冷めた心に吹き抜けた柔らかな風

それが終わらずに続けば良いと思えるほどに

心地よい

だが…始まりが有れば終わりが有るのは世の常

其処が終わりの終着点

だけど…それは実は違っているのかもしれない

− いつかどこかで − 


現世に四季が有るように、尸魂界も四季が有る。
桜は咲くし…雪も…雨も降る。
ただ時間の流れだけが現世と違うって所。

テープの巻き戻しと早送りを繰り返すような、ありふれた毎日を送る日々。
それに、死に神家業と…開発局の仕事が加わっているだけで…本当にごくごく平凡な毎日を私は送る。

そんな日常の一コマに…最近といっても割と時間は経過はしているが…私としては人間的時間概念が薄いので…最近と言う言葉にしているのスけど…。
ともあれ、ありふれた日々に嬉しい変化があった。

それは…一人の部下の存在。
恋人とか…友人といった感じでは無い…その部下が、私の日常に入ってきていた。

「喜助隊長〜」

明るく元気に挨拶してくるのは、私の可愛い部下。
…年若い死神の少女…それでも十二番隊の四席に居る。
喜怒哀楽の表情はハッキリとして、人当たりも良い少女。

(黒装束を着ていなければ、死神に見えないんでしょうねぇ)

そう思わせる程に は死神らしくない死神で、私と並んで歩いたら兄妹だって言ったって不思議じゃない。
その位 は私を兄のように慕ってくれているし、そんな を可愛く思う。

「妹というものが居ない私にとって、妹の様な存在なんでしょね」

そんな事を夜一さんの前でポロリと零せば、彼女は意味ありげに笑ってこう言った。

「喜助にしたら は、妹と言うより娘じゃな。今のおぬしの心境は娘が出来た親父であろう」

ニヤニヤと笑いながら言う夜一さんに私は苦笑を浮かべて言葉を紡ぐ。
相変わらずあの人は口が悪い。
まぁソレに慣れてる私は、軽口を返した。

「まだ若いつもりなんすけどね」

頭を掻きながらそう言えば「たわけ」と夜一さんに小突かれる。

そういった穏やかで… が居て自分が居るそんな時間。

(これが永遠だったら…どんなに楽しいのだろう)

不意に浮かぶはそんな気持。
永遠なんて無い。
そう一番分かっている自分が、この平和だけを祈っているのは可笑しい事。

不意に に「別れってなんで有るんでしょうね」と言った事があった。
その時の彼女は、目をかるく瞬いてから…真剣な表情で言葉を紡いだ。


「出会いがあるから別れが有るし。別れたとしても…何時か会えるじゃ無いですか」


「形が違ったとしても…覚えていなくても…きっとまた会えると思います」


「だから…例え別れる日が来たとしても…お別れは言いません。どんなに不遇な状況でも」


「私は巡る輪廻の輪を信じてます」


「隊長も信じてみて下さいよ」


子供だと思っていた少女からの言葉は、凄く重かった。

そんな彼女ともやはり別れと言うものに遭遇する。
悲しかった。
まるで…何かが欠落したように。
だけれど、あの子の言葉だけが頭から離れずに…幾月も…気の遠くなる時間も… の言う何時か会える日を願い続けた。




そして…流れ着いた現世で…私たちは言う通りに出会ったのだ。


「おはようございます店長さん。今日もよく晴れてますね」

青空のように晴れやかに彼女は私に挨拶する。
死神の と同じ名前を持つ…人間の彼女…

「おや…おはよう ちゃん。本当に今日はよく晴れてるスね」

「はい。今日も学校日和です。気持ちよくお昼ご飯が食べられそうですよ」

通学鞄からお弁当を持ち上げて ちゃんは張り切ってそう言った。
まるで昔のフイルムを巻き戻したかの様に、変わらない雰囲気。
その御陰で私の方も軽口になる。

「その言葉黒崎さんと朽木さんに聞かせてあげたい科白ですね」

「駄目ですよ店長さん。黒崎君も朽木さんも、学校日和とは言い難いかも知れないですが…今日は何だかよい気分って思うかもしれないじゃないですか」

「そうですかね〜」

「そうですよ。って私は少なくともそう思いたいです」

ニッコリ笑って彼女は言う。尸魂界に居た頃の妹の様な存在だったあの子と同じ笑顔で。


違うのは隊長と部下という関係

今は…店長さんと常連客という間柄

それでも、 の言った通り

私らは巡り逢った

二、三言葉を交わして は学校へ…あっしは何時も通りの大して来ない客の為に店番へ。
彼女は黒崎さん達の通っている学校へ。

「これじゃ〜夜一さんの言っていた言葉が当てはまちゃいますね」

不意に昔言われた夜一さんの言葉が頭を掠めた。

「まるで娘を持った気分ですよ」

苦笑を浮かべながら、この短い幸せな時間が少しでもゆっくり進むことを願った。


永遠なんて無いけれど


絆が切れていなければ…再び巡り会う


何時か何処かで…



END



2005.4.27. From:Koumi Sunohara


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