ハプニング発生  


昨年の誕生日私は弦一郎にあるプレゼントをするべく、大きなホームセンターに来ていた。何故ホームセンタだったのか、その疑問は至極簡単で、弦一郎の好物であるなめこの栽培キットを購入しようと思ったのである。

別に本格的な原木を求めるのではなく、お手軽な小さめのサイズを探し店員さんに聞いた所小ぶりな木となめこの菌を紹介された。

その時点で自分が求めているものでは無い事に気づくべきだったんだけど、イマイチ家庭菜園等に詳しくなかった私は言われるまま、木となめこの菌を購入し、その際に貰ったきのこ栽培の手引きを元にきのこの菌付作業をした。

結果だけ申し上げると…間に合わなかった。
植物だって、種植えてすぐに実るかと言えば答えはNO。それなのに、うっかり者の私はあまり時間をかけることもなく、なにも考えづになめこの木に菌を植え付けたのである。うっかり屋にもほどがあると反省しかない。

そんな訳で、昨年はなめこの木の進呈を諦め無難に弦一郎にプレゼントを私祝った。

昨年の失敗した年に私は大型量販店でとあるもの見つけた。

『リアルなめこ栽培キット』

その名の通りなめこを栽培するキットで、某アプリのなめこを栽培する会社から本気で食べれる栽培キットを販売していたのである。しかも2週間ぐらいで収穫できるし、手軽だと記載あり。

(なんてこった…ちゃんとネットとかでリサーチすれば良かった…っていっても私PC系壊滅的だから無理だけど…)

そんな事を思いつつ、ひとまず試すようにひとつ購入し試してみることにした。

箱はアプリに登場するなめこのキャラクターがかかれ、可愛らしいつくりで説明も丁寧に書かれていた。手順に沿って、箱から必要な者を取出し、手順にしたがい作業を進めた。栽培用ケースの余分な部分を切り落とし、切ったケースに防水用の袋を設置し、栽培ブロックを入れ、栽培ブロックの白い部分を掻き出し赤土をかけて水をやって終了。

(木ですら無いし…電動ドリルで穴あけなくても良いし…数分もしないで終了。しかも2週間ぐらいで収穫できるなんて…本当に某アプリ並みに早いんだけど…)

あまりの呆気ない作業に私は半信半疑ながらも書かれた通りなめこの栽培をした。勿論、木のなめこのお世話も忘れないが…。

気分はトトロのメイの様に毎日欠かさずなめこを観察すると…本当に2週間たった辺りに小さななめこらしき姿が…。

(本当になめこできるのね…)

少しの切なさと、出来たことへの感動。思わずなれない写メを撮り、感慨深げにそう思う。

しばらく、なめこの成長を見守ろうと数日放置してると…なめこが巨大化。スーパーで真空状態で売っているなめことは大違い、大株なめことして売っているのよりもでかいなめこ。自宅でキノコ狩り。

今年のプレゼントはコレで決まりと、量販店でプレゼントだと告げ可愛らしいラッピングをしてもらった。中身が例えなめこだとしてもだ。

恐らくプレゼントの相手は親や祖父母だと思われている確率が高そうな気もするが取り敢えず気にしない方向で。

でも一応それだけではアレなので、何時も通り弦一郎が利用しているテーピングにプロティン、リストバンドを購入し自分でラッピングした。

流石に、この商品のみをラッピングしてもらう勇気はまだなかった。どちらにしても色気とは皆無なプレゼントに違いない。

プレゼントの準備はOKと胸を撫で下ろし、後は弦一郎の誕生日を待つだけだとホッとしていた時に思わぬハプニングが起きた。

昨年の誕生日に用意していた、なめこ1号も今年は収穫できるだろうから共に弦一郎にあげようとなめこの木を確認すると、大量発生…そうなめこが…。すぐに収穫できて、食べれる状態のソレ。

(なんて日だ…)

折角ラッピングもしてもらった、なめこ栽培キットなめこの生えた木を交互に見やり私はそう思った。

確かに愛着はある。木を購入し、電動ドリルで一つづつ穴を開け、なめこの菌を金槌で打ち付ける。水もやり世話をしてきた、昨年のなめこの木。直売所ならば、確実に生産者は私になるであろうほど…手塩に育てたなめこの木が…成長する様子は嬉しくないと言えば嘘になる。

(よりにもよって…弦一郎の誕生に生えてくるミラクルは何なのだろう?なめこの神に愛されているのかしら?)

そう思わざる得ないほどの良いタイミングというか…私にしてみるとバットタイミング。

(まぁ…元々弦一郎に渡すつもりで作っていたわけだし…両方渡せば良いんじゃない)

色々考えた結果私は、安易にそう結論づけ…少々不恰好ではあるが弦一郎の家まで、なめこの木をのせた台車で向かう事にした。



こんな風に持ってきた私に、弦一郎は相変わらずの表情で迎えた。

「…もしかしてでもなく、ソレが今年のプレゼントって訳か」

「うん。弦一郎なめこの味噌汁好きだから、思い切ってなめこの栽培セットにしてみたんだ」



「ん?」

「なめこの味噌汁は好きだが…育てることが好きとは限らないだろう」

「そうだけど…好きならやっぱり新鮮な方が良いでしょ。栽培キットは某アプリ並み大体2週間ぐらいで収穫できるし…手間いらず。そうそう、すぐ食べれるように、なめこの生えかけの木もあるし」

…お前のその謎の情熱をもっと他の所へぶつけられんのか」

あきれ顔で言う弦一郎に私は、ハッキリ答えた。

「それが出来たら、私此処に居ないと思う」

その言葉にグゥの根も出ない弦一郎。

「ああ大丈夫だよ、ちゃんとした普通のプレゼントもあるし」

「その普通のプレゼントだけで俺は良いんだが」

弦一郎の言葉を聞かないふりをして私はなめこの木と普通のプレゼントを返品される前に弦一郎に渡した。

渋々受け取った弦一郎は、なめこ栽培キットについてだけ…。

「木のなめこを食べ終わってからだ。勝手に作ろうとするなよ

そう私に釘を刺したのである。

尚、後で聞いた話…今年の弦一郎の誕生日プレゼントの品は某アプリのキャラクターものが多かったとか…色々な事がありながら、今年の弦一郎の誕生日は無事に幕を下ろしたのである。



おわし


2013.8.11.(web拍手掲載〜2013.6.1.)From:Koumi Sunohara

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