trick or treat |
悪戯かお菓子か…。
そんなキャッチフレーズの行事ハロウィン。
悪戯も出来てお菓子が貰えるなら、何て良い日だろう。
英語苦手だけど、こんな面白いイベントなら参加しない手は無い。
先輩方から教えられたのは、ハロウィン当日で…仮装して悪戯すると簡単な説明を受けた。
折角なのでやってみたいと思ったが、当日じゃ何をどう仮装するったって間に合わない。
どうしたものか悩む俺に、部の先輩方は意味深な笑みを携えながら仮装用の衣装を渡してくれた。
それは彼頃30分ぐらい前の話である。
先輩方から貰った衣装にバッチリ着替えた俺は、居間でくつろいでいる姉ちゃんにソロリと近寄った。
「姉ちゃん」
「ん?」
気怠そうに首を傾げた姉ちゃんに俺は、ハロウィンのお決まりの科白を口にする。
「trick or treat」
「はぁ?」
「だからtrick or treatスよ」
頑張って言い慣れない英語を発音する俺に姉ちゃんは、俺の言葉を完全に聞かなかった事にしたらしかった。
(ううう…地味に練習したのに…姉ちゃん酷い)
心の中でこっそり思いながら、俺はちょっぴりいじけていた。
無論いじける俺のことなど、気にするヒトでは無い我が姉気味はやっぱりケロリと口を開く。
「んで…赤也はコスプレにでも目覚めたの?」
俺の着ているドラキュラの衣装を見た姉ちゃんは、何気に失礼な言葉を紡ぐ。
その言葉に、俺は何故にこの格好をしてるかの説明を兼ねて言葉を発することにした。
「コスプレじゃくて仮装スよ仮装。第一今日はハロウィンってやつスよ」
真剣に説明する俺に姉ちゃんは、小さく鼻で笑った。
「英語嫌いが何を抜かすかね〜」
呆れ顔で言う姉ちゃんに、俺は二の句が継げずに押し黙ってしまった。
(確かに…英語嫌いがハロウィン…あり得ないかも)
そんな事をボンヤリと思っていると、笑いを噛み殺した口調の姉ちゃんが言葉を紡ぐ。
「なーんてね。実は赤也がこういう事やるの知っていたんだよね」
勝ち誇った笑いを浮かべる姉ちゃんを俺は、変なモノを見るような目で思わずみた。
(え?ちょっと今何て…)
「お姉様の情報能力を甘く見ちゃいけませんよ。立海大付属2年生エース君」
人の悪そうな笑みを浮かべた姉ちゃんが、二つ折りの携帯電話の画面を示してそう言った。
俺は、見せられた画面をマジマジと眺める。
其処には、30分ぐらい前に俺に衣装一式と…ハロウィンについて教えてくれた先輩方連盟のメールが書かれていた。
勿論内容は、現在俺が姉ちゃんにするであろう事も書かれていたのである。
俺は思わず口をあんぐりと開けて、溜め息混じりに言葉を紡ぎ出した。
「プライバシーの侵害ス」
ボソリとそう零せば、姉ちゃんは肩を竦めた。
「おや?難しい言葉使っちゃって…。第一教えろ何て言ってないのに教えられるのはプライバシーの侵害かな?」
「うううう。大人は卑怯ス」
「ふふふ悔しかったらお兄ちゃんに成ることだね弟君。伊達に赤也の姉をやってないってことよ」
「どうせ俺は弟ですよ〜子供ですよ〜。英語嫌いですよ〜」
完全にいじけモードの俺に、姉ちゃんはクスクス笑いながら俺の髪をクシャリと撫でた。
そして…。
「さてと…赤也君。さてもう一回言ってごらん」
「へ?何を?」
「何を?って…そりゃー勿論ハロウィンの合い言葉しかないでしょ」
ニッと笑った姉に俺は数回瞬きをして、あの科白を口にした。
すると姉ちゃんは…。
「そろそろ意地悪するのも飽きたしね。はいハッピーハロウィン」
悪戯を成功させた子供のような晴れやかな笑顔をした姉ちゃんは、冷蔵庫から取り出した丸ごと南瓜プリンを片手にそう言った。
俺は何だか、逆にお化けに悪戯された様な気になりながら南瓜プリンも片手に持つ姉ちゃんのお尻に悪魔の様な尻尾が見えたようなきがしたのだった。
(まぁハロウィンって実はよく分かってなかったし…あのプリン美味そうだし…これで良かったのかもね)
何てお気楽な事を思いながら、姉ちゃんと南瓜プリンを食べる準備に頭を切り換えたのである。
おわし
2005.11.9. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ ハロウィン 5のお題より。 テニプリ赤也姉シリーズです。 何だか大変赤也君がヘタレ気味なお話に。 ともあれ、楽しんで頂けたら幸いです。 web拍手にて2005.10.27.〜公開していたモノです。 |
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