街角 |
−知らない世界とその彩り− |
久しぶりの休日に…。
和解したての幼馴染みと出かけるのは、別に不思議なことでは無い。
そうおかしな事は何一つ無い筈なんだ。
それなのに…俺は少しだけ…いや…かなり居心地の悪思いをしてと買い物をしている。
安心して欲しいのは…またと仲違いをした訳では無いと言うことだ。
ただ…俺の存在とにつき合わされてやって来たこの場所があんまりにも、俺と不釣り合いすぎているだけんだが。
でどう言う所かというと…。
一言で言うならファンシーショップと言うのだろうか…だが衣服も置いているようなので…今一俺には理解に苦しい場所だ。
明らかに今時という感じの、原色の世界。
パステルカラーはまだ、穏やかに見えるから…少なからず嫌な気分も軽減される。
が…むやみやたらに使われる原色の世界や…蛍光色の色の洪水ハッキリ言って疲れてくる。
自分の風貌とこの場所の不釣り合い具合に、俺は溜息しか出てこない。
の買い物を待っている間幾度吐いたか知れない溜め息を、俺は知らず知らずに吐きだした。
「はぁ〜」
少し声に出てしまった溜め息に俺は少しはっとして辺りを見渡す。
幸運な事なのか、俺の溜め息は周りで買い物に勤しむ人々に聞かれることは無かったようで…気にも止められずに時間は過ぎゆく。
それなのに、何処か俺の側を離れていた筈のが不意に声をかけてきた。
「何〜溜息何んて吐いてんの?」
手には商品を持って、が不思議そうに俺を見てそう言った。
俺はそんなに、もう一度溜め息を吐いてから言葉を紡ぐ。
「溜息だって吐きたくなるだろ」
そう言って辺りに視線を向ける俺には、少し考えてから言葉を紡いだ。
「はははは。国さんは人目を惹く容姿してるからじゃない?」
どうやらは、悪目立ちする俺に対して不快に感じてるのだと思いこんだらしくそう言った。
俺は勿論そんなの言葉を鵜呑みにせずにキッパリと否定の言葉を紡ぎ出す。
「そんな事は無い」
「そんな事無い何て言えないんじゃ無い。何せ国さんなんだし」
意味不明な言葉をが言うので、俺は思わず眉を顰める。
それに対しては俺の表情の変化に気が付いたのか、何やら考え込みながら言葉にした。
「私はてっきり人酔いしたのかなってちょっと思ったんだけど…あんまり顔色良くないしね」
俺の瞳を覗き込み、何かを探るように見る。
その瞳は心配の色に揺れていて…俺は心配をかけたいわけでは無いので直ぐに弁明の為に、口を開く。勿論、人酔いではではない事を彼女に示すために。
「居心地が良いとは言えないとでも言っておく」
紡がれた俺の言葉は、飾り気も…気の利いた感じもない、そんな言葉。
だがは愛想の一つもない俺の言葉に、別段気にする様子も無かった。
寧ろ…はこの場所と俺を見比べて小さく「確かに」と納得いったという具合に言葉を吐いた。
「それにしても、お前が…こんな目が痛くなる様なモノが趣味とは思わなかった」
目の前に広がる色の洪水に俺は、重い溜め息と共に言葉を吐き出した。
そんなウンザリをしている俺にはすかさず言葉を紡ぐ。
「まさか私の物を買ってるワケじゃないって。それに私ちゃんと言ったけど…友達のプレゼント買いに来たって」
ニヤリと不敵に笑っては俺にそう言う。
その言葉に俺は何と返答して良いやら言い淀む。むろん言葉が歯切れ悪くなるのは否めない。
「確かに…。言っていた様な気がするが…」
少し歯切れ悪く俺が言うと、は不敵な笑みを浮かべて俺に言葉を返してくる。
「歯切れ悪いぞ。覚えじゃなくて、言ったんだよ」
は俺の額を小突きながらそう言う。
まったくもって言い返す言葉が見あたらない俺はただただにされるがままだ。
一頻り小突き終わったは満足したのか、晴れやかな表情で言葉を紡いだ。
「仕方がないな。コレ会計済ましたら、外出るからさ…もう少し辛抱してよ」
は持っている品物を示して俺にそう言った。
軽くに頷いて返すと、彼奴は「じゃ行ってくるよ」とサッパリとした物言いで会計へと足早に行ってしまった。
俺はと言う小突かれて少々痛む額をさすりながら、が戻るのしばし待つことにしたのだ。
何とか居心地の悪い空間から脱出した俺…(この場合俺だけが居心地が悪かっただけなんだろうが…)とは、休憩も兼ねて近場のファーストフード店に入っている。
適当に注文して、席に着いて一段落した俺との会話は…先程まで居た店での話題ばかりだった。
それも俺に向けられた、視線に関してだった…。
は、しばらく悩んだ後…導いた答えをゆっくりと口にした。
「あのね…別に国さんに敵意とかある訳じゃなくて…妹の付き添いで来た兄だろうなぁ〜っていう視線だったと思うよ。何せ視線の先には、買い物につき合わされている人ぽかったし」
「それは親父連中と言いたいのかは」
憮然とした気分でにそう言えば、彼女は小さく肩を竦めた。
「そこまでは言ってないけどね。と言うかまずね…私と国さんが同い年だと思っている人があの場に居なかったって事。それ以前に国さんを中学生だって思った人少なかったと思うよ」
がそう苦笑混じりに言ってきた。
幾分声の調子を落としたのも、少し俺に対する気遣いが有るのかもしれない。
でもその割に言いたいことを凄く言われたのは、俺の気のせいじゃ無いだろうが…。
「そうは言っても俺は中学生だが」
の言った言葉に、俺はそう返す。
その俺の言葉には、ポテトに手を伸ばしながらは言う。
「中身の事言ってるんじゃ無いんだよ」
「じゃ何だ?」
「何だって…そりゃー見た目でしょ。だって国さんって、何時も中学生より上に見られるもん。映画の時も疑われんじゃ無いの?小学校の時から妙に落ち着いていたもんね」
ウンウンと一人納得しながらはそう言った。
それに対して俺は少し溜め息混じりに言葉を紡ぐ。
「…それは褒めてないと言うことに気が付いているか?」
俺の言葉に、も顔を顰めて言い返してきた。
「私何て、中学上がってしばらく経っても小学生に間違われることしばしばだよ。今は大分無いけど…」
珍しく難しい表情を浮かべて、は言う。
まだ学生という身分のにとっては、あまり嬉しい事では無いらしい。
老けて見えると言われるよりは幾分ましなのでは?と俺として思うが…我が幼馴染み殿は少し違うようだった。
「お前の言い分が分からない訳では無いが…。それは即ち…俺だけでは無いと言いたいのか」
「まぁ〜そう言うことですよ。ああそうそう…国さんだけじゃくて、青学のテニス部の人達は実年齢より上に見えるからね。仲間は一人二人じゃないって事も重要だよ」
フォローなのか止めなのか分からない…きっととしてはフォローのつもりなんだろうが、イマイチ効力を発揮されていない言葉を紡ぐ。俺はこれ以上続けても結果が目に見える気がしたので、話題をちょっとだけ変えることにした。
「しばらくと過ごさない間に考え方が豪快になったのは、俺の気のせいか?」
は「そう?」と首を傾げるので、俺はすかさず「ああ」と頷きながら答えた。
その俺の言葉に彼女は、しばらく思案した後にポツリと言葉を呟いた。
「そうだね。国さんと離れていた時間で色々な事を吸収した様に…国さんだって色々吸収したでしょ。それにね。私と出掛けて今日みたいに国さんにとって未知の世界に遭遇出来る事って良い事何じゃ無いかな?」
「あの原色だらけで目の痛い空間と…何とも言えない視線の針がか?」
訝しげに顔を歪めて俺が言えば、は俺を宥めるように両手で“まぁまぁ”と言うポーズを取った。
「今日の事は兎も角だけど…それだって有る意味良いことだよ。何かしら国さんに役に立つ日が来るって」
「その根拠は何処から出てくるんだ。まれにもお前は科学部で…曖昧な答えの無い世界の住人だと思うが」
あまりに根拠のない自信に俺は思わずそう言っていた。だがこの少女は、何処吹く風で不思議そうに俺を見た。
「分かってないな国さん。私は科学部に所属してるけど…物理や化学反応式とか…まぁ数学的な論理の世界は好きじゃ無いだよ。何って言うの生物系…」
「其れでよいのか科学部員」
思わずポロリと出た俺の科白には少し頬を脹らませて「いいんですよ〜だ」と悪態をついた。
そんな子供じみた真似を平気で出来る幼馴染みに、俺は知らず知らずに笑みがこぼれた。
「知らない世界とその彩りを知るのも…たまになら…悪くないかもな…」
に聞こえない程度の声音で俺は小さく呟いたのだった。
おわし
2004.11.12. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ |
BACK |