SOS
−持ちつ持たれつの間柄−




切原さん家の赤也君は色んな意味で、問題児。
と言うより…今時っ子と言うか…末っ子気質な子である。
学校では、年齢詐称では?と思えるほど落ち着き払った先輩方に囲まれ…家では母の様な姉と接する日々を過ごしている。


そう言った理由も有るのだろうか…赤也は、家でも学校でも年少者として扱われる所為か…少々(?)我が儘で…時には問題児だったりするのだ。


だが奔放な弟を持つさんも…人の子である。
時には、些細な事で腹を立てたり…理不尽に赤也に八つ当たりしたりすることも有る。


そう…切原ブラザーズは持ちつ持たれつの似たもの姉弟なのだ。
そんな似たもの姉弟のある日の出来事。



珍しくその日は、姉も弟もオフだった。
そんな偶然も実に珍しいが、さらに偶然が偶然を呼んだのか…この姉弟は予定も何も入って無く暇だった。
その為どちらが提案したわけで無いが…家でダラダラしてるのも何だか、性に合わない赤也とは暇を潰すべく大きめのアミューズメント施設に足を向けることにしたのだった。


メダルゲームやUFOキャッチャー…音ゲーなど一通り堪能した姉と弟は、ビデオゲームコーナーに足を踏み入れていた。
元来ゲームなら雑食だと言い切る赤也とは、各々のやりたいゲームをするべく一旦別行動をとる。


そんな時間が数十分過ぎた頃に、事が起きたのだった。
新作のシューティングゲームをやり終えた赤也に、別れた時まで上機嫌だったが不機嫌な声音で声をかけてきたのだった。

赤也は何故姉が不機嫌なのか皆目検討もつかずに首を傾げて、不機嫌な姉を見る。
だがは相変わらず不機嫌な様子で、もう一度言葉を紡ぐ。


「赤也…」


そう言いながらは、赤也に一枚のコインを差し出す。
姉の突然の行動に赤也は面食らいながら、差し出されたコインを受け取った。

受け取ったコインを指で弾きながら、赤也は姉と自分の周辺をグルリと見わたす。
其処には、何の変哲もないアーケードゲームの台が数台と…そこでゲームをしている人間がポツポツと姿が有るだけ。

その何も変哲もないゲームセンターの日常の様子に赤也は少し唸りながら、とゲームセンター内を交互に見比べた。


(ん〜…別に変な事も起こってないと思うんスけどね…)


心の中で、そんな事を思いながら赤也は再度グルリと辺りを見渡した。
そして…赤也は一台のアーケードゲームに気がつく。


(あれって…姉ちゃんがメチャメチャ凝ってる格ゲーの新作じゃ…対戦台になってるんだ〜…って対戦台?)


赤也はが凝っているアーケードゲームの台を見て、「ああ」と小さく声を漏らした。


(対戦台…対戦台。つー事は…姉ちゃんが先まで戦っていたのはコンピューターじゃ無かったってワケか…)


顎の辺りに手を当てて赤也は一つの答えを導き出す。


(しかも…女っていうの確認してわざわざ乱入しったって感じだよな…。持ちキャラ使わないで姉ちゃんの使ってるキャラ使って…居るよね性格悪い奴)


そして…。


「なぁ〜る程ね」


心の中で呟いたと思った言葉は、見事赤也の口から
そんな弟の納得の様子など気が付かず、姉であるは相変わらず不機嫌そうに眉を寄せていた。


「何が成る程なのよ…まったく。こっちは腹立ってるのに」


しまいにはブチブチと文句を言い出す姉に、赤也は少し苦笑を浮かべてすぐに言葉を返す。
黙っていては余計の機嫌が悪くなることを長いつき合いで分かっているのだろう。


「まぁまぁ。俺ってば洞察能力が長けるワケじゃ無いの姉ちゃんも知ってるじゃない。少しは大目に見てよ…ぶっ潰してくるからさ」


ピンとから受け取ったコインを弾き赤也はテニスの試合をする時みたいな鋭い眼光をチラリと見せて姉に飄々と言葉を紡いだ。
そんな物騒な言葉を紡ぐ弟に、は今日は咎める気が無いのか満足そうに微笑を浮かべる。

そして、綺麗な微笑をとは裏腹に殺気に満ちた瞳で彼女は普段では考えられない程の低い声で赤也に言葉を告げる。


「許す。潰ししてきな」

「完封無きままにデショ。分かってますって」


ニヤリと不敵に赤也は笑うと、が戦っていた対戦台の椅子に座った。
当然の様に赤也は、コンピューターと対戦しているだろう…相手に勿論姉が使われた手で赤也は同じ事をやってのけた。

一つ違うことは、赤也は持ちキャラ以外でも自分の思い通りに操作出来ると言うことだ。格ゲーにかけては立海大テニス部の折り紙付き。
勿論持ちキャラの使っていない相手は見事に赤也に沈められる。


の要望通りに敵をこてんぱんにする赤也を姉は満足そうに眺めている。
すると…赤也に負けてコンテニュー画面になった相手はすかさず再戦してきた。
勿論今度は持ちキャラで。


(ふーん…持ちキャラで勝負ってワケ?まぁ俺にはあんまり関係ないけど)


画面を見つめながら、変わる対戦相手に赤也は興味無さそうに心の中でふと思う。
姉のも(変えたって…結局負けるのにね…)と肩を竦めてその様子を観戦した。

冷ややかなの予想通りに彼女に苦虫を噛み潰した思いをさせた相手は、赤也にの屈辱を再現させられる事となった。
何度かの乱入の末、結局相手はすごすごと対戦台を後にしたのだ。


同じ相手との詰まらない対戦に飽きていた赤也は、ロードの時間の合間に首を解すようにコキコキと音を鳴らす。
そして…。

「で…ご満足頂けたお姉様?」


一瞬クルリとの方に目を向けた赤也は、悪戯が成功した子供の様にそう言った。
は自分の敵を取った弟にニッコリ笑って労いの言葉をかけた。


「ええ大変満足よ。赤也が大活躍したワケだし…今日は焼き肉に決定ね」


…と。
赤也はのその言葉に、「そうでなくちゃ」と楽しげに呟いた。


これは、ゲームセンターでの仲の良い姉弟の一コマである。


END

2004.9.8. From:Koumi Sunohara



★後書きと言う名の言い訳★
赤也姉夢シリーズです。
今回は小話って感じで、実に短いものになりました。
たまには、赤也君にも見せ場をと思ったのですが…あまり見せ場になってない気も…。
何時か姉さんが頼れる弟君にしてあげれれば良いのですが。

兎も角此処までおつき合いいただき有り難う御座いました。



BACK