突 然 の 夕 立 |
−そして出会いもまた…− |
−後編−
張り合って少年を見つめると、少年の服の所々が色が変わっていた。
恐らく、突然の雨に為す術もなく濡れてしまったのは、容易に想像がついた。
(傘も無く…やっと見つけた軒先に逃げ込んだとみた)
何となく検討を付けながら、少年を見続けたが…これでも姉として過ごした時間が長いために、気になって仕方が無く…思わず私は少年に声をかけた。
「ねぇ君ずぶ濡れだよ。良ければこのタオルあげるから頭ふきなさい」
言いながらタオルを少年の目の前に出した。
少年は少し驚いた表情…私はその様子に別段驚くこともなく、心の中で…(まぁ見ず知らずの人間に急に渡されたら引くよね…)とか思いつつ根気よくタオルを差し出す。
一向に引く気の無い私の様子に、少年は困惑気味に怖ず怖ずと私の手からタオルを受け取った。
「どうも」
無愛想ながらもお礼を言う少年はやはりとと言うか、ジーッと私の頭ばかりを見ている。勿論髪を拭くことは忘れていない。
なので私は、少年に思わず疑問を口にしていた。
「何?何か付いているの私の頭?」
自分の頭を指を指すという…凄まじく間抜けな姿で私は少年に尋ねると少年は微妙な表情を浮かべた。
「…髪の毛」
たっぷり間を開けて少年はボソリと呟く。
(髪の毛?…別段天然パーマが酷いとは思わないのだけど…赤也はかなりの天然パーマだけど…って赤也?)
不意に少年に言われた髪の毛と言うワードに、私はかなり酷い天然パーマの弟を思い出しながらそんな事を考えた。
「少年…もしや…ソイツの名前は切原赤也って言う名前じゃないよね?」
顔をひきつらせながら、私は少年にそう尋ねた。
すると少年は相変わらず涼しそうな顔をして「そう…大当たり」とボソリと言う。
私は思わず頭を抱えたくなった。
(愚弟は…外でどんな問題をまき散らしているんだい?お姉ちゃんはかなり心配だ…)
心の中でそんな不安で占めながら私は、平然を装って言葉を紡ぐ。
「うちの愚弟が君に何か失礼な事をしたのかな?」
最後は平然を装いきれずに、乾いた笑みを零したが…少年は気にした様子は見せずに小首を可愛らしく傾げた。
「ぐてい?…アンタの弟って事?」
猫の目の様なつり目をキョトンとさせて少年は不思議そうに…私の顔をジーッと見て…此処にいないであろう弟を思い浮かべているようだった。勿論髪の毛中心にだけど。
私はそんな少年に向かって肯定の意味を持つ言葉を紡ぐ。
「まぁ…そうなるわね。おや…そう言えば名すら名乗ってなかったわ…私は切原。先行った赤也の姉だね宜しく」
「さんね。俺は越前リョーマ」
「そうかい…ご丁寧にどうも。しかもちゃんとご挨拶できて…君はよい子だね。ソレに比べてウチの馬鹿赤也は…」
しっかりと自己紹介できる少年と、我が弟を比べ私は思わず遠い目。
そんな私にお構いなしに彼はまた言葉を紡いだ。
「でも何でさんは、切原…えっと弟が何かしたって…」
言いずらそうに言葉を濁す少年に私は、重い口を動かした。
「大方うちのバカ赤也が少年…えっと越前君に喧嘩でも売ったて所でしょ」
ため息混じりにそう言うと少年事越前リョーマは何で分かるの?と言いたげに私の顔をみる。無論私はサイコメトラーでもエスパーでも…エスパー伊藤でも無いのは見ての通りで、しがない赤也の姉だ。
だからこそ、愚弟の行動が手にとる様に分かると言う訳なのだ。
「何だかんだ言って肉親ですからね。予想がついてしまうもんなんだよ。姉って言うのは難儀な生き物ね」
「姉だと分かるの?何で?」
「君に兄弟が居ないとして…姉だけじゃなく先輩後輩っーのもまた難儀なもんよ」
私はそこで一旦言葉を切ってから、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「手のかかる後輩やら問題の多い先輩を持つとね…心配しなきゃ良いって思えど心配になるものだわ」
リョーマ君の頭をクシャリと撫でながら、私は姉の顔でそう告げる。
彼は私が頭を撫でる事を甘んじて受け入れながら、少し考えながら言葉を紡いだ。
「兄弟いないスけど、確かに心配症の先輩はいるけど…そんなもんスカ?」
「まぁ年の功ってヤツだね。後はその人達の性格も大きいけれど…まぁね…何時か君にも分かる日がくるよ…凄く無謀な後輩に出会った時にでもね」
そう言って一旦言葉を切った私は、少し間を置いてから言葉を紡いだ。
「うちの馬鹿赤也を許せとは言わないし言えないけど、あんなのでも心配される人物なんだ。それに血の分けた兄弟だしね。だから、懲りずに対戦してやってよ」
撫でていた手をリョーマ君の肩をポンと叩いて、そう言う私。
「さんが言うなら…しても良いよ。切原は苦手だけどね」
リョーマ君はキョトンとした表情に成ってから、不敵に笑って言葉を返してくれた。
「はははは…私も切原なんだけどね」
「それでも、別じゃん」
「じゃ私とは仲良くできるって事だね」
「そうだね…嫌いじゃ無いし」
「だったら仲良くしようじゃないか。何て言うかウチの赤也はあんな性格してるからね…君みたいに穏やか口調で会話何て皆無だよ…喧嘩ばかりだし。だからちょっぴりこんな姉弟体験したいんだよ」
ぶっきらぼうに返してくれるリョーマ君にそう言って私は一旦言葉を結ぶ。
それに習うように、少年もまた静かな沈黙を持った。
ゆるやかに流れる静寂の中、不意に瞳を掠める光が入る。
私は雲間から差し込んだ陽の光に目を細めながら、少年に言葉を投げかけた。
「よし…雨も上がったし…どうだねコレから私とお茶でも飲みに行かないかい?」
「俺…財布忘れたんで無理ス」
目には見えない耳をクッタリ垂らしたように落胆する少年に、私はすぐに言葉を放った。
「勿論お姉様の奢りだぞ」
ニッと笑ってそう言えば少年は「じゃお言葉に甘えるス」と、年相応な笑みを私にくれた。
私とリョーマ君は、晴れ間の覗く空の下に歩き出した。
不意の雨
不意に出会うそんな偶然
確率は高そうで…低そうで
それでもこんな出会いも良いのかもしれない
おわし
2005.10.3. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ 夏風10のお題より、テニプリ夢駄文/赤也姉シリーズ。 今回は、赤也君との絡みはゼロです…代わりに王子とのお話です。 こんな弟も姉さん的にはアリかもしれないという話。 さて、お姉さん如何でしょう? お楽しみ頂けたななら幸いです。 |
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