寒さ厳しい12月の風は、体の芯から寒く感じる。
寝起きは割と良い方の俺にとっても、流石にこの時期の朝の目覚めは少しなりとも鈍くなる。
その為目が覚めても、布団から出るのがほんの少し億劫な気分になるのは…きっと仕方がない事なのだろう。
だが、まだ冬休みに入っているわけでは無いので、起きて学校に行かねば成らない訳で…。
眠さと寒さを抱えた体を何とか奮い立たせて、俺は制服に着替え居間に足を向けた。
(本当に今日は寒いな…カイロ持参で学校に行こうか)
などとぼんやりと思いながら歩いていた。
すると…居間から甘い良い臭いが漂い、俺の鼻をくすぐった。
(もしかしたら…姉さんがお菓子でも作っているのだろうか?)
お菓子作りが趣味の姉…姉さんの事が思い浮かべつつ…居間の戸に掛かっている、のれんを潜り俺は居間へと足を踏み入れた。
「おはよう蓮二君」
俺が居間に入ると、姉さんが爽快に朝の挨拶をくれた。
俺もそれに返すように、朝の挨拶を口にした。
「おはよう姉さん、母さんは?」
普段俺の後に会社に行く母さんの姿がなかった(※ちなみに父さんは朝一で出かけるので、会うことは無いので聞かないだけで…母子家庭とい訳では無い)ので…何か有ったのかと思い俺は姉さんに尋ねる。
余談であるが俺に家は、両親は共働きである。
「朝早くから仕事ですって…。今がかき入れ時何ですって…大変よね」
そう言いながら姉さんは、テキパキと俺の分の朝食を食卓に並べてゆく。
“ふーん”と相槌を返しつつ俺は、食卓の並ぶテーブルに着く。
目の前に広がる和食の朝食を口にしながら、先程…まぁ今もなのだが…香る甘い臭いが気になり、俺は姉さんに疑問を投げかけた。
「そう言えば甘い臭いがするようだけど…もしかしてお菓子でも作っていたんですか?」
お菓子作りが趣味な姉さんだから、と思って口にした言葉だったのだが反応は想像とは違う言葉が返ってくる。
「ふふふやっぱり気になった?あのね今日はお菓子じゃないよ」
何だか楽しげな口調で姉さんがそう言った。
(お菓子じゃない?では、あの臭いは何なのだろうか?)
不意に浮かんだ疑問に、姉さんは相変わらず楽しそうな顔を浮かべてた。
そうしている内に、姉さん
「さて蓮二、今日は何の日でしょうか?」
クイズを出すような口調で姉さんが俺に言う。
俺はその言葉に、思考を巡らせ…思いついた言葉を取りあえず言ってみた。
「えっと…もしかして冬至?」
カレンダーの日付を見ながら俺は姉さんに、そう答えを返した。
姉さんは、ニッコリ笑いながら「ご名答、流石蓮二だわ」と嬉しそうに言う。
「そんな時期だったんですか…」
しみじみと俺は、そう言った。
姉さんは「そうよ、だから南瓜ぜんざいを作ったって訳なのよ」と甘い香りの理由を説明してくれた。
姉さんの作る甘い食べ物が好きな俺はかなり楽しみだった俺は、知らず知らずに表情が緩む。
俺の表情の変化に気が付いた姉さんはと「蓮二が学校から帰ってくる頃には、味も落ち着いて良い具合になるから楽しみにしてね」ふんわり笑ってそう言った。
「そうれは楽しみですね」と俺は姉さんに返す。
俺の返事に姉さんは満足そうに微笑むと、何かを思い出したように急に真面目な表情を作って言葉を紡いだ。
「そうそう…それでね今日のお風呂は柚子湯にする予定なの。だから早めに帰ってくるのよ」
先手を打つように、姉さんは俺にそう言った。
俺は「わかりました」と短く応え、食事を再開させた。
姉さんと冬至の話をしながら、朝食は楽しく過ぎてゆく。
美味しい朝食を食べ、南瓜ぜんざいに少し想いを馳せてると…。
何故だか…友と傍若無人な後輩の顔がふと浮かんだ。
(弦一郎は南瓜ぜんざい好きそうだな…姉さんの作る料理のファンだしな…そう言えば赤也は甘い物が好きだったな…きっと赤也の事だから冬至何て行事は知らないだろう)
そう考えて、俺はふと気が付く。
(弦一郎以外の面々や赤也は冬至を知っているだろうか?)と…。
まぁ〜迷信だろ?と言う者も居るかもしれないが…昔から伝わるものなので、俺としては軽視出来ないと思うので、尚のこと気になった。
第一俺たち三年は受験を控える大事な時期であるし…赤也は部長として部を引っ張る存在が風邪で不在というのは良くない…。
知ってる者も居るかも知れないが、案外冬至のことは忘れてるに違いない面々を思うとやっぱり少し気になる。
(一口でも食べるのと食べないのでは、違うだろうな…少し持っていって食べさせよう)
そう俺は結論づけることにした。
そして思った俺は実行すべく、食後のお茶を飲んでいる姉さんに、俺は声をかけた。
「姉さん、南瓜ぜんざいって沢山作ったりしてないかな?」
台所に目を向けながら、俺は姉さんにそう尋ねた。
姉さんは、口を付けていた湯飲みを一旦置いてから言葉を紡いだ。
「ついつい沢山作っちゃうから、量としては結構有るけど…どうかしたの?蓮二君」
小首を傾げながら、姉さんがそう言葉を返した。
俺は「折角だから、学校に持って行こうかと思った」と姉さんに告げた。
それを聞いた姉さんは、ポムと手を打って「ああ」と頷いてから、言葉を紡ぎ出した。
「成程ね…それは良い案だわ。最近、季節の行事しらない子が増えているみたいだから良い機会よね。ああ別に外国文化が駄目と言う訳では無いけれど…やっぱり昔から有る行事は知っていてもらいたいものね」
俺の言葉に、納得気味にそう言ってくる。
(ただ風邪をひかせたくないって理由何だけどな)と思っていることは取りあえず出さずに、姉さんに同意するように頷く。
そんな俺の様子に姉さんは「それでは蓮二が学校に行く前に用意しなくちゃね」そう言い残すと、持って行く準備をしに台所へ足早に向かった。
俺はと言うと…居間から準備をしている姉さんを眺めながら(友人や後輩はどんな反応が返ってくるのだろう?)と少しだけ想像しながら待つことにしただった。
お茶も飲み終えた俺は、弁当と姉さんが用意してくれた南瓜ぜんざい入りのタッパを鞄に入れた。
ちなみに姉さんは、朝食の後かたづけの為未だに台所に居たりするのだが…。
ともかく、時間も時間なので…俺は学校に行く為に席を立った。
「でわ、姉さん行ってきます」
洗い物をしているだろう姉さんに、そう告げ…俺はのれんを潜る。
(今日は柚子湯か…早めに帰ろう)
そう心に決めながら、俺は一旦鞄を置き靴を履く。
さて、学校に行こう…そう思って戸に手をかけた時だった…。
「あっ…蓮二君、ちょっと待ってくれる?」
玄関先に出た俺を姉さんは呼び止めた。
俺は何事かと思いながら、足を止め姉さんの方を振り返る。
すると、姉さんは何処かのデパートの紙袋を持って玄関先に顔を出す。
「母さんが沢山柚子買ってしまったみたいなの。折角だし柚子も一緒にあげたらどうかしら?今日は寒いし…柚子湯に入るにはピッタリだと思うのよ」
“学校に行く蓮二に買い物袋持たせるのはどうかしら?と思うのだけど”と姉さんは最後は済まなそうに言葉を紡いだ。
俺は気にしなくて良いと姉さんに返しながら、柚子の入った紙袋を受け取った。
「気をつけて行ってらしゃい蓮二君」
「はい。今日はなるべく早く帰りますので」
と返すと姉さんは「柚子湯ですもんね」と笑って答えた。
それには、取りあえず曖昧に笑って応えながら…今度こそ俺は姉さんの作った『南瓜ぜんざい』の入ったタッパと弁当…そして大量の柚子を持って…学校へと足取りを向けた…帰宅後の柚子湯を楽しみにしながら…。
おわし
2003.12.5. From:Koumi Sunohara (C)A PALE MOON <3rd anniversary plan>
★後書寧ろ言訳★ 3周年企画で書いたお話です。 如何でしたか?記念すべき初立海大キャラでの夢駄文でした…しかも柳さんで。 口調がイマイチ良く分からない事になってますが、柳だと思ってくれると助かります…。 もう少し柳さんが言葉を話してから書けば良かったと言う後悔が少々。 短いお話になってしまいましたが…今後書く柳姉ネタの布石と言うことで…ご勘弁を…きっと書くと思うので…たぶん…(弱気)。 冬至ネタなのですが、ちょっと早めにUP(12/22が冬至なんですが)。 家によって食べるものなど違うともいますが…我が家では南瓜ぜんざいなので…コレを食べなければ駄目だという決まりは無いです。 柚子湯は有りだと思いますけどね。 そう言え公式ファンブック出ましたね…北海道は六日発売なので手元に無いので…何とも言えませんが…公式ファンブックがどう言おうが、私は姉や妹ネタが好きなので…設定無視で書かせてもらいますが。 柳さんに姉居るのかしら?ドキドキです。 こんな駄作におつき合い頂き有り難う御座います、宜しければまた駄作に付き合って下さると有り難いです。 |