ワクチンをお酒に例えてみたら  



肌寒い風が吹き始める頃、テレビではこぞって初しぼりのワインの事が話題に上がる。
そう…ボジョレヌーボである。

やれ、今年は近年稀にみる美味さだとか…過去最高だとか…あれ?毎年同じこと言ってるじゃないかなんて、思いつつ薄らぼんやりと聞き流す。

正直、未成年の身の上ではお酒は飲めない訳で、面白さもあまり感じない。

(毎年ながら飽きないのだろうか?ほぼ同じことを言っている気がしてならないんだけど)

所謂コメンテーターぽい人が口にする評価に毎年ながらそう感じずにはいられない。

けれど、ふと思う。

(インフルエンザーの予防ワクチンもある意味ボジョレヌーボと同じような気がする)

静脈注射じゃなく…腕にグサリと注射する筋肉注射の類のインフルエンザーの予防ワクチンは、地味に痛いし…注射後も中々ダメージがくる。
こない年もあるけど…。

それを考えると、まるでボジョレヌーボの評価のような感じと似ている気がする。

1年前のワクチン
→体調不良の為受けるの断念

2年間のワクチン

注射の際に痛むが、数日間の気怠さのみで、生活に支障なし

4年間のワクチン
→注射の際は特に痛まないが、注射後の腕がミルミル腫上り痛痒さで悶絶

4年前のワクチン
→注射時並びに注射後に痛痒さで悶絶し、軽度のインフルエンザー発症し1週間のダウン

思い返すとこんな感じである。
そして共通して思うのだ…。

(こんなダメージ受けてまでインフルエンザー予防接種種は必要なのかな?)

でも、これを口にするればあの四角四面な幼馴染の弦一郎は声を大にして言うだろう…。

「インフルエンザーの予防接種しなかったら、確実にインフルエンザーになるだろう。そもそも、予防接種してもかかるのに、何を言う」

眉間に皺を寄せて、腕を組んでそう弦一郎は口にする姿がかなり、リアルに想像できる。

そもそも、昨年体調を崩し予防接種が出来ずに見事にインフルエンザーにかかった身の上としては、幼馴染の言葉はグッサリと胸に突き刺さるのである。

(結局…謎の最終兵器汁的存在に救われるという事態に陥ったし…魔王怖いし…うん、やっぱり受けよう…と言うか既に、弦一郎の手で予約済みだしね…)

色々な意味で、抜け目のない幼馴染に毎度ながら頭が下がる。

(弦一郎の毛根が減ったら恐らく…私と魔王と赤也の所為だろうね…間違いなく)

結構、過保護な弦一郎に私はそう感じずにはいられない。
けれど、だからと言って自分の性格や生活態度はそうそう変われるものでも無いのだけど…。

まあ、兎に角今回は何とか体調も良さそうなので、予防接種を受けようと思う。


きたる当日、睡眠良し…体調まぁ…微妙だけど打てないレベルでは無い状況で、私は弦一郎と共に病院に来ている。

別に私の逃亡防止で弦一郎が居る訳はないことは、はじめに言っておこう。

では、何の為の弦一郎か?

答えは実にシンプルである。
私の体調不良の際の介助人兼自身の予防接種に他ならない。

(普通は親が付き添うんだろうけど…毎年弦一郎なんだよね。うちの両親たるんどる?)

違和感すら、もはや違和感に感じないレベルまで来ている私は、不測の事態が起きない限り弦一郎と予防接種にやってくるのである。

そんなこんなで、保険書を出し、問診票を書き…予防接種の注意事項を読み、検温、問診を経て…いざ予防接種である。

肩に近い腕の部分にヒヤリと関じるアルコールの消毒液にも慣れたもので、サックリと腕にワクチンを打たれて終了。

(ん?今年は1種類ウイルス対応するのが増えたって聞いたけど、さほど痛くないな…)

別の部屋では、若干子供の泣き叫ぶ声がチラホラ聞こえるが、余裕な雰囲気で無事にワクチンは終了する。

、どうだ体調がすぐれないとかあるか?」

「ん?いや大丈夫だよ。今のところ問題無し。それに今年のワクチンは近年稀にみる痛みの少ない良い感じの出来だったよ」

私がそう答えると、弦一郎は眉を顰めた。

「弦一郎どうしたの?」

「どうしたと言うか。こそ、その表現は何なんだいったい」

「ああ。何かね、テレビで今年のボジョレがどうのって言っているのを聞いてさ、毎年『過去最高』とかばっかり言っているのを思い出して、インフルエンザーの予防ワクチンをソレに
揶揄って例えてみただけだよ」

そう私が口にすると、弦一郎も少しだけ思う所があったのか、珍しく小さく笑った。

「毎年、予防接種するならではか」

「まぁ…微妙な感じだけど…柳辺りに言ったら、興味深そうにデーター取られるかもね」

「ああ。探求心の塊だからな…精市あたりも嬉々として話に混じりそうだな」

「うげ…幸村ね…確かに」

渋顔になりつつ、そう言うと弦一郎は少しだけ肩を竦めた。

「さて、ワクチンを打った後は安静と相場が決まっている。寄り道せずに帰るとするぞ」

そう口にしつつ、ゆっくりと私の歩幅に合わせた弦一郎と私は家路についた。
若干のワクチン後の腕の痛みと共に…。

果たして今年の副作用のでは如何なものか?それは神のぞしるのである。


おわし


2016.6.21.(web拍手掲載2015.12.3.〜) From:Koumi Sunohara


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