サンタクロースの贈り物 (後編) |
−冷たい心に温かな優しい風− |
結構待つのかな?何て思っていたが、以外と薫は早くやってきた。
白い息を弾ませて、我が幼馴染み殿はあっという間に私の目の前で眉間に皺を寄せていた。
「ヤッホー。寒い中ごくろ…」
言いかけた私の言葉を遮るように、薫は言葉を紡ぎ出していた。
しかも…。
「お前は馬鹿か!」
本日2度目となる薫のお言葉だった。
(今度は生だよ…)
ぼんやり、薫の声を聞きながら私はそんなどうでも良いこと思っていた。
誰がそんなアホな事を考えていると想像するだろうか?特に薫はそんな事を考えてると思ってないので、お説教はまだまだ続いていた。
「こんな雪降ってる日に、傘も無ければ…帽子も被って無い…風邪ひけって言ってるもんだぞ」
大きな溜息を盛大に吐きながら、眉間にしわをよせた薫は言う。その顔が少し手塚先輩に似ていた。
凄く心配してくれてるのは分かるのだけど、私は素直じゃないから…やっぱり文句をすぐに言う。
「薫だって…傘も無いし…帽子被ってないじゃん」
子供喧嘩ばりに、私がそう言うと薫は少しムッとした表情を浮かべていた。
「俺は丈夫に出来てる。お前とは鍛え方が違う」
シレット言う薫に私は負け惜しみ満載に言葉を紡ぐ。
「でも風邪はだれでもひくんだよ」
「そう思うのなら、お前も注意しろ」
薫は言いながらペシと額を叩いてきた。
私は小突かれた所為で、少しよろめいた。
少し赤くなった額をさすりながら、「へいへい」と戯けて返したら、薫にギロリと睨まれた。
これ以上呆けても、薫の血圧を上げるだけなので…私は取りあえず真面目な会話を切り出した。
「そう言えば、急の電話だし…わざわざ来るし…どうしたの?」
「ああ。母さんが今年もクリスマス一緒に祝いたいから、の予定を聞けって」
「成程ね。で、家に行ったら私が居なかったって訳だね」
“ほう〜ほう〜”と相槌をつきながら私は薫に言葉を返してゆく。
薫はその様子を見ながら、言葉の続きを紡ぎ出していった。
「それでの叔母さんが…「コタツの虫の物臭娘なら…帽子も被らず…フラリと出かけたわよ」と言ったのでな…電話したって訳だ」
(コタツの虫って…母さん…結構ヒドイ事言ってくれてるな〜)と薫の言葉に思いつつ私は、薫に言葉を返す。
「成程。世話かけちゃったね…ゴメン」
「トレーニングだと思えば、何んという事ねぇ…気にすんな。…お前は、何でこんな日に“散歩”何だよ」
「んー…何でだろうね…」
薫の質問に私は言葉を濁してそう言った。
「言いたくないなら別にいい」
すると薫はそう言ってそれ以上聞こうとしなかった。
そんな薫の気遣いが暖かく感じた私は、何を思ったのか…「湿っぽい話しなんだけど…聞いてくれるかな?」と…そう切り出していた。
薫は一瞬黙ったが「ため込むより…言った方がスッキリするなら言った方が良いだろうな」と言う言葉にポツリ、ポツリ…私は話していった。
12月入って早々付き合っていた彼氏にふられて…失恋していた事や…失恋のショックがそうでもないと思っていたけど、クリスマスムードの街の雰囲気に…無性に悲しくなった事。
何処かで聞いた、一片の初雪のジンクスを信じて寒い中を歩いていた事とか…色々話した。
最後まで話を聞いた薫が、失恋については触れずに口を開いた。
「初雪の一片か…。たしか…北海道ではとっくに初雪は過ぎたらしいがな…それでも初雪と言うのかよ?」
困惑気味に私にそう言う薫に、私はちょっとムキになった口調で返した。
「も〜っ!東京の話しです。北海道の初雪何て11月ぐらいじゃん…東京の初雪の話し言ってるの!」
ビービー言う私の子供じみた言葉は黙殺する薫。
(そうとう呆れてるんだろうな〜。まったく浪漫が無いんだから)
ぼんやり思う私。
「何に願ってるんだか知らねーが、そんな願いは正月にしとけ。それとな…お前が凹んでると調子出ないだろうが…第一クリスマスに恋人と過ごすって誰が決めたんだよ」
薫は呆れ顔で、私に言ってきた。
それは少し意外な言葉で…まるで不器用なりに慰めてくれてるように思えて…思わず私も素直に言葉が零れてた。
「決まりなんて無いよね…そうだよね」
薫の言葉に心がスーッと軽くなったような気分になった。
「そうだよ…家族で過ごしたりするのが大半だよね…何で恋人の行事だなんて思ったんだろう。馬鹿みたい」
私は、持っていた過去の遺物を取り出した。
「何だよそれ?」
「ハハハハ過去の遺物…つーか産物って所」
「悪い…」
本当に罰悪そうに紡ぐ言葉に、私は軽く手を振って、言葉を遮る。
「気にしなさんなって。先までの私なら落ち込んだかもしれないけどさ…今は笑って言えるんだしね。そうだよ悪いと思っているんならさ…受け取ってよコレ」
デリカシーの欠片も無いけれど、私は彼にあげる筈だった物を薫に手渡した。
何というか捨てるのは癪だし…物は良いものな訳で…何となく薫なら良い思い出に変えてくれそうだと思ったからかもしれない。
まぁ…失礼である事には変わりは無いのだけど。
そんな私の行動に、薫は少し目を見開いて物と私を見比べる。
「あ?」
意味不明といった表情の薫に、私は思った言葉をそのまま伝える事にした。
「だってさ、きっとコレ見てグジグジ後ろ向きな気分になりそうだもん…だったら薫に貰って貰って…違う思い出作っちゃえば…きっと笑っていられそうなんだもん」
私がそう言うと、薫は憮然としながらソレを受け取った
「貰ってやるから。いい加減帰るぞ」
プレゼントを持っていて…今は空いている方の手を薫は自然と握りそう言った。
そして思い出す。
クリスマスは本場では恋人と過ごすのでは無く…家族と過ごしたりするものだと…。
「クリスマスは家族や友達と楽しく過ごすもんだよね」
私は心の中で思っていた言葉を、独り言のように呟いていた。
薫は私の突然の言葉に少し驚いた表情を浮かべていたけど、「早く帰るぞ」と言いながら私の手を引っ張って家路に歩き始めていた。
私もそれに攣られる様に、薫と共に帰路に着いた。
ちょっぴり負け惜しみな科白だけど…。
普段と変わらないメンツで過ごすクリスマスも、良いモノで掛替えのないもの。
何時かは過ごさなくなるのだから…。
もう少し、過ごしてたって良いよね?と私は思うことにしたのであった。
おわし
2007.12.11(改訂). From:Koumi Sunohara
★後書寧ろ言訳★
2003.12.2.にUPしていた物なんですが、少し手直しをして再UPです。
ちょっと読みにくさあったので、前後編に編集し直しました。
実際初めはシリアス臭い感じでしたが…やっぱりギャグがニョキニョキ出現。
結果は見ての通りに…初書きの海堂さんだったのに…。
ラブラブ期待した方には期待はずれなお話だったかもしれませんね…。
でも…恋愛未満もしくは、友情系が好きなんですよ…甘い話しも好きですけど…。
何時かは海堂さんで、甘い話しが書ければ良いなぁ〜(遠い目)。
こんな駄作ですが、楽しんでもらえれば幸いです。