運命共同体(5)
((said:))
はドキドキして、グランドに居た。
いよいよ持久走が始まるのだ。
(どうしよう…ついに始まるよ…)
「どうしたの、顔色悪いよ」
の友人1人がドキドキのに声をかけてくる。
「はははは、緊張しちゃってさ」
苦笑を浮かべて答える。
「もー、大丈夫たかだか授業なんだから気楽にいきなよ。それに、桃城君達に鍛えれれて…随分体が丈夫になったじゃん」
友人は笑顔でに言う。
「そうだけど…」
はまだ不安そうな表情を浮かべる。
「なら問題無いじゃないの」
友人は溜息混じりにに話しかける。
「ホラ、だからそんな顔しない。そんな顔してたら、折角と桃城のラブラブぶりを認めた桃城ファンに刺されるよん♪」
悪戯ぽく友人は微笑む。
「な…ラブラブって…」
顔を赤くして、は友人を見る。
「見たまんま。桃城が、の為にご飯持ってきたりする所なんて…ラブラブMAXって感じって、違うの?」
の照れて様な、困惑した顔に友人は不思議そうに覗き込み言う。
「ラブラブじゃないよ…だって、つき合ってないもん」
は友人にそう返す。
「そっか、でも似たようなもんじゃん」
ヘラ。友人はを見てそう言う。
友人の言葉の意味が分からずは、小首を傾げた。
「何よ…分かんないって顔ね。は本当に…頭良いのにそれ以外は、からっきしよね」
クスクスと笑いながら友人は言う。
「だって、本当に解らないんだからしょうがないと思うの〜」
むーっ。
眉間に皺を寄せて、は言う。
「がそんなに、真剣になって勉強教えたりするのって桃城だけでしょ?それに、気が付いてないかもしれないけど…桃城と話すようになってからって良い表情…とういか良い意味で変わったんだよ」
“だから、桃城ファンもならって認めてるんじゃないかな”と友人は続けた。
「走りながら、考えて見れば」
友人はそう言い残すと、の側を離れる。
「桃ちゃん…か」
は言われた通り考え始めた。
((said:桃城))
は無事に完走して、見事桃城にバトンを渡した。
桃城のテストを受ける教室に向かいながらは桃城に言う言葉を考えていた。
「」
そこに桃城が現れ声をかけてきた。
「何、桃ちゃん」
声で桃城を確認して、は桃城を見る。
桃城は真剣な表情でを見てくる。
もそんな桃城を見て真剣な表情で向かい合う。
「俺がテスト合格したら、“”て呼んで良いか?」
「突然何言うかと思ったら…合格しなくたって、呼んだって良いよ桃ちゃん」
はニッコリ笑ってそう言う。
「あーっ。そうじゃなくてだな」
ガシガシ。頭を凄い勢いで掻く桃城。
「だから…」
(かーっ、折角覚えたモン忘れそうだわ俺…凄ーっ緊張するぜ)
深呼吸をして、自分の中の同様を落ち着かせる桃城。
「…が好きなんだ…友達としてじゃなくてよー、つき合って欲しいって方の好きなんだけど…は、俺の事どう思う?」
は桃城の言葉を嬉しそうに聞いていた。
そして…。
「私も好きだよ」
それがの出した結果。その言葉を桃城に言う。
「はぁ?」
桃城は驚いて間の抜けた声がでる。
「だから、桃ちゃんが好きだよ。と言っても…先気が付いたんだけど…持久走の時にね」
照れくさそうには言う。
「嬉すぎて、俺が倒れるかも…」
桃城も嬉しさのあまり、言葉が可笑しい。
「でも…桃ちゃん…は?」
は桃城に尋ねる。
「俺は…が俺の為に…頑張ってくれて…倒れた…当たり…」
照れくさそうに桃城はに言う。
はその言葉にまた、顔を赤らる。
そして、照れ隠しのように話をする。
「桃ちゃん…両想いになったからって、手抜たら…」
「抜いたら…?」
桃城がに恐る恐る尋ねる。
(別れるとかだったら…ヤダよ俺)とか思いながら。
「野菜汁1週間だな」
ボソ。
「「乾先輩!!」」
突然2人の前に現れた乾に2人は、思わず声をはもらせた。
「やぁ、に桃」
飄々とした口調で乾が軽く手を挙げる。
「な…先輩何でココに居るんスカ?」
驚きながらも桃城は乾に尋ねる。
「ああ、俺が桃がカンニングしないか見張る試験管だからだよん」
「嘘…」
「さー中に入った入った。おっと、またね」
桃城を試験の教室に詰めて、乾はにそう言うと自信も中に入っていった。
乾は教卓の前に椅子を置き、試験の準備を始める。
「さて、しっかりやれよ桃。何せ野菜汁かかってんだし…それにが教えてるからほぼ大丈夫だろけど」
「当ったり前スよ。俺を甘くみないで下さいよ先輩!のノートでマジにやったんですから」
自信満々に桃城が言う。
「ふーん。自信が有るにはこしたことは無いけどね」
乾が気にした様子もなくサラリと聞き流す。
「あーっ、信じて無いんスカ?今の俺には“可愛い彼女の”がついてんのに」
「さっそく惚気か?ノートに書いておこうかね」
データーノートに何やら書きながら、乾は桃城に尋ねる。
「そのの御陰で何点ぐらい取れそう?データーになりそうだから、聞いておくけど」
「80点以上は取れますよ。今の俺は普段の俺じゃ無いス。何せ幸せスカラね」
眼鏡を軽く直しながら、乾は桃城を見る。
「じゃ〜賭ける、野菜汁?」
「上等!で先輩俺が勝ったら、何してくれるんスカ?」
桃城はウキウキと乾を見る。
「何でも良いよ。だって俺勝つ自信あるし。ちなみに、俺は桃が75点以下だと思うけどね」
乾は不敵に笑ってそう言う。
「なめちゃーいけねー。絶対俺の勝ちスよ」
「はいはい。じゃーさっさとテストしてみようかね」
時は過ぎテストも終わり、数日後。
「桃ちゃん…どうだった?」
テストの結果が出たらしいと聞いたは、桃城に尋ねる。
「か…合格はしたんだけどよ〜」
「おめでとう。私も頑張った甲斐があったよ〜」
桃城の言葉には、嬉しそうに笑う。
「でも、何だか暗いね桃ちゃん。野菜汁も飲まなくて良いのに」
は不思議そうに、桃城を覗く。
「それは…」
「それは?」
ガラガラ。
が聞き返したのとほぼ同じぐらいに、教室のドアが開かれる。
「乾先輩どうしたんですか?」
ドア先に立つ人物の名をが呼ぶ。
「おはよう。コレを桃に届けにきたんだけど…桃居る?」
野菜汁片手に、乾がに尋ねる。
「乾先輩…何で、桃ちゃんにソレを…」
野菜汁を不思議そうに見つめながら、は尋ねる。
「コレね…桃があんまりにも、惚気吐いた上に約束を果たせなかった…ペナルティー」
サラリと言う乾。
「惚気?約束?何ですか?だって、桃ちゃんは合格しましたよ」
不思議そうには乾を見る。
「賭で負けたんだよ桃城が」
「賭け…ですか?」
「そう…80点以下だったら野菜汁1週間、80点以上だったら俺が、桃の言うお願いをなんでもきくて賭け」
賭の説明をにする乾。
「何でそんな事やるのよ〜桃ちゃん〜」
桃城を見ながらは、少し声を荒げて言う。
「だってよ〜絶対自信有ったんだぜ」
桃城はに言い訳ののようにそう言った。
「桃ちゃん…いくらなんでも1週間でそれは無理でしょ…。私だって完走がやっとだったんだから…」
「うっ」
の言葉に桃城は言葉を詰まらせた。
「はいはい。良いから野菜汁サクサク飲んでみようか?」
乾が間に入るように野菜汁を差し出す。
「げっ…やっぱり飲むんですか?」
「当然だろ桃」
言い切る乾。
もそれに賛同するように、桃城に言う。
「桃ちゃん、約束なんでしょ“野菜汁”ちゃんと飲まなきゃ」
「死ぬほど不味いんだぞ〜!!俺死んじゃうかも」
に甘えて回避しようとする桃城。
「桃往来で、いちゃついてんの?良い身分になったね」
突然冷ややかな声音が桃を刺す。
「不二先輩!?」
桃城の叫びを物ともせずにニッコリ不敵笑う不二。
どこから湧いてきたのやら…。
「ねーねちゃん、桃にソレ飲ませたい?」
桃城の言葉を無視して、不二はに近づく。
「はい。乾先輩とのお約束ですから。約束守ってほしいですし」
真剣に答える。
「じゃ〜ちゃんに、良いこと教えてあげようかな」
ニコニコ笑いながら、に言う不二。
「本当ですか、不二先輩」
嬉しそうには不二に聞き返す。
「うん。僕は、嘘はつかないよ」
人当たりの良さそうな笑顔を浮かべて不二はに言う。
「耳貸してくれる?」
ゴニョゴニョ。
不二がに方法を教える。
「って感じで、大丈夫はずだよ」
「やってみます…有り難う御座います不二先輩」
(フフフフ…コレで面白い桃が見れるね、楽しみ)
不二に一礼をして桃城に向かうを見ながら不二は楽しげにそんなことを思った。
不二のアドバイスを実践しようとは桃城に声をかける。
「桃ちゃん…私…」
「何だよ…」
言葉を切れ切れに言うに桃城は、言葉を促す。
「ぇっと…桃ちゃんが野菜汁を格好良く一気飲みしてるのが…見たい…な…」
(こんな事で…大丈夫かな?)
は不安になりながら、桃城を見る。
「…」
無言の桃城。
(やっぱり…無理だよね…折角不二先輩が教えてくれたけど…)
は桃城を見て、そう思う。
桃城はの言葉を聞いて、少し考え込む。
(不二先輩の入れ知恵だよな…でも、が言ってるし…)
「そんなに嫌だったんだ…ゴメンね。そうだ何回かに分けて飲もう…桃ちゃん…ね。だから無理しなくて良いよ」
「何言ってんだ?飲むに決まってんじゃんか…俺の男粋を見せてやるよ」
に心配されたためか、桃城は強気の発言をに言う。
「無理してない?」
ちょっと不自然すぎる桃城の様子に、訝しげにが尋ねる。
「問題ない…問題ない」
はははははははと、乾いた笑いを浮かべて桃城がコップに入った野菜汁に手をかける。
「でも…」
「大丈夫だって、俺の言うこと信じられないのか」
「違うけど…手震えてるし…」
「武者震いだって」
「そう…なら良いんだけど」
とても心配そうには見守る。
ついに桃城が、野菜汁に口をつけて飲み始める。
ゴクゴクゴク。
「…」
「大丈夫…?」
「ああ、平気だぜ。どうだ、ちゃんと男粋だろ」
「うん、凄かったよ。格好いいね桃ちゃんは」
「当ったり前よ〜!!」
へへへへと鼻を掻きながら、に言う。
ちなみに桃城は、トイレに行きたい衝動を必死に堪えていた。
そんな桃城を笑いを噛み殺しながら見ている人物2名。
その乾、不二に気が付いた桃城は2人に話しかける。
「先輩達…俺で遊んでませんか?」
野菜汁を一気して目が微妙に虚ろな桃城が、恨めしそうに不二を見る。
「だって、桃が惚気るから悪いんだよ」
サラリと不二は桃城に言う。
「そうそう、ソレにの1言で面白いように動くしな」
乾も不二に続いて桃城に言う。
桃城は呆気に取られながら、両者を見る。
「「コレを、遊ばずにはいられないだろ(よね)」」
それを見計らったように乾と不二は声をはもらせて言った。
(鬼…悪魔…)
すかさず桃城は心の中で毒づく。
そしてほぼ石化状態。
「桃ちゃん…そんなに、不味かった?大丈夫?」
固まる桃城には心配そうに声をかける。
どうやら野菜汁の影響が今出たと思ったらしい。
「優しいな〜どっかの鬼や悪魔な先輩とは、大違いだぜ。」
感動して桃城はとんでも無い事を口走る。
その時…。
「「桃…誰が悪魔に鬼だって?」」
振り返ると絶対零度の微笑みを浮かべて、不二と乾は桃城を見ている。
「先輩…聞いていたんスカ…(汗)」
“嫌だな〜”と乾いた笑いをしながら桃城は言う。
「玩具決定」
ビシ。
「何で…だよ…せっかくと両想いになったってのに〜、横暴スよ〜」
無駄であるが、抗議の言葉を口にする桃城。
「「何か?」」
乾、不二両名が桃城を見る。
「う…何でも無いス」
油汗ジトジトの桃城が短く答える。
(桃ちゃん先輩仲良いし、先輩もいい人ばかりだな〜)
なんて彼女になった、は桃城の大変さを知らずにそう思うのであった。
この日から桃城は格好の、乾と不二の玩具になったのは言うまでもないだろう。
END
2010.5.29.改訂(初掲載:2001.10.21.) From:Koumi Sunohara