〜不思議な魔法No5〜

(Said:Others)




日常となっている部活の時間。
普段通りに有る部活だけど、最近は少し楽しい。


何故って?


少し娯楽が出来たからかな。
さんと言う、存在がテニス部に居るということも有るし…その彼女と大石の関係を観察するという娯楽がね。
まぁ大石との関係が無くても、違う人間が加入するということは…。
周りに何かしら変化をもたらすから、有る意味良い刺激と言えるだろうね。

兎も角、彼女の加入は部活にとって良い意味で変化を持たしてくれているのは間違いないよ。
その一つと言って良いのは…。
部活内の空気かな?

さんがやって来て、部内は少し明るくなった。
出来ないなりに、頑張る仕種や笑みを絶やさない彼女の気質が空気を良くしているようだった。
それは本当に有り難い事だ。
それに…。


(第一、さん程黙々と仕事をしつつ、周りを気にする人は少ないしね。他のが真似しょうにも出来ないだろうなぁ〜)


僕がそんな事を思う程、彼女は実に働き者だった。
ちなみにコレは、僕が彼女に感じた率直な意見だね。



という人物を大体観察し終わった僕は、セットで二人の様子を見るようになった。
さんと大石を見守る…いや…観察する事数日。
問題なく二人は部活に励んでいた。
だけど僕は、二人対して違和感を覚えたんだ。


二人の違和感を感じたのは、割と早かった。
それは、観察しはじめて少し経ったぐらいでね…何というか自然すぎて不自然な要素が有るというか…。
何となく引っ掛かったのが始めだった。

それから、目を凝らすように二人を観察していて…その違和感が何となく見えてきた。
何というのだろう…交わりそうで交わらない線と線の様に、二人はまったくと言っていほど…交わらないんだ。
こちらが見え見えだと分かる程の英二のお節介な行動も、大石とさんは上手い具合に擦り抜ける。
確かに、英二の行動が下手すぎるのも悪いかもしれないけれど…自然過ぎて…かえって不自然さを感じるんだ。


(それとも僕の考えすぎなのかな?)


そう思った僕は、英二同様大石にさりげなくさんに物を渡して貰うように頼んでみる事にしたんだ。





「大石ちょっと頼みが有るんだけど」


そう僕が声をかけると大石は相変わらずの爽やかスマイルが返ってきた。


「何だい不二。でも不二が頼み事何て珍しいなぁ〜」


「英二が他力本願過ぎなだけだった。それに僕だって大石に頼むことだって有るんだけどね」


大石の物言いに僕は、そんな言葉で返すと大石は英二を思い出したのか…小さく笑みを漏らした。


「そりゃそうだ。で…不二の頼みは何なんだい?」


「ちょっと先生に呼ばれてるって、乾が言ってね。ちょっと抜けることになったんだけど…さんに頼まれていた資料を大石にお願い出来ないかな?っておもってね」


聞いてきた大石に僕は前もって用意しておいた、科白を口にする。
僕の言葉を聞いた大石は、“そっか…大変だな”と小さく漏らした。
そして…。


「その位ならお安いご用だよ。何かもっと大変な事を頼まれるのかと思ったから…少しビックリしたけどね」


そんな事など知るはず無い大石は、笑顔で僕の言葉に了解してくれた。
あまり人を疑わない大石に、少しばかり良心の呵責に悩まされそうだったが…何時もの笑みを貼り付けて僕は言葉を紡ぎ出す。


「やだなぁ〜。僕そんなに性格曲がってないと思うんだけどね」


「別にそんな事は…」


「ふふふ。冗談だよ。兎も角、それ頼んだよ大石」


「ああ任せろって。不二こそ、なるべく早く戻ってこれると良いな」


最後の最後まで、僕に気をつかう大石は爽やかに笑うとさんの元に近づいていった。
僕は、その様子を確認すると…こっそり遠くで大石とさんの様子を見ることにした。


僕は急いで校内に入った。勿論彼等の動向を探る為だ…。
校内の二人がよく見える教室の死角になる窓から様子を伺う。
僕との約束通り、大石はさんに僕の頼んだ物を渡している。
僕は満足気にその様子を眺めて、彼等が次に何をするのか黙って見ていた。

会話は一言二言。
かなり業務的な内容ようで…短い挨拶と共に二人はサッと別れてしまう。
その様子を見て、やっぱり僕は引っ掛かる。
否…見たからこそ引っかかりが浮き彫りになる。


(普通は好きなら、少しでもチャンスを狙うものじゃない?)


普通と感性が違う僕でも、そう思う。
だけど周りは、彼等の違和感に気が付いてないようだ。
あまりにもソレは作為にも似た、何かが働いているようにしか思えない。
大石か…はたまたさんが意図して、
でも…どちらが意図を持って、違和感を生み出しているのか…。
それはハッキリ分からないけれどね。


(強いて言えば…両方…かな)


何て僕は感じ始めていた。
だけど残り時間は後わずか…。
僕は、彼ら…大石とさんには悪いけれど…。
どんな結果が出るとしても、一計を投じるつもりだ。

それが吉と出る事を祈りながら。

彼女のテニス部滞在期間は後僅か。






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2004.4.21 FromKoumi Sunohara




☆中書き+言い訳☆
第三者視点…不二視点でお届けです。
しかも短いです。
前回UPからあまり時間を空けずにUPすることが出来てホッとしてます…。
長いときは1年ほったらかしと言う記録が有りますので…。
えっと今回は、キーマン不二さん視点でしたね。
大石さんがメインの夢の筈なのですけど…相変わらず…周りが目立つ話しです。
さてさて兎も角、やっと此処まで来ました。
次回でこの話しも完結予定です。
気長に待って下さると幸いです。


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