。別にさんが取材するのも臨時マネ扱いなのも不服は無いんだよ僕は」


悪戯が成功した子供のように、不二は楽しげに笑いながら手塚に言う。


「じゃ何故こだわる?異論は無いのだろ」


半ば投げやり気味に、手塚が言葉を紡ぐ。


「ああ異論は無いよ手塚。それは皆納得してることだからね」


「だったら…」


「でもさ、気になるでしょ浮いた話が無かった手塚が公私混同してまでをマネージャーにする何てね」


「はぁ?何言ってるんだ不二」


「何って…君がさんの事が好きだから、臨時マネにしたのは…手塚がさんが好きだからなんでしょ」


「俺がを?」


「しらばっくれても無駄だぞ手塚」


「だから…お前達何を言ってる?」


「くどいよ手塚。だから君がさんの事が好きだから、マネにしたってことだけど」


「嫌いでは無いが…特別な感情は抱いていないぞ」


シーン。
水を打ったように静まりかえる。
固まるレギュラー陣。


「じゃ〜何ではOKな訳なのにゃ?」


「だから先ほど言った通りだが」


手塚はシレッと言い切った。


「それも有るだろうけど…僕が聞きたいのは…」


そんな手塚にやや顔を引きつらせた不二が口を開く。


「コレばっかりは…口を割る訳にはいかん」


そう言ったきり、手塚は貝のように口を閉ざした。
嫌な沈黙が辺りを包んだ。



しばらくして…。


「手塚が頑なに言わない所を見ると…大石絡みかな」


データーノートを数ページ開きながら、押し黙っている手塚に乾はそう言葉を放つ。


「…」


押し黙る手塚に、不二は“ふーんやっぱりね”と相づちを打った。


「大石と?にゃんでまた…何か共通点有ったかにゃ?」

 
うにゅ?と唸る菊丸を不二は少しばかり不機嫌そうな目線を送った。


「英二…黙っててくれない?話が進まないから」


「だって〜大石ってば、と同じクラスににゃった事無いにゃ!」

 
普段なら不二の開眼にビビル菊丸だが、今日はひと味違っていた。


「俺は大石にパートナーだけど、大石はそんな話し1度もしてにゃいし…の事話しても、過剰な反応しなかったにゃ!!」


「でも英二。大石はあんまりそう言うこと言わないだろ」


「まぁ〜そう言われれば、大石はそうかもしれにゃいけど…。で大石は、このコト知ってるのかにゃ?」


小首を傾げて菊丸は手塚に尋ねる。


「知らんだろうな」


「えっ?大石…この事知らないの?」


河村が手塚の答えに慌てたように、そう口にした。


「悪まで…俺の憶測でしか無いからな…。言わなくても良いと思っただが」


一同手塚の言葉に一瞬フリーズ状態になった。


「でもさ、言わなくて良いって…手塚は何がしたいわけ?」


「そうにゃ。意味分からないにゃ」


「そう言われれば、何がしたかったんだ手塚?」


皆の言葉に手塚は困ったように眉を寄せた。
そんな手塚に助け船を出すかのように、不二が言葉を紡ぎ出した。


「でも手塚、よく気が付いたね(憶測でも)。」


「昔ちょっとな」


言葉を濁しながらも、掻い摘んで大石との話を手塚がする。
その手塚の話に不二は口を開く。


「成る程ね」


「コレが大石との共通点と言う訳か」


“ふむ”と乾は口元に手を当てながら、ノートに何かを書き込んだ。


「で…大石本人はまったくこの事態を知らないと…」


「それってマズイじゃないのかな」


河村が困った様に眉を寄せて言う。


「何か問題でもあるのか?」


目をキョトンとさせて、手塚は質問に返した。


「仕方が無いね…コレばっかりは…手塚じゃね。大石の為にも協力するしかないね」


「でも問題は大石が本当にさんの事が好きかどうかって所だよね」

 
正論を述べる河村。


「取りあえず大石がどうでるか、出方を見てからでも手を打つには遅くないって所だね」


不二は溜息を1つついてそう言う。


「うにゃ〜。暖かく見守るって事だにゃ」


“うんうん。青春だにゃー”と頷く菊丸。

 
「で、この件に関してはこのメンツだけの機密事項ってことで話を進めるって感じだね」


菊丸の言葉に続き、河村が相づちを打つ。
一同それに習って頷く。
と…その時。


「珍しい組み合わせで、何話しているんだい?」


「「大石」」


「あれ?どうしたんだ皆して固まって」


大袈裟な反応に、ひょっっこり現れた大石は少しビックリしながら口を開く。


「何だよ皆して。そんなに驚くコト無いだろ」


滅多に意見が一致しないメンバーが声をはもらせて、大石の名を呼んだので…大石は苦笑混じりにそう言った。


「それにやけに、テニスコートが騒がしいようだけど…何か有ったのかい?」


「にゃ…にゃんでも無いよ大石が気にするような問題は起きてにゃいから安心してよん♪」


にゃははははと笑いながら、不自然な程明るく菊丸は大石に言った。


「何か英二顔引きつってるけど…」


不自然なダブルスのパートナーに大石は不思議そうに菊丸を見て言う。


「にゃははは気のせいだよん♪」


「多分ね英二は先乾が、究極の野菜汁の話をしていたから」


「乾…また野菜汁作っているのか…しかも究極って…」


顔を引きつらせて、不二とその隣に居る乾を見て口にした。


「にゃはは…その内至高の乾汁が出来るのにゃ」


「英二…美味しんぼ読み過ぎだよ」


河村がすかさずどうでも良い突っ込みを入れる。


「と言うわけだから、大石も乾の究極の野菜汁に気をつけようね」


「何だ酷い言われようだな〜。今回のは真面目に美味しさを追求したんだけどね」


「乾が作った時点で、怪しいんだにゃ」


「英二言い過ぎ…」


「でも乾の野菜汁僕は、好きだけどね」


「そんなことを言えるのは、不二…お前だけだろう」


「やだな〜手塚。本当にお勧めなんだよ」


話が逸れたことに、ホッとしながらも3年レギュラー陣は、これからと大石をどうやってラブラブにさせるかで頭が一杯だった。
当事者達にはお構いなしに。


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                         2002.9.27. FROM:Koumi Sunohara







★中書き&言訳★
久しぶりに更新で、。
やはり私は連載に向いていないな〜と切実に思いました。
まだ結構続くのですが…何時終わるやら…私にも良く分かりません。
ははははははいい加減だ(汗)
毎度ながら、大石君の出番が少ない。
一応彼が主役なんだけどな…(苦笑)
次はおそらく、大石君とさんの出会いの大石君編か…さんサイドのどちらかになると思います。
それでは気長に続きを待って下さると幸いです。



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