雨宿りを二人で
−互いを知り得る…そんな時間−



苦手な人と話すのは苦痛です。
勿論、対峙してしまったり沈黙なんてもってのほか。
ある種の拷問に近いと思う。

それが今まさに現実になっているのです。
…真田弦一郎氏のファンに撲殺されるかも知れないぐらい二人きりの雨宿り中です。

真田君の名誉の為に言うが…別に彼が嫌いだとか…すさまじい嫌悪感に悩まされたりするワケじゃない。
真面目だし…人当たりを覗けば、無害な人と言えると思う。

だけど…彼から醸し出される同い年とは思えないオーラー…言動…そして近寄りがたい言いようの無い雰囲気。
呆けた彼にノリ突っ込みを入れるほど、私はチャレンジャーでも…脳天気な人種では無いのだ。

故になるべくなら、関わらない…平凡な生活を望む私にとって彼は苦手な人種なのである。

だが神様は結構…無情で非情。
外は雨…傘は残念ながら無く…雨宿り場所は…今現在居る所のみ。
逃げ場は、雨の降りしきる外だけと言う状況下に、彼と私を置いているのである。

(まいったね…傘を持ってこなかったよりもこの状況だよ…)

はぁ〜と何度目とも分からない溜め息を吐いた頃、隣にいる恐れ多い人材もまた同じタイミングで溜め息を吐いた。

「まったく…雨などたるんどる」

ボソリと吐き出す言葉に、彼の今置かれている状況にウンザリしている様がありありと表しているようだった。
そんな風に少しだけ愚痴を零す真田君は、思ったより自分と同じ年なんだって感じた。

(やっぱり真田君も人の子なんだよね…凄く普段大人びて…落ち着き払っているけれど)

ボンヤリと考えていると、思っていた人物に声をかけられた。

雨宿りか?」

そう声をかけられて私は思わず頷いた。

「えっと…傘忘れて」

ボソボソと理由を言えば、彼は以外にも話に食いついてきた。

「ああ…急な雨だったしな。俺としたことが折りたみ傘を入れ忘れてしまった。まったく不甲斐ない」

「真田君も傘を忘れたんですね…同じですね」

思わず自然と敬語と彼に言う私に、言われた彼は顔を顰めた。

「何故…は敬語を使うのだ?」

そう言われて私は困った。
だって彼に対しての第一印象といい、クラスメートとしての彼への印象はけして良好とは言えないのだ。

(同年代とは思えない…風格って言ったら…流石に傷つくよね…要するに老けてるって言われてるようなもんだもの)

色々自分なりに考えながら…当たり障りのなさそうな言葉を紡いでみる。

「常勝を看板に掲げてるテニス部の副部長さんだから…恐縮しちゃって」

乾いた笑みが思わず零れながら、何とかそう言い切ると彼は軽く目を見開いた。

「ほぉ…はテニスに興味があるのか?」

食いつかれた話題に、私は(どうしよう…実はテニス知らないし…凄いっていうのは噂でしか聞いてないよ…というか…何でこんな話題に食いつくの?)と心の中で一気に、答えのない疑問を叫ぶ。
ので…私は…。

「御免なさい…。テニスの事よく知りません。でも…ウチの学校がテニス凄いって噂で…それで真田君の事も聞いたの。スポーツは嫌いでは無いから少しは興味もあって」

慌てて頭を下げれば、彼は少し眉を寄せた。
私は真田君の表情の変化に…(どうしよう…きっと機嫌を損ねた)と瞬時に感じた。
それに何だか、眉間に皺が増えた気もする…かなり機嫌が悪い様に私は思う。

「そんな事は他の者も同じであろう。だがは興味はあるのだろう…それは理解した。だが…何故怯えるように俺に接するのだ?」

「へ?」

思わず発する間の抜けた言葉に、彼は聞き返す事もなく私の次に言うであろう言葉を待っているようだった。

(まって…凄く待ってますという威圧感は何?と言うかこんな沈黙体に毒だよ)

困りながらも沈黙が耐えられない私は、どうにかこうにか言葉を紡ぐ。

「えっとね。テニスはルールが分からないのでよく分からないの…だから嫌いって事ではなく…ルールが分かれば楽しいと思う…スポーツミルの好きだから。あと…真田君に対しての対応だけど…」

深呼吸を一つ吐き、再度言葉を続ける。

「怯えるというか…何というか上手く言えないんだけど。恐れ多い感じのオーラが…というか…纏っている空気が緊張感を生むというか…とにかく、真田君自身が嫌いとかでは無く…ただ…空気に怯むって感じなの。って上手く説明できないし…御免なさい失礼な事言って」

切れ切れながら紡ぐ言葉に、真田君は怒るわけでも無く黙って言葉を待ってくれた。

「成る程…だから、他のクラスメートも何か線を引いた雰囲気を感じたのか」

“フム”小さく漏らした後真田君はそう言う。

「まぁ…そうなりますね」

思わず同意の言葉が、敬語になれば「だから敬語は要らぬと言っただろ」と古くさい言い回しで指摘し…少し間を置いて彼は再び言葉を紡いだ。

「兎も角だ俺もも気を遣い合うのは可笑しい事だと思うぞ」

紡がれた言葉の意味がよく理解出来ずに、首を傾げれば彼は続けた言葉を紡ぐ。

「確かに俺はテニスは秀でているかもしれんが…と同じ年の同じ人間だ。それは分かって欲しい」

そう言われて私は頷く。

の言う俺の出す雰囲気にかんしては、自分ではよく分からんのでどうにも出来ないが…こんな狭いところで雨宿りだと言うのに…変な空気ではお互い気が滅入る」

その言葉に私はコクリと縦に頷く。
私の同意の動作に真田君は、少しだけ柔らかな表情を見せてくれたような…気がした。

(案外…壁を作っていたのは私の方だったのかな?)

真田君をぎこちないながらだけれど話を交わしながら、私はそんな事をぼんやりと思う。
二人の距離が縮まったのを合図のように…見上げた空には晴れ間が覗いていた。
私は少しだけ…真田君が苦手では無く成った気がした…そんな雨宿りだった。


おわし

2005.8.13. From:Koumi Sunohara


★後書き★
雨音5のお題より、テニプリ夢駄文。
皇帝と一般人の歩み寄りって所でしょうか…。
さてはて、貴方なら真田さんと二人になって会話になったときどんな反応になるのでしょうか?
こんな風にこの子に共感出来た方がいらしゃったら幸いです。


お題置き場 夢駄文