その想いは誰にでもいえるモノ
何時もの学園生活。
周りの騒音も変わらぬ日常。
そんな中で、俺は不意にとのやりとりを何故だか思い出していた。
【憧れと恋は違う】
【偶像崇拝の様な想いと恋愛は異なる】
不意に浮かんだその言葉に俺は不意に顔を顰めた。
(この前と話した事が、今の俺に言えることだな…)
キャーキャ騒ぐ、女共の甲高い声。
ウンザリするほどの、ファンからの差し入れに…ラブレター。
中には、嫌がらせのカミソリレター等という…何時の時代の少女漫画だ?とツッコミを入れたくなる代物まである。
ウンザリした気分で、頂いたやら…不法投棄に近い贈り物の数々を一瞥しながら俺は小さく溜息を漏らす。
だがとのこの前のやり取りの所為か、昔なら構うことも無かったそれらを邪険に出来ずに…俺らしくもなくぼんやりと眺めていた。
そんな俺に氷帝一の曲者である忍足が、嫌な笑みを浮かべて俺の方を見てきた。
「珍しいな。跡部はそういったもん受けとらんのが常やのに…今日は台風でもくるん?」
新しい玩具を見つけたガキの様に瞳の奥に、楽しそうに揺らしながらヤツは言ってきた。
ヤツに娯楽を提供するのは癪だが、黙れば余計に勘ぐられ…さらに面倒に為ることは目に見えている俺は…仕方が無く言葉を紡ぐことにした。
「曰く…“恋するお年頃の女の子だから多目に見て”と五月蠅いからな…少しは善処しただけだぜ」
少し疲れ気味に言葉を紡ぎ、俺は忍足に言葉を返す。
その俺の言葉に、忍足は想いを巡らせる様に思案してから言葉を紡ぎ出す。
「ああ…この前の可愛いらしい彼女さんか…」
手を軽く打ってそんな言葉を紡ぐ忍足に俺は、容赦なくツッコミを入れた。
「っ…痛ぁ〜っ。跡部、叩くことないやろ」
大分痛かったのか忍足の奴は、少しだけ涙目になっていやがった。
(まったくもって大げさなヤツだ)
俺は内心そんな想いを抱きながら、訂正するために口を動かす。
「保護者兼…手間のかかるペットを持った飼い主だ」
忍足に「間違うな!」と強めに語尾を強めてそう言う。
そうすればヤツは、何やら考え気味に口元に手を当てて…思いついた様に言葉を返してきた。
「成る程、幼馴染みさんちゅ〜事かい」
「まぁそんなもんだな」
そう言うと忍足の奴は、「ハイハイ分かったて」と言葉を締め、俺が出すであろう言葉を待っていた。
その態度にムカツキを覚えたが、俺は取りあえずその感情をやり過ごし、本題を出すべく言葉を紡ぐことにした。
「忍足…お前は、“好き”と“好み”は違うと思うか?」
ハッキリ言って「何を言ってるんだ?」って自分でも思うが、何故だか俺は不躾すぎる言葉を忍足に紡いだ。
勿論、忍足は俺の言葉に軽く肩を竦めてみせた。
「不躾な質問やなソレ。主語があらへんやないの」
眉を顰めた忍足を軽く睨めば、彼奴は溜息混じりに言葉を続けた。
「は〜っ。まぁ〜、それが人に対する事やとしたら…俺的には、好きと好みはちゃうと思うよ」
「そうか…」
「何や…跡部らしくない質問やな。それともこの前のお嬢ちゃんに、謎かけでもされたん?」
眼鏡を軽く直しながら、言う忍足の言葉に俺は言葉を濁しつつ頷く。
忍足は俺のその仕草に、自分の予想が当たっている事に満足そうに笑い…忍足曰く謎かけについて聞いてきやがった。
俺は仕方がなしに、この前有った出来事を掻い摘んで説明し…忍足の出方を見ることにしたのだった。
面倒なのでかなり省略した説明にも忍足は、珍しく茶々を入れることもなく聞いていた。
そして…。
「はんみたいに、真剣に好きだという気持ちがこもってるモノを有るかもしれへん…だから甘んじて貢ぎ物を受け取ることにした…ちゅー事かい。跡部も優しい所あるんやな…」
実に珍しいモノを見るような目を向けて忍足は、俺に感心気味にそう言った。
だからだろうか…俺は、思わずこの前に言われた言葉を口に乗せていた。
「“当分の間は景さんの側でウロウロしながら、男の見る目を養うとするよ”って言われたらそうなるんじゃねぇかよ」
“ふー”っと溜息を吐きながら、俺は言うと忍足も考え深げに言葉を返す。
「伝家の宝刀出されたら…かなわんわな…」
返してきた忍足の言葉に俺は短く気のない返事を返し、この話は終わりだと言わんばかりに終らせた。
そんな俺の何時もの調子に…奴は…。
「そら〜“想いは誰にでも等しくいえるモノ”ちゅー事やな…まぁ少しでも人に優しくなるちゅーことは良い傾向何やろうね」
ボソリとそんな言葉を紡ぐ忍足の言葉を聞えないフリをして、俺は不法投棄に近い贈り物の数々を紙袋に黙々と移し替えた。
あの言葉を紡いだを思い出しながら。
おわし
2012.7.20.(WEB拍手掲載:2012.2.1.) From:Koumi Sunohara