花 に 嵐 |
−心に吹き抜ける恋の予感− |
私の日々の生活は平凡で凡庸だと思う。ようは、つまらな生活を送ってる。
その所為のかあっというまに過ぎていく時間。同じことの繰り返す、ありふれた毎日。
それは上司からの小言を聞いたり、同僚や部下の愚痴を言ったり聞いたりの変わらない日常。
正直仕事に追われ、ストレス発散の矛先の無い私にははっきり言って息詰まる日々だったりする。
まぁソレは私の忍耐が少々足りないが故の、マイナス思考かもしれないが・・・。
それでも、溜りゆくストレスはリアルな現実なのである。
そんな人としてもあまり面白実のない私に、変化が訪れた。
何気なく気まぐれに起動したパソコンのメールボックス。普段はダイレクトメールばかりなので、しっかり見る事の無い私がその時ばかりはゆっくりとメールを見ていた。
しばらく読んでいなかったメールは…受信ボックス内を占領して…何のメールが来てるのかも謎だ。
だから私は暇なことを利用して、この日ばかりはメールの画面に齧り付いていたのである。それは…本当にたまたまの行動だったのだけど…。
(溜めるのは…貯金ぐらいよね…メールや仕事を溜めたら後で首を絞めるのは自分だもの…)
などとかなり現実味溢れる…思いを抱えながら画面としばらく睨めっこをしていると、明らかに自分宛では無いメールに気が付いた。
聞いたことのないドメインに…タイトルもイマイチよく分からない。
どう見ても、間違いメール。
でも普通ならば、間違いメールなど放っておくか、間違っている事を伝えて終りだと思う。むしろ過去の経験上そうだった。
なのに、そのメールだけが気になった。
(変わったアドレスだからかしら?)
そんな思いも浮かぶけれど、メールというモノは案外ウイルスなんてくっついていたりする。
迂闊なのは百も承知…だけど、わき上がる知りたがりの心は止まらずに、迷うことなく其の間違いメールであろうメールを開いていたのである。
開いた画面には、長々と英文なのか…外国語が広がる。
知ってる単語を探しながら、苦手な英文に目を走らせると…いくら英語が苦手な私でも分かる事に行き着く。
(コレは…)
一般人の私には皆目検討のつかない文面がツラツラ書きつづっている。
恐らく、何処かの仕事関係のメールが誤って一般人である私のメールアドレスに送られてしまったようだ。
オラクル…神託を意味する言葉…辛うじて読めたのはその部分。
まぁその他にも読める単語は何点か存在はしたけれど…印象的ですぐに理解できたのはその単語。
だけどその単語を理解したところで私にはサッパリ。
普段の会話に神託なんて言葉を交えること何て滅多にというか…ほとんど無いし…仕事と言ってもピント来ない。
そこで私はオラクルと言う名は、普段聞き馴れない所為で勝手にハンドルネームだと解釈しいた。
後々この解釈が間違っていて、実は凄い相手とメル友になっていた何てこの時の私はまったく予想だにしていなかったのだ。
そのオラクルとのメールは仕事の愚痴だったり、日常の些細な出来事などで盛り上がる。
文面と何度かのメールでオラクルは男性であることも分かり…それでも不思議と彼とのメールは楽しかった。
毎日のメールというわけでは無い…つかず離れず…まるで朝と夜の関係のように…現実世界の友人よりもつき合い易いメル友。
もしかしたら、今一番会話が合う人間は彼だと言い切れそうな気もする。
その位オラクルと私は頻繁にメールをやり取りし合う仲だ。
幾度と弾む話題と…仕事の愚痴など…様々な相談事などをしながら私と姿の見えないメル友との間には不思議な信頼関係が築かれていったのである。
そんなある日のメールで、オラクルのさりげなく投げてきたメールは嬉しさと戸惑いを生んだ。
メールの内容は、気が会うので会ってみたですねと言う…社交辞令の言葉。
それでも何となく嬉しいと思った。
社交辞令であれ…本音であれ…そう言ってくれるオラクルのメールに心が温かな気分になる。
其れと同時に、彼の見ているモノ…彼自身に会ってみたいと思い始めている自分が何だか…恋をしている少女の様だと思った。
(恋なのかしら?だけど…もう…そんな風に言ってる年でも無いのにね)
自嘲気味な思いと、彼からの暖かいメールの内容に心が揺れた。
(会いたい…だけれど…会いたいとは言わない…否…ただ会うのが怖いだけね…)
不意に浮かぶ本音。
それは、まるで文通相手の事を気にかける一昔前の少女の様で苦笑を誘う。
自嘲気味に笑っても、悲しきかな…今此処に私しか居ない。
(色んな出会いがあったって良いんじゃ無い?)
少しだけ開き直ってそう思う…だけど私は臆病な人間だから…会いたいと仄めかすメールを打つこと何て出来ない。
変化球なしの…直球勝負な人間だからきっと本当の言葉ばかりが流れ出す。
(やめやめ…此処は一丁気分を変えなきゃ…何だか暗い方に気分が向いてくるしね)
少し溜め息を吐き、思考をかえるべく濃いコーヒーを入れるべくPCの前から立った時だった…新着メールを告げる音が静かに響く。
(あ…メールだ…。もしかしてオラクルかしら?だけど別に電話では無いわけだし…)
後ろ髪引かれる思いに駆られながら、私はコーヒーを優先した。
ぐちゃぐちゃの思考のまま今メールを見たなら、わけの分からないメールを返しそうと言う気持が強かった所為かもしれない。
それが私と彼を現実でつなぐメールになると知っていたのは…神様だけ…いいえ神託という意味を持つ彼ぐらい。
私はこの時点ではサッパリ思ってもいなかったのだから…。
おわし
2005.9.26. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ 花華10のお題より初のTWIN SIGNAL夢駄文。 と言っても夢未満でしょうか…オラクルが出てませんからね…。 ともあれ読んで下さった方が楽しんで頂けたら幸いです。 web拍手にて2005.8.21〜掲載していたモノです。 |
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