Poisson d'Avril
4月1日…俗に言うエイプリルフールと言う。
別段昔から日本である行事でも儀式でも無いけれど、ザックリと日本人的に『嘘が許される日』と言う認識だったりする。
まぁ…これには、海外ではフォローが付いていて…次の日には嘘を訂正すると言うオプションが付けくわえられている。後は、害の無い嘘にする事をなどとルールは色々と有るみたい。
詳しくは知らないわよ雑学王でも無いものだから。
海外ではこの時期、アジだかサバだか兎に角魚が釣りざお入れれば入れ食い状態で魚が釣れるらしい。そんなこんなで、この時期の魚は愚かであると言う事と…エイプリルフールをかけてポワソンダブリエル…4月の魚と言うお菓子を揶揄って食べるらしい。
この時期は、海外のお菓子屋は魚屋になるように魚型のチョコやスイーツが並ぶんだと友人の誰かが言っていた。
有名洋菓子店の切り抜き片手で力説していたのが今でもすぐに思いだす。
その時載っていた雑誌に、かなりファンシーな魚型の『ポワソンダブリエル』…何となく憎めず可愛く美味しそうなそれの第一印象は…。
『まるで焼き肉って言葉を使えば大抵言う事の効く弟』が思い出された。
焼き肉という名のブランドの釣り竿を赤也の前に垂らせば、十中八九弟が釣れるのが目に見える。
入れ食い状態の魚釣りと弟が重なるのはどうかと思うけれど、正直思い浮かんだのはそんな弟の顔だった。
「やっぱり一番は焼き肉にかぎるぜ」
草食系男子と言う言葉など一切当てはまらない、肉食系ならぬ『肉食う男子』である弟とポワソンダブリエルはやっぱり重なるものがある。
(よく小さな子に…「お菓子くれるといっても、着いて言っちゃだめよ」と言う母親の言葉を思い出すわ…焼き肉に釣られて、女性関係で泥沼になったら笑えないわ)
直進的な赤也に私は、不意にそんな思いを感じずにはいられない。
若干実の弟の行く末を心配しつつ、美味しそうなポワソンダブリエルには心惹かれるモノがある。
サクサクのパイ生地に、濃厚なカスタードの上に飾られる旬の苺が私をまるで手招きしてるように見えるのは、幻想では無いと思いたい。赤也の先輩である丸井君もきっと賛同してくれるに違いない。
「あのスイーツ俺に食ってくれっていってるに決まってるだろぃ」
とか何とか言うに違いない。
まぁ彼の場合は、私の分もサラリと悪びれずに食べてしまうと言う結末がまっていそうだけど…。何だか光景が浮かぶ様で微妙な気分になる。
その他目に浮かぶのは、弟の先輩Sで…。
(何だろう…この交友関係の狭さは…)
ちょっぴり現実にぶち当たり、少し悲しくなる自分が居る。
まぁ…悩んだってどうしたって、現実は変わらないのであまり気にしない事にする。
それよりも、ポワソンダブリエル。
折角4月1日ならば私も何かしてみようか?
意外に純粋な愚弟は、嘘を真に受けそうだから…赤也からの嘘への切り替えしするっていってもね、何時もの事で詰まらない。
さてさて、どうしたものかと思う。
(嗚呼…ワカメでもそっと添えてやるのも良いかもしれない…大方、対私様にすぐばれる嘘を用意してくる愚弟を思えば、こんな悪戯も案外悪くないかもね…結果美味しく食べれるしね)
そんな事を思いながら、私は結局ポワソンダブリエルを購入する事にした。
弟の嘘に対するちょとした悪戯心と甘いスイーツに惹かれて…。
え?結果?
それはご想像におまかせってことでね。
おわし
2011.9.19(WEB拍手掲載:2010.7.18.) From:Koumi Sunohara