END
「はぁ〜っ」
何だか悔しい…
男の人の方が手が綺麗だなんて…
しかも…スポーツしている人の手が…
綺麗だなんて納得出来る?
間の抜けた溜息を少女が付く。
(気分は…じっと手を見るby石川啄木ってとこかしら?(-_-;))
自分の手を見つめて、少女ことはふと思う。
は、青学の3年生。
ちなみに、生徒会書記。
「書記だから字を書いて…ペン蛸出来るのは分かるわ…寧ろ言うなら…100歩譲って認めてやるわ…でも何で、私の手が豆だらけなの〜よ〜(#-_-)」
叫ぶように、は言う。
書類やら、ノートが舞っている。
「つー事で…Dr乾…貴方の素晴らしいデータノートで、何とかなんない?」
主語をぶっ飛ばし、は同じクラスの乾の机の前に来て我が道をひた進んだ。
「……何時から俺はDrになった?と言うより寧ろ皮膚科に行くことを…俺は勧めるぞ」
乾は少し考えながら、そうに返した。
「Drじゃない!!テニス部の専属Dr…!!!」
誤りを訂正することなく、は言い切る。
「…人はそれを…マネージャーと言うと思うが…」
淡々と乾はに返す。
「…ま〜っ、良いジじゃない…(^_^)/。それより、今は私の手のひらというか、良く分からないが…蛸だか疣を始末する、最善策を1つ」
パン。
両手を軽快な音を立てて、合わせる。
神頼みをする時の格好を、乾の前でしてみせる。
(本当に…藁にも縋る思いなのよ〜…分かって…乾君〜)
は、神にも縋る気満々であった。
「そんなに、気にする問題?」
「当然!!!」
「別に、俺は気にならなかったけど」
の気迫に負けながらも、乾は呟くが…。
がまた、熱く語り始める。
「乾には分からないかもしれないけどね…。子供にさえ、『お姉ちゃんの手、変なの出来てるよ〜』て言われるのよ。真っ直ぐで、純粋な目で…。その時ばかり、子供の純真な目ってなんて残酷なのかしらって思ったわ」
「ま…俺は医者じゃないから…大した事は分からないけど」
の切羽詰まった顔を見て、乾はヤレヤレとそう言った。
「有り難うDrvvvv」
嬉しさのあまり、握手を求める。
「その前に…頼むから…Drって言うの止めてくれないかな」
「???」
“何故?”と言いたそうに、は疑問符を浮かべながら乾を見る。
「何となく…」
乾は、短く返す。
「う〜っ…精進してみます…」
は、、困ったようにそう言う。
乾は、病院の先生のようにに症状を尋ねる。
「で…どうして、手に蛸だか疣が出来たんだ?」
少しうなりながら、は記憶を辿る。
「始めは…ペン蛸だったんだ…後は、逆剥けが…悪化して…気が付いたら手に沢山出現してきたの」
の言葉に、顔をしかめる乾。
「それって…“とびひ”したんじゃないかな?」
「“とびひ”?」
素っ頓狂な声を上げる。
「ああ…コレは俺の仮説だけど…が傷が気になって…触るだろ?そこから、感染したと俺は思うけど」
乾は淡々と、傷から蛸に進化した物を見ながらそう言った。
「…と言うことは…」
「俺じゃーやっぱり、お手上げ」
両手を広げて上げて見せる、乾。
「…やっぱ…病院?」
「その方が…よっぽど直るぞ!」
間一髪入れずに、言う乾。
「痛そう…(汗)」
「行かなかったもっと、痛くなるんじゃないの」
さらに、言い切る乾。
「う…っ。それは嫌かも…」
流石にその言葉に焦る。
「俺的には…ソレ蛸じゃなくて、疣だと思うよ。何せ、増殖してるからね」
取り合えず、診断結果の補足をする乾。
「それも、そのデータノートに載ってるの?」
興味深そうに、尋ねる。
内心“どうやったら、病院に行かずに済む”方法を考えているなのだが。
「たまたまね。部員の誰かが、疣が出来て皮膚科に行ったのでな…データーをな」
疣のことを、抜粋した覧を開いて見せる。
「やっぱり…Drじゃない…。て、皮膚科なのねやっぱり」
はぁ〜っ。
大きな溜息をつく。
「しかし…何で又、皮膚科に行くのを拒むんだ?そこが俺には、分からないんだけど」
乾は気になっていた、素朴な疑問をぶつける。
「だって…電気メスで削ったり…根っこをペンチで引っこ抜いたり…挙げ句の果てには…」
「ストップ!」
暴走中のを、乾は止める。
「?」
「…考えすぎ」
「でもさ〜」
「多分今は、液体窒素のはず」
「バラが砕ける奴?」
「良く知ってるな」
感心する乾。
「やっぱり…止める」
液体窒素にビビル。
「そのまんまで良いんだ…。なら、俺はこの辺で」
乾は、手をヒラヒラさせて立ち去ろうとした。
「待ってよ〜」
「行かないんだろ?」
「行く…よ。行きますってば!!」
やけっぱちで、叫ぶ。
乾は不敵な笑みを浮かべ、にノートの一部分をちぎって渡す。
「何?」
紙をマジマジと見て、乾に尋ねる。
「腕の良い、皮膚科の場所だけど。ちなみに礼は、皮膚科レポートで良いぞ」
は無言で、ソレを受け取った。
「電気メスじゃないだけ、ましかもね…でも液体窒素か」
さっそく貰ったメモの皮膚科の前で、呟くであった。
**その後**
「Dr乾〜」
「だから…」
呆れ顔で、乾は訂正しようとする。
「“Drは、止めろ!”でしょ。でもさ〜、乾の言った通りだったんだからさ〜。立派な医者になれるよ」
の言葉に疲れを覚えながら、乾は言う。
「で…手の疣は、取れたのか?」
「バッチシ」
手を乾に見せる。
「良かったな」
素直な感想を乾は言う。
「乾先生様々って感じだよ〜」
「先生って(汗)」
「Drが駄目って言ったから、先生に変えてみました」
Vサインを乾にする。
「…あんまり変わってない」
「それにね…ちょっと悔しかったから、乾先生の事を困らせてやろうと思いまして」
満面な笑顔で、言う。
「はぁ?」
(この前の、ツケか?)
乾は、首を傾げる。
(だって…女の私より…スポーツしてる人の手が綺麗だなんて…悔しいじゃない)とは思う。
「と言う訳だから、覚悟してね乾先生」
「言ってる意味分からないんだけど」
「分かんなくて良いんです!乾先生は。ちなみに、私のホームDrだから。」
「オイオイ」
乾のデータノートのの覧には『不二並に、データの取れない存在』と書き足されていたとか…。
乾の受難の日々は、当分続きそうである。
2001.9.28 FROM:koumi sunohara
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