ココは青学の敷地内にある家庭科教室。
そこに、意外な組み合わせの人物が居た。
人物1人目の名前は青学が誇るデーターマン、テニス部の乾貞治。
もう1人は彼…乾との接点は何処なのか?と首を傾げてしまえる程の文化系でクラスも違う。
は体育会系のノリとは、無縁な全くの文化系。
テニスにも興味と言うか…ルールは勿論、テニス部自体にも興味の持っていない…ソレを除けば…ごくごく普通な生徒である。
本当に以外で珍しい組み合わせの2人が何故、家庭科室にいるかと言うのには…別に深い理由がある訳では無い。
ただデータマン乾が、の作る料理のデーターに興味を持った為…データー収集のために協力を願った為である。
最初は、乾の協力に良い顔をしていなかったのだが…あんまりにも熱心(?)…その熱心さにつてはご想像にお任せするが…だった為で…。
それで仕方が無く、家庭科室で料理を披露して諦めて貰おうと、が承諾したという形なのである。
「乾君…何で、私のデーター取ってるの?」
本日何度目であろうか?はその言葉を乾に尋ねた。
「野菜汁の参考にしようと思ってね。何か不都合でもある?さん」
こちらも本日何度目かの質問に答えを返す乾。
「べ…別に不都合は無いけど…」
(あの怪しい飲み物のヒントになるようなモノ…私作ってる覚えは無いんだけど。もしかして…遠回しに私の作る物が不味いと言いたいのかしら?)
は乾の作っていた野菜汁を、思い浮かべながら少し凹むのであった。
「はぁ〜っ」
溜息を付きながら、はまな板の上の野菜を細かく刻む。
トントントントン。
良い音を出しながら、野菜はドンドン小さくなっていく。
その様子を興味深そうに見ていた、乾がふいに口を開いた。
「何で野菜をそこまで、小さくするんだい?スープ作るんだろ?しかも量が多い気がするし…」
ペラリ。
データーノートを数ページ開いて、乾はに不思議そうに尋ねる。
どうやら彼のデーターでは、この量と切り方は可笑しいと感じたようだ。
「ああ…コレね。今はやりと言うか…外国の方じゃ…スープって食べ物だと考えてるからね…液体より具の方が多いからコレで良いの。その為に具を小さく切ってるのよ」
野菜を切る手を止めずに、は乾にそう返す。
「へ〜そうなんだ〜。知らなかったな〜」
そう言うと乾は、ノートにシャーペンをはしらせた。
カリカリ。
ドンドンと乾はノートに書く。
その様子をは、複雑な面もちで見た。
(乾君て…テニス部の人だよね…何でスープ作りにそんなに興味を持っているのかな?…野菜汁と接点無いのに…)
そんな事をぼんやとと考える。
「それにしても…、コレは何種類ぐらい具が入るんだ?かなりの野菜が入ってる気がすんだけど」
鍋を覗き込んで乾は、眼鏡を軽くあげてに尋ねた。
「ん〜特に何種類入れると言うのは、決まりは無いんだよね。割と適当に、有る野菜でスープを作るから…。ようするに、日本のみそ汁を作る要領って考えてくれると解るかも」
鍋に最初に炒める野菜をいれながら、少し考えながらは乾に返した。
「割と簡単に考えて、作れるってことか」
乾は自分なりの見解をに尋ねる。
「そうなるね。でも、変な物入れたら不味くなるから考えて選んでね」
乾の言葉に賛同しつつ、は間一髪入れずにそう言った。
(野菜汁みたいな…事になったら…大惨劇が起こるもの)
なんて思いながら。
「変な物?俺はそんな物入れないけどな〜」
乾は自分で作った、野菜汁のことなど気にしたようすも無くそういった。
(自覚無し…あんなに…部員を激震を走らせた…野菜汁を作っておいて…まぁ〜健康そうなもの沢山らしいけど…)
は少し表情を引きつらせて、そう思う。
「乾君…健康だからという理由で、入れれば良いモノじゃ無いからね…」
思わずは、乾にボソリと言った。
「はははははは。もしかして、野菜汁とかペナル茶の事とか言ってる?アレはわざとだからな〜。そんな心配しなくても平気だよ」
乾はニヤリと笑いながら、にそう言い切った。
(いや…そんな問題じゃ無いんですけど…)
は炒める手を一瞬止めて、そう思った。
「あれ?手が止まってるぞ。大丈夫か鍋?」
シレット乾は、に指摘する。
「ああ、そうね鍋鍋」
は乾に言われて気が付き、慌てて鍋をに手を戻した。
(良かった…焦げてないし大丈夫ね)
鍋を見ては、心底そう思った。
しばらく乾に説明しながらは、作業をしていた時。
「しかし〜結構手間がかかるんだな〜」
「まぁ〜ね。美味しい物食べるには、時間を惜しんでいたら出来ないしね。まぁ〜短時間だから不味い物が出来る訳じゃないから…何とも言えない所だけど…これは後少なからず30分はかかるかな」
はそう言いながら、鍋にスープストックを注ぎ入れる。
トポトポトポ。
「30分か…成る程」
カキカキカキ。
の言葉をすかさず、ノートに取る乾。
(乾君…帰って…このスープ作る気なのかしら?…でも乾君と料理…あんまり想像がつかないかも…)
おたまで、鍋そこをかき混ぜながらはふと思う。
「ココから煮込みの作業に入るから、暇になるし…乾君はそろそろ部活に行ったらわ?」
時計を見ながらがそう乾に言う。
ハラリ。
スープや煮込み料理で頻繁に出てくる、ローリエ(月桂樹の葉)を鍋にいれて蓋をする。
「ん〜最後まで見届けるよ〜。そこまでやらないと…データーも完成しないからね」
「でも後、30分煮込んで…3分1をミキサーにかけて…ソレを鍋に戻して軽く合わせたら完成だよ」
自分の申し出にそんな事を言う乾には、コレから先の作業工程を口にする。
が…。
「何か聞いただけじゃ…想像がな〜。さえ迷惑じゃないんなら、完成を見てみたいんだけど駄目?」
の説明に乾は反対に、にそう返した。
「駄目じゃないけど…そんなにスープ作りに興味があるの?」
乾の反応には、そう返す。
「それも有るかな」
真剣に聞いてくるに、乾は楽しそうのそう答える。
「他にも有るの?」
乾が楽しそうに、そう言うのでは不思議そうに尋ねる。
「まぁ〜有るよ。そりゃーね」
乾は楽しそうに、に言った。
(ん?テニス部の合宿とかのメニューでも作るからかな?)
小首を傾げている、に乾は楽しそうに口を開く。
「じゃ〜当ててみる?割と簡単だと思うよ」
「テニス部の合宿とかのメニューでも作るからかな?」
先程考えていた事を、乾に尋ねる。
「残念ハズレだよ」
でも乾は、の目の前で×を作ってそう言う。
「じゃ〜解らない…後は料理に目覚めたから?」
解らないと言いながら、はそう尋ねてみる。
「それも違うんだな」
ムーッ。
眉間に皺を寄せて、は乾を見る。
はかなり困惑しているご様子。
「分かんない?」
「分かんないです」
「簡単だと思うけどね…」
溜息混じりに、乾はに言う。
「…簡単なの?だって解らないんだよ…それって難しいことじゃないの?」
「じゃヒント出す?」
「ヒントくれるの?」
「それぐらいは、しないとね。俺は鬼じゃ無いからね」
はははははと笑って乾は言った。
「ヒント…俺の目の前に居る人」
乾の言葉に、は自分を指さす。
「私がヒント?」
「そっ」
「むーっ。益々解らないよ〜乾君」
「解んない?これ以上ヒント無いんだけどな〜…寧ろ答えなんだけどな」
悪戯ぽく乾は笑う。
「へ?へーっうううう…嘘だぁ〜。私にきょ…興味?」
その言葉に、はかなり驚いた。
「そんなに驚かなくても…」
乾はの反応に、苦笑を浮かべる。
「驚くよ〜だって、乾君と話ししたのだって…数える程だし…接点も無いもの」
(いい…乾君に…興味を持たれるような事なんて…した覚えは無いんだけどな〜…)
はそんな風に思う。
「そんな事は関係無いと、俺は思うけどね」
に不適に笑って乾は言い切る。
「それに、気に入った子に興味を持つのは当たり前でしょ」
「気に入るって…」
(実験体かなにか?…)
かなりドキドキのである。
「んとね。ようするにが好きってこと何だけど…意味解る」
シーン。
たっぷり30秒固まる。
乾がの目の前で、手をパタパタとさせている。
それでやっと我に返るが…口を開いた。
「でも…私乾君の事良く分からないし…好きかも解らないよ…でも…嫌いじゃないし…」
は困ったように、乾に言った。
「マズマズな考え方だ。取り合えはそんな感じで良いよ」
ニッツと逆光を受けつつ笑って、に言う乾。
「さて、そろそろスープ出来たんじゃない?」
ふいに軽く乾は会話を変えた。
「…うん。そうだね…食べようか」
戸惑いながらは、乾に答えた。
「そうしますか」
はスープを盛って、乾に渡す。
スープを飲みながら、乾はふいにとんでもない事を口にしだした。
「ココに、高麗人参とか入れたら体に良さそうじゃない?」
「い…乾君…それじゃ〜薬膳料理になちゃうよ…(汗)」
その言葉には、かなり動揺を隠せなかった…。
(しかし…高麗人参…何故に急にソレが最初に出てくるんだろう?…普通は塩とか…何かが足りないとか言われるとか思うのに…)
「はははは…そうとも言うな」
の心など知る由もない乾は、あっけらかんとそう返してきた。
「乾君…」
「心配しなくても、入れないよ。食べたくなったら、に作ってもらえば良いんだし」
心配そうなに乾はあっさりとそう言った。
「駄目かな?」
「駄目じゃないよ。私何かで良ければ作るよ」
「私なんかじゃなくて…だからでしょ。話覚えてるよね」
眼鏡をキラリと光らせて乾がそう言う。
(嵌めたはね…策士だわ…まったく)
「結構意地悪…なんだね乾君」
「そうでも無いよ。世の中には、上には上がいるからさ…何ならデーターノート見る?」
ズイ。
にデーターノートを見せる乾。
「良いよそこまで…しなくても。変なところ義理堅いんだね」
ちょっと困ったような顔をして、ノートを返す。
でもすぐにクスリと笑う。
「じゃ〜取り合えず、お友達になってみませんか?結構、楽しく過ごせると思うよ」
そんな様子を乾は楽しそうに見ながら、にそう言った。
握手を求めるように、乾はに手を差し伸べた。
接点が無い…
でも何故か引き合うのは…
実は接点が有ったのかもしれない…
野菜汁とスープ…似ても似つかない存在だけど…
作る行程が似ていたり…
意外な所で引き合って…
だから…案外相性が良いのかも…
「そうだね、取り合えず友達からね」
は差し出された乾の手を握手してそう言った。
取り合えず…そこから2人の関係が始まる…。
END
2001.12.15 From:koumi sunohara