試合 |
−勝たねばならないそんな訳− |
時として人は、戦って勝利を収めねばならない日がやってくる。
部下の下克上を阻止する上司。
はたまた…両親と子供。
そう…姉として弟に勝たねばならない時がある。
コレはまぁ…姉という…年上の生き物の性。
とは言え生物学上、私と赤也は男と女と言う分類分けがある。
男と女の力の差は…時には埋められない場合もある。
男女平等…そういう世の中だけど、実際問題…体力差や色々問題もあるのは仕方がない。
それでも私としては、何が何でも弟より強い姉で居なくてはならない。
何て言うのだろう…暴走した弟を止めれる人間として、何かで確実に勝てなくては…ストッパーになれないからって言うのが理由なんだけどね。
まぁ姉としてのプライドと言うか…もはやプライドを通り越して、単なる意地を張っているだけだと思う。
自覚しているだけに、あまりの自分勝手ぶりに拍手喝采を送ってやりたい。
何だかそんな時…つくづく自分は弟に似ているのだと、自覚してしまう時なんだけどね。
そんな私はついに弟の得意そうな分野で勝負する日が来た。
些細な言い合いの末に、「じゃ姉ちゃんはテニスで俺に勝てるのか?」みたいな話しになって…バトル勃発。
正直四六時中テニス三昧の愚弟に勝てるかというと無理な話。
けれど、姉としてひくわけにもいかな。
いや…この場合はひいても良いと思うのだけど…辺にプライドが高いのかひけないだけなんだけども。
そんな私が提案したのが…。貧乏卓球。
どの辺が貧乏なのかと言いますと…使用するもはラケットでは無く生徒手帳。
無論ネットも無ければ、審判もセルフジャッチ。卓球の球とソレを打つ物さえあれば出来るというお手軽勝負。
むしろ手で打ったって構わないが…白熱する内に痛くなるのでお勧めしてはいない。
ともあれ、テニスに似たこの競技で勝負をつけることを提示した私に、お約束通り赤也は難色を示した。
「何スカその貧乏くさい卓球でも無さそうなヤツ。って言うかテニスじゃねぇじゃん」
「舐めるな小僧!貧乏卓球を甘く見るとは笑止千万」
「実の弟に小僧呼ばわりは流石に酷いス。何より貧乏卓球ってテニスじゃ無いス」
「英語嫌いめ…卓球はテーブルテニスなんだから一応テニスでしょうに。問題無い筈よ。ただ貧乏卓球なだけじゃない」
ビシーッと指を指して、私は赤也に言う。
その言葉に弟は、ウッと言葉を詰まらせる。詰まらせた弟を畳み掛ける様に私は言葉を紡ぎ出す。
「元々赤也がテニス云々で、私が勝てないとか言うからこうなったんでしょうに」
呆れ顔でそう言えば、弟は顔を大きく顰める。
「でも…その…」
言い淀む弟に私は、まくし立てるように言葉を紡ぐ。
「アンタね…プロ野球選手に小学生が勝負して勝てると思う?Jリーグ選手と戦う一般人と一緒でしょうに。ハンデ貰って後味悪い勝負するぐらいなら、似たようなモノで勝負する方が堅実だと思うでしょ」
言い切る私に弟は少しだけ真面目な顔をした。
「テニスだろうが貧乏テニスだろうが…テニスに関しては姉ちゃんに負けない」
その言葉で、私と赤也の戦いの火ぶたが切って落とされたのである。
勝負の行方?まぁソレは後日というか…神様と私と弟が知ってるって事で。
おわし
2006.9.20. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ web拍手にて2006.6.3〜掲載していたモノです。 姉弟は必ず何処かで張り合ったりする傾向があると言うことで、こんなお話です。 年が離れすぎたり異性だとあまり無いようですが…同性なら多そうですね。 姉さんは、年が離れていようが戦うお姉様なのでケンカが絶えませんけれどね。 ひとまず楽しんで頂けたら幸いです。 |
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