離れていても
−此処と其処は何処かで繋がっている−



世界は丸い


凄い時間がかかったとしても


グルリと回れば何時か


巡り会える


それがどんな距離であっろうとも



澄んだ空気。大きく空気を吸い込むと、何だか気分が良い感じがする。
毎日の事でも、それは何時だって新鮮な気分をもたらしてくれる。

私は普段の習慣に習って、郵便物が届いていないか玄関に居た。
郵便受けには何も入っておらず、私は今日はないのだと判断して家の中に入ろうとした。

ちょうどその時だった…。

「大神さん郵便ですよ」

背後からかけられたのは、馴染みの叔父さんの声。
私はクルリと振り返り、叔父さんに言葉を交わす。

「ご苦労様です。えと…何処からのものか分かりますでしょうか?」

「えっと帝都からですね」

郵便配達の叔父さんは、切手に押されてるスタンプに視線を落としてそう言った。

(遠い地…帝都と言う場所に居る兄からのだろうか?)

そんな思いに駆られながら、私は郵便配達の叔父さんに笑顔でその手紙を受け取った。

「ありがとう御座います。それではお疲れ様です」

配達してくれた叔父さんに頭を下げて、私は家の中に手紙を持って中に入った。


履き物を脱ぎ、家の居間と縁側の中間に位置する廊下で私はそっと手紙の裏の宛名を確かめた。
其処には案の定「大神一郎」の文字が達筆な字で書かれていた。差出人宛は父や母ではなく私宛になっていた。

(やっぱりお兄ちゃんからね…まぁ…帝都の知り合いなんて…居ないから当然と言えば当然ね)

そんな事を思いながら、私は遠い地に居る兄を思い返した。



小さかった私に大好きな一郎お兄ちゃんは何時も口癖の様に言っていた…。

「帝都を…皆を守るのが俺の夢だよ」

瞳をキラキラさせてお兄ちゃんはそう言う。
その度に私は…(本当に叶えたい夢なんだなぁ〜)と心底思った。

そうして時間は流れて、一郎お兄ちゃんは軍人になり…帝都へ。
海軍に入っていた筈が、帝国歌劇団…コト華撃団の隊長になった。
文字通り、帝都を守る存在になったのだ。

だから今日届いた一郎お兄ちゃんからの手紙も…きっと帝都での充実した日々を綴られているのだろうと思う。
開かなくてもソレは、長年側にいた妹である自分にはよく分かるコト。


私は兄の居る帝都に行くことは無く、自然に囲まれたこの地に居るけれど。

だけれど遠く思いを馳せて祈ることは出来る。

例え遠く離れていたとしても…。


「お体には十分気を付けて下さいね…お兄ちゃん」


私は手紙を握り、帝都の方角を見つめながら小さく呟いた。
それがせめて私に出来る唯一の祈りなのだから。


おわし


2005.6.16. From:Koumi Sunohara





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