柚湯込められた願いの行方
日本は中国や周りの国の風習に感化される。
七夕…クリスマス…ハローウィン…様々。
身体の芯に響く風が吹く、頬に当たる風は鋭さを感じるそんな季節。
もうすぐ雪が舞い降りそうな雰囲気を持つある年の冬至。
割とイベント好きな切原家でも勿論、冬至を行う。
冬至かぼちゃを食べて金運を祈り、冬至風呂(柚子湯)に入って無病息災を祈るこの行事。
惰性的と言われても毎年行う訳で…長女であるさんは、学校に向かう弟赤也に声をかけた。
「赤也。今日は寄り道せずに帰ってくるんだよ」
「何だよ姉ちゃん藪から棒に」
「藪から棒だなって…難しい言葉言えるようになったのね…少し驚いたわ赤也」
「いや…そうじゃなくて何だよ」
少し溜息混じりに紡ぐ弟の言葉に、は軽く言葉を紡ぐ。
「今日は冬至だからね。柚湯に入るでしょ?遅くなったら追い炊きに時間がかかるし、柚の香り飛ぶから早く帰ってこいって事よ」
姉の言葉に赤也は「なるへそ」と分かったのか分からないのか不明な言葉を返す。
そんな調子の弟に姉は少し肩を竦めてみせる。
「原油高騰のご時世なんだからね…あんたが節約できるのは其処ぐらいでしょ。分かったら部活終わったらすぐ帰ってくるのよ」
ビシッと言う効果音が出そうな勢いで、指をズイッとさして言うの姿を、是非世の政治家諸君に見せてやりたいほど気迫に満ちていたとゆう。(赤也後日談によると)
「わ…わかったスなるべく早く帰りますって」
若干おびえながら赤也は姉の言葉に頷くと、一目散に家を出た。
その様子をは満足そうに見守った。
の言いつけを見事に護った赤也は、家に帰るなり…追いつめられるように柚湯に浸かったと言う。
そんな風呂に向かう弟に何とも言えない顔をしながら姉は呟いた。
「“融通(ゆうずう)が利(き)きますように”っていう願いが込められているんだけど…。さてはて融通の利く弟になるのかね」
柚と冬至のカボチャの心地よい香りの感じながら。
赤也が柚湯の意味を知るのはずいぶん先の話である。
おわし
2009.9.7. FROM:Koumi Sunohara