震える手…
上手いかない感情のコントロール
心臓がゆう事を聞いてくれない
自分自身なのに…
圧し掛かるは…不安と緊張
どうしたらよいか分からない…
そんな想いが…
また新しい不安を招き入れて…
気が付けば悪循環…
そんな気持ちを…和らげる方法ってあるんでしょうか?
【〜不思議な魔法〜】
サワサワと心地よい風が吹く。
春の野の匂いを含んだ風が木陰で何やら必死になって紙と向き合っている、少女の頬を掠める。
「ああ〜どうしよう…原稿書けないし…緊張して訳分からないし…こんなんじゃ失敗しちゃうよ〜どうしよう…」
蹲って頭を抱える少女。
何故この少女コト“”が困っているかというと…。
本日は、初めてメインで放送のアナウンスをする事になったからだ。
1年生にして始めての大仕事。
嬉しさも大きいけれど、初めての不安と緊張が其れを上回ってを苦しめていた。
普段ならかける原稿も、今日は一向に進まない。
しまいには手は震えるし…頭はもうパニック状態。
普通の思考が上手く出来ない。
「本当に私何かじゃ駄目なんだよ〜ああ先輩に申し訳が立たないよ」
ボソリと不安の声をが漏らした時だった…。
「大丈夫だよ、何時も通りにすれば良いんだから」
緊張して、少し震えるに低過ぎるわけではない落ち着きのある柔らかな声がかかる。
(へ?誰…)
は声の主が気になった。
しかし、緊張していたため顔を上げて見る事は出来なかった。
「そんなに、緊張しなくても良いんだ。君は何時も、頑張ってやっていたんだから…その事は皆知ってるんだ」
「でも…失敗とかしたら…皆に迷惑かかるし…原稿の文字も震えて書けないし…どうしたら良いか分からないし…」
「じゃー、コレ」
ヒラリとの前に1枚の紙が舞い落ちる。
「コレ…今日の原稿…何で…」
「そんな事より、肩の力を抜いて」
「でも…」
何か言いたそうには不安そうに口を開く。
「大丈夫、失敗なんてしない。あれだけ毎日練習してるんだから」
声の主はハッキリと言いきる。
「そうでしょうか…?」
不安を拭いたくては尋ねる。
声の主は柔らかな口調でに言い聞かすように言う。
「ああ。そうだ…ココを何時もの場所だと思ってごらん」
声に従って、は何時もの場所を思い浮かべる。
そうすると、不思議との震えが止まっていく。
(何時も通りの私…何時もの場所…)
声の主の言葉は、呪文のようにの中で呟かれる。
「そう、ココは君が居る…君が頑張っている何時も場所だよ」
酷く心地よい声音。
「何時もの場所」
譫言のようには言う。
「そう…何時もの。さー深呼吸してごらんきっと落ち着くから」
スーッ。
は目を瞑って大きく深呼吸を1つ。
「ガンバレ…君なら出来るから、安心して」
風に乗って微かに声の主の声音がそっと聞こえた。
(そうだね…きっと出来るよ…大丈夫)
は深呼吸を終えると軽く目を開ける。
そこにタイミング良く声が…。
「〜、準備良いか」
少女…を呼ぶ声が、直ぐ側から聞こえる。
「はい!今行きます」
は直ぐに、返事を返し歩き出す。
(そうだ…先の声の人にお礼を…)
そして思い出したように、緊張を解いてくれた恩人をは探す。
(あれ?…すぐ側から聞こえたように思えたのに…)
その人物は、もうその場には居ない。
(気の所為だったの?私の…)
小首を傾げて、は周りをもう1度見渡すが…姿さえ見ることはない。
「〜。もー早く!!」
そこにの友達が、痺れを切らして迎えにくる。
「あっ…分かってる。でも…」
(あの声の人に…お礼を)
は、友達に少し待って欲しいと顔に出す。
「良いから、ホラ」
しかし友達はを、促す。
引きずられるようには皆の待つ場所へと連れて行かれる。
引きずられながら、は独り言のように呟く。
貰った紙を大事そうに握りながら「…また、会えるかな…」と。
「はぁ?何か言った?」
友達は訝しそうにに尋ねる。
「うんうん。何でもないよ。さっ、頑張ろう」
は笑顔を作って友達にそう返す。
「変な」
友達はそう呟くとまた、を引きずり始めた。
しかし今日というこの日は…。
の中で、この日からコノ出来事はかけがえのないものとなっていた。
あの一件から時間は流れに流れ、3年生にはなった。
は今日も、仕事を賢明にこなしていた。
不思議な出会いがを成長させたように、彼女は目覚しく頑張っている。
そのの仕事はと言うと…放送部のアナウンサー。
故に彼女は、早朝放送、昼休みの放送の原稿作りや放送をしている。
普通の3年生ならば、もう少し楽な仕事を任されるのだが…。
の仕事のこなしぶりの良さに、皆彼女に頼る。
その為3年生に上がった今も、彼女はこの部の指導者としてなくてはならない存在となっていた。
(今日の学校の連絡事項は…っと)
先生から渡された、連絡事項のプリントをは見ながら後輩のための原稿作成に励んでいる。
すると…。
「先輩〜」
今年入った新入生の1人が、に泣きついてくる。
「何?」
は柔らかく後輩に言葉を返す。
「えっと…えっとですね〜…どうしたら先輩みたいに、堂々とアナウンスできるんですか?私てば緊張しちゃって…全然駄目なんですよ」
「堂々としてるかな?私」
後輩の言葉には思わず、尋ね返す。
書いている原稿の手を止めて、シャープペンで自分を示すようにして後輩を見る。
「はい。私にはそのう見えます」
“違うんですか?”と後輩は付け足しながらに答える。
「はははは私だって緊張ぐらいするよ」
困ったようには微笑みながら後輩に言う。
「嘘だ〜っ。だって、先輩間違っても冷静に対応してるじゃないですか」
「でもね、内心ドキドキしてるんだよ」
「でもでも」
後輩はに、違うと言いたげに言う。
(そこまで…頑張られてもね〜…本人が緊張するって言ってるのに…)
後輩の様子を見ながらは苦笑を浮かべる。
「そうだね〜、私の場合“願掛け”と言うか“おまじない”みたいなので緊張を解してるから」
そして、はその“おまじない”の話を後輩に聞きたいとせがまれ…その話を後輩にする。
結構押しに弱い人間の様である。
「へ〜そんなこと、あったんですね」
後輩はの話を聞いて、そう返す。
「で…その恩人さんには、会ったんですか?」
興味津々に後輩はに尋ねる。
後輩の問いに、首を横に振る。
「探さなかったんですか先輩?私なら探しちゃいますよ!!」
の反応に後輩は力説してくる。
その様子を少し唖然としては見る。
(何でそんなに…興味持つのかな〜)
「だってね…私も切羽詰まっていたし…声しか分からないからね」
「え〜、その人絶対先輩のファンですよ!!身近にいるかもなのに〜…ああ先輩の王子様〜」
自分の事のように悔しがる後輩には少しだけ、話した事を少し後悔していた。
(何でまた…こんな話をしちゃったんだろうな…しかも王子様って…かなりこの子ドリーマーなのね…でも…確かにあの時の私には…王子様だったんだろうな)
とはぼんやり思う。
そんなに、また後輩が唐突に声をかけてくる。
「先輩!何か私も頑張れそうな気がしてきました」
「そう?」
「はい。人間努力すれば何とかなるって分かりましたし」
ガッツポーズをして満面な笑顔でに言う後輩。
「なら話して良かったかな」
後悔していただが…少しホットしたようにそう返した。
後輩はの言葉を聞くと、嬉しそうに笑うと放送室のドアを開ける。
「でも…先輩!ちゃんとその恩人さんを…探した方が良いですよ。じゃ〜先輩また後で」
ヘラリと後輩は笑うとそんな言葉をに言って、放送室を後にした。
「ははははは」
(全撤回…やっぱり言わなきゃ良かったかも…)とは走り去る、後輩を見て心底思った。
「さて…私も教室に戻りますかね」
ドタバタとした朝が過ぎて、時間はドンドンと流れていく。
気が付けば時間は放課後。
帰り支度中のに、放送部の部長が尋ねてくる。
何の用だろうと?が部長へと視線を巡らせると…。
「な〜、テニス部に取材に行ってくれないか?」
放送部の部長がに突然そんな事を言いだした。
「え〜っ!何で私〜なんですか?」
当然驚く。
当たり前である…開口一番にそんな事を言われれば誰だって驚くモンである。
は、驚きながらも部長に返す。
「それに取材関係は、報道班の仕事じゃないですか!しかも、何時もは新聞部が取材したモノを…ココで流して…」
が言い終わらない内に、部長がばつ悪そうに口を開く。
「いやな…今年新聞部の取材がさ〜断られてな。も知ってるかもしれないけどさ…新しく就任した部長がこれまたミハーで…手塚が断ったらしい」
「じゃーじゃ、報道班は…」
は、最後の望みを部長に言う。
補足:報道班とは…放送部の中で原稿の材料となる部分を取材するチームを指す。
が…それは、あっという間に崩される。
「問題外。皆手塚に恐れをなして…再起不能。もう使い物にならん訳さ。何せ手塚眉間に皺寄せて、報道班見るもんだからさ。で…ってミハーそうじゃないし、真面目に仕事とかしてるだろ…だからだよ」
サラリと部長は言う。
「他にも凄い人がいるじゃないですか部長〜…私を取材に行かせなくたって〜」
勿論は、部長に抗議する。
部長は少し唸りながらを見る。
「う〜ん。乾の薦めと…あの手塚がなら…て言うお墨付きなんだよ。だから、頼むって」
パン。
良い音を出して部長は両手を合わせる。
(私…神社かなんかと…勘違いしてないかな〜部長ったら〜…しかも何故に乾君の薦め?)
「でも…テニスなんて興味無いので…全然知りませんよ私。追い返されるのが関の山です」
最もらしい言葉をは言う。
しかし…部長は全く気にする様子は無い。
「その点については、大丈夫」
「はぁ?」
部長の言葉に間の抜けた声を思わず出す。
「何が、大丈夫なんですか〜部長!!サッパリ分かりませんよ」
「その事何だけど…」
部長部が口を開こうとした時…部長の後ろから声が聞こえる。
「問題ないよ。は今日から、臨時でテニス部のマネージャーになって覚えて貰うから」
逆光モードで、を薦めた人物である乾が突然口を挟む。
「乾君…何で、ココに(汗)」
逆光モードの乾の出現にはかなり
「ん?何でって?そりゃー、臨時マネージャーのを迎えに」
サラリと言いきる。
「あの…私まだ返事を出してないんだけど…」
「さん、勿論来てくれるよね」
さらにその後ろから、不二が笑顔で声をかける。
「…」
は、その声に冷や汗が出てくる。
(な…何で、こんな所に青学の有名人が…わざわざ来るの〜…しかも、不二君まで)
「ですから…私は。それに、乾君がマネージャーでしょ。私何か行ったって迷惑かけるし…女子マネとって無いでしょテニス部」
「残念俺、レギュラーに復帰したし…それに別に、人手は有るに越したこと無いし。女子マネは居ないからさ、丁度良いんだよね」
乾が直ぐに答える。
「う…」
はその言葉に唸る。
(何としても…私にマネージャをやらせようとしてるよね…部長も共謀だし…)
「大丈夫、さんなら直ぐに仕事覚えそうだし。皆も喜ぶよ」
「だから…何で私何です?他にも良い人材いるじゃないですか〜」
「だってね〜、満場一致ってやつだし。ね〜乾」
不二は乾に同意を求める。
「ああ、は人望も厚い。先生をはじめ全校生徒のほとんどがを知ってるし信用もある。あの手塚が、ならと承諾したぐらいだしな」
「テニス部の皆さんがOK出しても…ホラ、ファンの子達が納得しないっじゃない。私まだ平和に暮らしたいし…」
「ああ、ソレね」
不二がニッコリと微笑む。
「でしょ、だから私は出来ません」
「そっちも話付いてるから心配ないよ」
「はぁ?」
「って有名人だから、楽だったよね乾」
「ああ、誰も“放送部が誇るメインキャスター”がテニス部取材の為に、マネージャするのに興味津々だったしな」
「あの…それって、何時から出てる話?」
「あれ?知らない結構前からだよ」
「部長〜、謀りましたね」
ムッとは部長を見る。
「だってな〜、良い話題性になるだろ?」
「そう言う問題じゃ無いでしょ!!じゃ〜もしかして、新聞部と報道部の話も嘘ですか?」
「嫌、アレは本当の話」
部長の変わって乾が答える。
「だから、諦めて部活に行こうねさん」
悪魔の微笑みを浮かべて、不二が言い切る。
「拒否権は…無いって言うんでしょ」
廊下側に体を向けて、は不二に言う。
「ん?そうだね、逃げても無駄だしね」
「でも、逃げきってみせます…自分の平和の為にも〜」
はそう叫ぶと、一目散に走り出す。
「だから無駄だっていってるのにね」
(急いで帰ろう…取り合えず今日だけでも…)
は必死になって廊下を激そうしていた。
勿論文化系なに、激走なんて辛い訳で。
息を切らしながら、校門手前で一呼吸置いた。
(良かった…追ってきてない)
ホッとして、は辺りを見渡す。
が…。
「逃げ切れると思ったら大間違いだよ☆」
脳天気な声が、の耳に入る。
(まさか…)
嫌な予感を胸に抱きながら、は振り返る。
ソローリ。
「にゃはは〜。やっほ〜菊ちゃんです〜☆」
ピース。
vサインをしながらテニス部の菊丸英二がの前に立ちはだかる。
「き…菊丸君…」
「にゃははは♪俺の名前覚えてくれたんだ〜嬉しいにゃ〜」
本当に嬉しそうに菊丸は笑ってに言う。
「○×△□…(知ってるわよ…テニス部の有名人なんだから〜 ←訳)」
パクパクと声にならない声を菊丸に返す。
「そんな嫌そいうな顔しないでよ☆別に、苛めてる訳じゃなにゃ〜いのに」
「…」
今だ口をパクパクさせては菊丸を見る。
「残念無念また来週〜。てな訳だから、諦めて一緒に来るのにゃ」
にへへと菊丸は笑う。
「嫌…いや〜!!!」
やっとの思いでが声を発する。
はまた走り出そうとするが、体が突然宙に浮かぶ。
(へ?何?何〜?)
困惑気に視線を巡らせる。
「英二先輩捕獲しましたよv」
Vサインしてを担いだ桃城が菊丸に言う。
「にゃは♪でかしたぞ桃〜」
菊丸もVサインを返して桃城に言う。
「ふぇ?」
一人何が起きたか分からないは間の抜けた声を出す。
「先輩申し遅れちまいましたが…俺は青学2年テニス部桃城武…桃ちゃんで結構ス。後…先輩、
手荒な真似本当にスイマセンス…でも堪忍してくださいね」
“はははは”と桃城は爽快に笑いながらに言う。
「へ?桃城君?自己紹介は良いから…降ろして〜」
「桃で良いですってば先輩。それと、先輩のお願いでも降ろせませんよ」
「い〜嫌〜降ろしてー〜」
「はいはい、後でジュース奢ってあげるから落ち着いてにゃ」
菊丸は“にゃ♪”っと笑うとにそう言う。
(私…聞き分けの無い子供か何かと勘違いされてる?もしかして)とは内心思いながらは抗議の言葉を口にする。
「別に要らないから、見逃して〜」
「ジュースぐらいじゃ機嫌なんて直りませんよ菊丸先輩。先輩俺からは…焼きそばパンも付けましょう…それとも、クリームパンにします?ああモス奢りでも良いスよ♪」
「どっちも要らないから〜お家に帰して〜」
「そいつは出来ね〜ス。青学きってのメインキャスター先輩の頼みでも…聞けね〜聞けね〜ス」
「メインキャスターじゃ無いもん…良いからお家に帰して〜」
「だから諦めて下さいって…先輩」
桃城と菊丸に捕獲…と言うより…拉致られたは、結局テニス部の部室に連れて来られていた。
「だから逃げても無駄よって言ったんだけどね〜」と桃城に担がれてきたに不二は開口1番にそう言った。
「だって…逃げれると思ったんだもん」
頬を軽く膨らませては不二を見る。
「んーちょっと無理だったね。何せ青学テニス部には、データーマンが居るからね」
ヨシヨシとの頭を撫ぜながら不二はにそう返す。
「大丈夫何の心配も無いよ。さんを苛める奴なっていないからね」
は意識が半分遠のきながら、不二の言葉を聞いていた。
「はぁ〜っ」
大きく溜息をつく。
(どうしょう…本当に緊張してきたよ(-_-;)私なんかじゃ出来る訳無いのに)
ブチブチとは心の中でそんな事を思う。
「さん…さん」
の耳の遠くで、微かに声が聞こえる。
「はっ…はい」
自分を呼ぶ声には慌てて反射的に返事をする。
しかも、背筋はしっかりと伸びていた。
「大丈夫?さん。かなり、顔色とか良くないけど」
河村が心配そうにの顔を見ながら言う。
どうや、先からを呼んでいた声は河村だったらしい。
(あっ…どうしょう、心配までかけちゃった…ただ私が一人緊張しているだけなに)
「あのね、別に河村君の所為じゃないんだよ…ただ、他の皆があんまり上手くいかなかった取材を私なんかが出来るか不安なだけなの。勝手に、緊張してるだけだから」
は“気にしないで”と河村に笑ってみせた。
「そう、でも無理はしない方が良いよ。体に悪いって言うからね…大石が居れば、もっと気の利いた事言ってくれるんだろうけど…無理は駄目だよ」
河村が念押しするように、に言う。
その様子を見ていた部員も、を心配そうに見る。
それ程まで、の顔色が良くないのだ。
ちなみに本人にには、自覚症状が無い。
「そう言えば、先輩でも緊張するんだね、以外〜」
越前が、をマジマジと見て率直に言う。
その言葉にが少し目を見開く。
「そう言えばそうだな。は何時も、失敗の許されない世界にいるのにな。こんな取材朝飯前だと思ったのだか…その件にかんして聞かせてくんない?」
越前の言葉に、乾が直ぐ様に尋ねる。
しっかり、データノートを用意している。
(こんな時でもデーターですか…それはもはや趣味?)
「朝飯前だなんて、そんな訳ないよ。何時も、心臓バクバクで緊張してるよ(>_<)」
がそう言う。
「そんな風に見えないけどな〜。じゃーどうやって緊張ほどいてるの?ソレに興味あるんだよね僕的に」
今度は不二がすさず尋ねる。
「えっと…おまじない…と言うか暗示みたいな事かな…ジンクスみたいな感じで…それをやると不思議と落ち着くんだ」
頬を照れたようには呟く。
「ふふふ。さんらしくて、可愛いね」
「ふ…不二君からかわないでよ〜」
(からかってないんだけどね)と声には出さずに、不二は心の中でそう思うのであった。
不二の言葉に完全に照れてるに乾はニュイッ〜と顔を出す。
「で、その暗示は、具体的に」
乾がすかさず突っ込む。
「え?具体的?なな何でそんな事聞きたいの乾君?」
かなり焦りを隠せない。
(報道班や新聞部並の突っ込み…流石データ―マン“乾貞治”?だから…何で私の情報がいるの〜)
困惑全開の表情で、乾を見る。
「まー参考に」
乾は気にした様子も無くサラリと言う。
(何の参考?私の情報は何に使われるの〜?)
乾の言葉に疑問符を浮かべる。
「何に使うのそんな情報?」
気を取り直して突っ込み返す。
「ん〜?色々かな」
メガネを軽く直しながら、不敵な笑みを浮かべて乾は短くに返す。
(色々って…)
無論は益々、乾に不信感を抱くのは言うまでもなかろう。
「で…どんなもん。大体噂では聞いてるけど、信憑性を求めるって意味も兼ねて、教えて欲しいだけどな」
乾がズズイとの真上に現れる。
その所為では少し、顔が引きつる。
(乾君のドup…それ以前に…噂って…)
そこに不二が…。
「乾、女の子がおまじないとかジンクス使うって言ったら、一つしかないでしょ」
ニッコリと微笑む。
何処まで知ってるのか分からない、ミステリアスな笑みを浮かべたまま。
「///」
(ふ…不二君…一体どこまで…勘づいているのかしら…)と心の中では思う。
その言葉に、一気に顔に熱が集中してしまう。
「ね、さん」
わざとらしく、不二がに同意を求める。
部員一同、に同情の目を向けた。
完全に不二が玩具として、に照準を置いたのが分かったからだ。
((哀れ…さん(先輩)))
は、なにも言えずに俯いてしまう。
「まだまだだね」
そのやり取りに越前が、ボソりと呟く。
「何?越前、なんか文句あるのかな?」
絶対零度の微笑みを不二は、越前に向ける。
「文句は無いス。ただ、先輩が泣きそうだからさ…可愛そうだと思っただけだよ」
絶対零度を無視して、越前は言う。
「…」
ジロリと不二は越前を見て、を見やる。
(不二君の目が笑って無い…越前君大丈夫かな…その前に私はどうなるの?)
不安全開ではやり取りを見つめた。
「言われなくても止めるよ。僕だって鬼じゃないし」
不二は目を見開いたまま越前に言う。
(こ…怖い…何だか、見てはいけないものを…私はかいま見てしまった気が…)
は、二人のやりとりを見て心の底からそう思った。
ガチャ。
ふいに部室のドアが突然開かれる。少し話がそれたのでは少し緊張が緩む。
(ああコレで質問攻めから助かるんだ私〜)
そしてを初め一同は、ドアに視線を集中させるのであった。
(誰だろう?後ココに居ないのは…やっぱり)
は入ってくるであろう人物を自分なりに予測しながら、入ってくる人物を待った。
(部長の手塚君…と副部長の大石君…しか居ないよね…)
その予想立てでまた、は緊張する。
人物は予想通り、ココの部長である手塚であった。
に取材許可にOKを出した人物その人である。
副部長の大石は珍しく現れない。
(手塚部長の方だ…どどどどどうしよう〜しかも結構不機嫌ポイ)
「お前達、こんな所で何油売っているんだ。休憩は、とっくに終わっているはずが?」
眉間に皺をよせた手塚が部員を見る。
部員達は体を強張らせる。
「良いじゃない。取材の練習も兼ねてさ、さんとの親睦も深める意味もあるんだよ手塚」
その中でニッコリと不二は微笑みを浮かべた。
その言葉に、手塚の眉間の皺が一つ増える。
(ど…どうしょう、手塚君怒ってる〜(>_<)しかも、私も不可抗力ながら関わってるし…どうしょう…)
は、手塚の表情に冷や汗ダラダラだった。
むろん表情も固くなってしまうもので、少しこわばってしまう。
「それにね、手塚。そんな顔してるから、さんが怖がってるよ」
クス。
と悪魔の微笑みのまま不二が手塚に言う。
「…」
無言で、不二を見る手塚。
(ど…どうしよう…何か言わなくちゃ…)
「あ…あの、私は別に怖いとかでは無く…」
その威圧感には堪らなくなって、口を開いた。
「分かってる」
手塚はに、そう言う。
何時もよりも数段穏やかな口調で。
しかし余裕の無いには気が付くはずは無い。
ふーっ。
手塚は溜息1つく。
「まぁ良い。は、落ち着いてからコート」
手塚は、用件を言うとさっさと部室を後にする。
他の部員もそれに習って、ゾロゾロと後に続く。
勿論レギュラー達も…。
「さん、別に手塚は怒っている訳じゃないから…それだけは、分かってやってくれないかな?」
河村が去り際に、にそう言った。
は、少しだけ微笑み「分かってるよ。怖い人なら、落ち着いてから来いなんて言わないから」と河村に返した。
「そうだよね、ゴメン。落ち着いたら、おいで」
優しい声音に、はとても有り難いと感じていた。
(何だか皆に心配かけちゃってるのね…私…)
「有り難う、河村君」
は、部室から去る大河村に言う。
誰も居なくなった、部室の中はキュッと生徒手帳を握る。
(大丈夫、何時も通りやれば、大丈夫)
それは何だか儀式めいていて、の心を落ち着かせる為にはかかせないジンクス。
例のおまじないみたいなモノ。
「よし、少し落ち着いたし…行こう!大丈夫、お守りもついてるんだし」
は自分に言い聞かすようににして、部室を出だ。
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2002.3.17 From:Koumi sunohara
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