小さい頃から一つの疑問が有った。
幼なじみって友達とはカウントされないのかと言うこと。
普通の幼なじみならきっと、友達だったり…付き合いが長かったりするから…少なからず友達のような関係があると思う。
私の幼なじみもそんな関係だったと思うのだけど…。
それってただ私が思いこんでいただけなのかもしれないと、最近思ってしまう。
仲が悪いわけでも、無視されるわけでも無いからきっと嫌われては居ないと…思うけど…。
自分の事を平気に“嫌われもんどす”とか“友達おりまへんし”等と平気で言ってのける。
そう言われてしまうと…私の立場って何なのだろう?って考えてしまう。
幼馴染み
かなり曖昧で表現しにくい関係に、私は最近不満を感じずにはいれない。
その幼馴染み殿は言わずとしれた、祇園仮面アラシヤマなのだけど。
私は至極当然という顔で、新生ガンマ団総帥の部屋のソファーにドカリと座り、勝手にお茶を飲んでシンちゃんを目の前にしていた。
「お前くつろぎすぎだぞ、 」
「良いじゃない同期なんだし」
「あのな〜 、今は一応俺総帥になっただけど」
米神に指を軽く置いたシンちゃんは、あきれ顔で私にそう言ってきた。
「総帥だろうが、シンタロ−はシンタロ−でしょ。今更総帥って私に呼ばれて嬉しい訳かね?」
「嬉しい嬉しくないの問題じゃないけどよ。一応」
「一応なら良いじゃない。気にしすぎるとハゲルわよ」
「で、俺に何か用なのか がシンちゃんって呼ばないで、真面目に名前で呼ぶときは…大抵ロクナ事無いんだよな)」
青筋を浮かべながら、シンちゃんはそう言った。
ズズズズズズズウ〜ッ。
茶を軽く啜り私は口を開く。
「用が無ければわざわざ此処まで来ないでしょ」
「へいへい」
「私とアラシって何だと思う?」
持っていたお茶をテーブルの置いて私は単刀直入に、シンちゃんに尋ねた。
「はぁ?今更何言ってるんだ 。お前とアラシヤマは幼なじみだろ」
呆れたようにシンちゃんは私を見る。
「そう…幼なじみなんだよね」
シンちゃんの答えを聞いて、私は苦笑いを浮かべて言葉を紡ぐ。
一拍置いて私は自分の中に有る疑問を口にしてみる。
「幼なじみって何なのかしら?」
「…」
私の質問にシンちゃんは、少し困った顔をして黙って私を見る。
「グンちゃんは、シンちゃんの親戚だから友達とは言わないのは分かるんだけど」
「まぁ〜親戚じゃねーもんなアラシヤマとはな。でもよ〜友達以上のそんざいじゃねーのか」
「だって彼奴、"どうせワテは友達一人もおりませんもん"とか平気で言うのよ」
「そう言えば…“友達になってくだはれ”ってしつこかったな」
「マーカー先生だって、“ワテ友達出来はりました”って言ったアラシに“嘘だ”と言い切ったし…それって私の立場無いと思うのよね」
「で…俺にどんな答えを求めてるんだお前は」
「いや〜ね。客観的に見たら、私とアラシってどう言った関係に見えるのかな?って思ってさ…。ん〜ちなみにマジック様にも相談しちゃった」
「何、頭抱えてるのよ〜」
「親父に言ったって事は…アラシヤマには話の内容がおもしろ可笑しく伝わってるぞ」
米神に指を置いて顔を顰めてシンちゃんは私に言ってきた。
「マジですか?」
私はマズったと言う顔をしてシンちゃんを見る。
「俺の部屋が炎上したらお前の所為だからな」
本気なのかなんなのか良く分からない表情でシンちゃんは私にそう言ってくる。
「そんな炎上ダなんて」
乾いた笑いを浮かべて私はそう口にする。
いくらアラシが思いこみが激しい性格をしていたとしても…人様の部屋を炎上させるようなコトはしない…。
しないと思う。
きっと大丈夫の…はず。
ちょっと自信が無いけれど。
しばらくそんな事を自問自答していたら、凄まじい殺気が肌に感じてきた。
(まさかね)とか思ってると。
ダダダダダダダダダダダダダダダダ〜ッ。
凄い勢いの足音が私たちの居る、部屋に近づいてくる。
ガバッ。
激しくドアが開かれると、其処には殺気みなぎるアラシの姿が見受けられる。
「平等院鳳凰堂極楽鳥の舞!!!!!!」
「チィ…眼魔砲」
グウォッォォォォォォォォ。
眼魔砲と極楽鳥の舞がぶつかり合って、凄い音が部屋中に響き渡る。
シンちゃんがタイミング良く相殺していなければ、先の話通りにこの部屋は炎上していたことだろう。
「シンタローはんには…悪いんどすけど… は…渡しまへん」
アラシはシンちゃん殺気を込めた口調でそう言い切った。
「はぁ?」
私は一人状況が掴めずに、間の抜けた声をあげて…アラシとシンちゃんを見る。
「くっ…ははははは。取ったりしーねってアラシヤマ」
「ほんまどすか?」
「当たり前だつーの。そんくらい分かれよアラシヤマ」
疲れ切った表情で、シンちゃんはアラシに短く答えた。
「だから言っただろ 。親父に相談したらロクナ事が無いって」
「シンちゃんじゃ無かったらマジで此処炎上していたかもね」
「…そう言う問題じゃないだろう」
「あははははゴメン」
乾いた笑いを浮かべて、私は曖昧に答えた。
「アラシヤマお前大方、親父にが俺と結婚するとか言われたんじゃねーの?」
「どど…どうしてそれを〜!!」
「が親父に何か、相談したって言うからな。大方そんな事だろうって思ったんだよ」
「流石シンタロ−はん」
感心したようにアラシは手をポムと打った。
それを見たシンちゃんは私の方に目線を向けてくる。
「それより 。面倒だから、直接聞けば良いじゃねーか。俺が立ち会ってやるからよ」
シンちゃんに促された私は、軽く頷いて口を開いた。
「ね〜アラシ…私とアラシって幼なじみだよね」
「そうどすな〜幼なじみどすな〜」
ニッコリ笑ってアラシは私の質問に答えてくる。
「じゃ〜幼なじみって友達じゃ無いの?」
私が紡ぎ出した言葉にアラシは少し顔を顰める。
「幼なじみは幼なじみで良いでしゃろ」
「アラシ良く友達居ないって言うけど…私はアラシの友達でもないの?」
「…」
私の言葉にアラシは押し黙って、ただ黙っていた。
「何か言ってよ…」
沈黙に耐えられなかった私は口を開く。
「 は…何で形にこだわりますの?」
「形に拘ってるのは…アラシの方じゃないの?私は純粋に疑問に思っただけだよ」
「ワテかて…純粋に友達が欲しいと思っとるんどす」
「だから〜何で?」
「シンタロ−はんが、友達になってくれはれば何ら問題は無いんどす」
「だから…俺を巻き込むなって」
顔を引きつらせてシンちゃんは、すかさず突っ込み。
「コウモリのテヅカはんが初めて出来た友達だったり…根暗だったり…火だしたりしはりますけど…わて… がほんまに大事どす…それだけは信じて欲しいのですわ」
とぎれとぎれにアラシは言葉を紡ぎ出してそう言った。
「アラシ…」
私はアラシの言葉に胸がいっぱいになる。
「夫婦喧嘩は犬も食わね〜ってな。と言うよりアラシヤマお前がしっかり話をしてれば、この部屋が炎上1歩手前に何てならなかったんだぞ」
それを聞いていたシンちゃんは、溜息混じりにそう口にした。
「夫婦…良い響きどすな〜」
後半の話をサラリと聞き流したアラシは(まったくもって都合の良い耳をしている)
「お前人の話を最後まで聞けよ」
シンちゃんは脱力しながらアラシを見て呟く。
「で…結局私は、幼なじみって何なのか分からないままなのだけど…アラシが大事にしてくれてるのは分かったけど」
ちょっと2人のやりとりを見ていた私は、少し拗ねたように口にした。
「オイオイ話が始めに戻ってるじゃねーかアラシヤマ」
シンちゃんは、溜息を一つついてアラシを軽く小突いた。
「そげん言われはっても〜」
アラシも困り顔でシンちゃんを見る。
「仕方がないな〜アラシわ…」
私は溜息混じりにそう呟く。
「アラシは私のこと好き?それとも嫌い?」
「へ?」
「2択よ簡単でしょ」
「簡単と言えば簡単どすけど…極端な」
「良いから答える」
私はピシャリと言い切る。
アラシはまだ何か言いたげだったけれど口ごもる。
「…」
溜息を吐いて、譲歩すべく口を開く私。
「じゃ〜それは、友達としての好き?それとも違う好き?」
「違う好き…好きどすぇ。」
「それは嫁にしてくれるってこと?」
「さえ良ければどすけど」
「あら?私が断るとでも思ったの?」
「それは〜」
「アラシが嫌っていっても逃がさないから、安心してちょうだい」
声高らかに私はアラシに宣告した。
いや…宣言した。
「さてと、 との誤解も解けはりました所で…いい加減ワテの友達に成ってくだはりますやろうかシンタローはん?」
服の汚れを軽く叩き落として、アラシはクルリとシンちゃんの方を向くなりそう言った。
(ん〜アラシったら何時になく真剣な顔しちゃって…ちょっと妬けるかな)
「何故そうなるんだアラシヤマ!!」
「パプワ島で約束は嘘だったんどすか?」
「いや〜何て言うかな〜はははは」
シンちゃんはアラシに詰め寄られて、かなり乾いた笑いを浮かべている。
(何か私なんかより数段会話も長いし…楽しそうなのは気のせい?)とつい思ってしまいながら私は両者の会話を黙って見ているしかなかった。
ぼんやりとやりとりを眺めている私に、アラシは不意に声をかけてきた。
「悪いんどうすけど…ワテはコレから、シンタローはんと交渉しますよって…また後でゆっくり話しましょうな〜」
そう言い残すとアラシは逃げるシンちゃんを追いかけて行ってしまった。
(当分私の焼き餅は続きそうなだな〜っ)と心の中で溜息をつきながら、シンちゃんをおかけているアラシを見て心底そう思った。
「でも取りあえず…脱幼なじみしたみたいだし…恋人に昇格したからよしとするかな」
シンちゃんを追っていく、アラシを見て私は人知れず呟いた。
**おまけ**
「アラシヤマ、お前いい加減あきらめろ」
「そうはいきませんな〜シンタロウーはん」
「と上手くいったんだったら、友達要らね〜だろ」
「それとコレは別物お話ですわ」
「お前我侭だぞ」
顔を引きつらせてシンタロウはアラシヤマを見る。
「コウモリしか友達おらへん彼氏やったら、が可哀想だと思いませんのシンタローはん」
遠い目をしながらアラシヤマはシンタロウに返す。
「だぁ〜から、俺以外にも人間はいるだろ!!!」
「約束しはりましたやろ」
「忘れた」
ピシャリと言い切るシンタロウ。
「地の果てまで追いかけますから、覚悟はよろしいおすか?」
「そう言うのは に言ってやれ」
半ば投げやり気味にシンタロウはアラシヤマに言い捨てる。
「地の果てまで追いかけなくても、 に追いかけられますからええんどす」
満面の笑顔をシンタロウに言い切るアラシヤマ。
「だぁ〜!!何気に惚気るな!!」
「つー訳ですんで、仲良うやりはしょうシンタローはん」
「頼むから俺を巻き込まないでくれ〜」
END
2002.8.30 From:koumi sunohara