運命共同体  


青春学園のとある日の出来事だった。
現在の時刻昼休み。

ザワザワ。

少しだけ、色々な意味で賑わう場所。
ココは言わずと知れた職員室。先生達の仕事場である。
ココに生徒が来るときは、大方先生への用事…または先生からのお呼び出しと相場が決まっているものであろう。

例にも漏れず2人の生徒が、神妙な面もちで先生と対峙している。
1人は、この青学テニス部レギュラーの桃城武。
そしてもう1人は…桃城と同じクラスのである。

しかしの方はというと、呼び出されるような悪い生徒では無い。
桃城の名誉の為に言っておくが…タバコなどで呼び出されているわけでは無いので…安心して欲しい。

ちなみに、桃城は成績のことで担任に…は、体育授業での事で体育教師に呼び出されているのである。

一重に職員室への呼び出しにも色々あるものである。


((said:))

職員室の片隅に、けして楽しそうとは言い難い空気を纏った、教師1人と生徒1人。
勿論、生徒は先の冒頭に出てきたである。教師は体育教師Aとしておくとしよう。

その二人が、神妙な面持ちで会話をしていたりする。

はな〜、真面目にちゃんとやってるのは分かるんだけどな…」

溜息混じりに、を見ながら体育教師が口を開いた。
どうやら、体育の授業の成績の事柄についてのお呼び出しの様である。

しかしながら、冒頭でも申し上げた通り呼び出された女子生徒は実に真面目な生徒であり、授業態度に至っては申し分の無い生徒であるのだが、何分実技を重視される体育である、その点を踏まえると何となく彼女が呼ばれた理由が想像できそうである。

その予想を裏付けると言うべきか、教師は少し難しい表情で言葉を紡いだ。

「去年だって、運動得意じゃないのに頑張っていたしな〜」

去年の成績表をみて、唸る体育教師。

そう、は運動が苦手な人物であるのだ。

一応教師なりに、彼女の良いところを分かっているだけに、対応に困っている様子である。

その点については、自身も教師に対して文句を言うわけでもない。

「まるっきり文化系なんですよね私…と言いますか…運動に関する神経が上手く脳と伝達されていないのか?と思うぐらい駄目駄目なんですよね。本当に困りものです」

苦笑を浮かべては言う。

「何だよな。それは、知ってるけどな。しかし持久走で…ぶっ倒れた奴は俺は初めて見たぞ」

頷きながらも、珍しいモノを見るように担任はを見る。

「去年は一応…走りきったんですけど…その後倒れましたけど」

最後の方は投げやりに、は言う。
哀愁が漂うとは、正にこの事と言いたげな調子である。

教師もその時の様子を思い出したのか、神妙な面持ちで言葉を紡いだ。

「やっぱり、病み上がりで…なけなしの体力が落ちたんだろなの場合」

1人納得の体育教師。

「なけなしって…先生」

流石に少し引きつる

(確かに…入院して…前々体動かさなかったからな…体力無くなったのには気が付いていたけど…本人だって驚いてるのに)

実際体力が無くても…正面切って言われるのはキツイらしい。

「悪い悪い。かと言ってもな〜、コレばっかりは次第で…俺にはどうすることも出来ないだわ」

椅子を後ろに倒しながら、体育教師は言う。

「そうですよね…」

溜息混じりには答える。

の場合はまだ良い方だぞ、何せペーパーで挽回きくからな…取り合えず完走さえしてくれれば…変わるんだが。何せ1週間後だろ?頑張るか、ペーパーにかけるかはに任せるから、考えとけな」

「そうですね…考えてみます」

漫画なら確実に背後にどんよりとした雲を背負いそうな空気を背負いながら、は教師にそう返した。

落ち込む生徒を余所に、体育教師は、明るく彼女の背中を軽く叩きながら言葉を紡いだ。

「オウ!頑張れよ

まったくもって、正反対な両者である。



((said:桃城))

そして、もう一方桃城の方も担任の席の前で対峙していた。

小さな溜息一つ吐いて、桃城の目の前に居る担任が言葉を紡ぐべく口を開いた。

「桃城…お前成績ヤバイぞ」

担任は開口1番に桃城に言い切った。
その言葉は、短いながらも色々な感情が重くのしかかりそうな声音をはらんでいた。

担任の言葉の調子に、当人である桃城は冗談と本気との微妙な境目を判別できずに、若干微妙な表情で担任に言葉を返した。

「マジで?」

教師に対する態度としては、正直よろしくない返答であるが桃城故と言うか、教師は別段気にする様子もなく、危機感の薄いこの生徒ととの会話を続けた。

「残念ながら大マジだ。忙しいのは知ってるけどな…本気で勉強しないとヤバイぞ」

呆れたように担任は桃城に言う。

桃城がテニス部での活躍は、担任の耳にも当然入ってる訳で、それを考慮したとしても桃城への現状がどうにもならないので、担任も困った状況なのである。

「普通は平常点で、どうにかするにしたって…お前場合…無いし」

苦肉の策と言いたげに紡ぐ言葉に担任自身言いながら、首を横に振り困り顔である。

「何言ってんスカ!俺真面目でしょ」

担任の様子に、心外だと言いたげに桃城が異議を唱える。

「何寝言言ってるんだ桃城。毎時間寝てる奴が…しまいには早弁に漫画を読む…コレの何処が真面目だ。平常点なんて無いに決まってるだろ」

「ってもな〜だって先生よ〜、授業聞いてても分からないもんは分からないってもんでしょ!!」

逆切れの桃城に、溜息の担任。

「このまま行くと…桃城お前…テニスの試合及び練習潰して…補習になるぞ」

「マジで?勘弁してくれよ〜!!先生どうにかなんない?」

「1週間後の補習免除テストにかけるしかないだろな」

「ウゲッ…」

心底イヤそうな顔の桃城。

「でもお前の場合、幸運にもテニス部の優秀な先輩いるから大丈夫だろ?乾とかな」

良かったな〜と言いたげに、担任が言う。

「あの…もう匙投げられたス俺」

少しへこみ気味に、桃城は言う。

「オイ…あの乾がか…。俺が教えるったて、専門世界史だしな〜」

「先生だろ!気合いで」

「つーか…お前が気合い入れて勉強すれば、こんな事にならんかっただろ」

桃城の言葉に呆れる担任。

「ま〜桃城を教えれそうな奴が居ない訳じゃ無いが…取り合えず…交渉しないことにはどうもならん」

教師は疲れたような口調で、唸りながら言葉を紡いだ。
口調から言うとあまり旗色の良い状況では無いのだが、桃城は

「マジ?助かったよ俺」

桃城は喜んでいた。


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2010.4.12.改訂(初掲載:2001.10.21.) From:Koumi Sunohara

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