童心とクリスマスと大人
街に流れるクリスマスソングに赤と緑の装飾にイルミネーション。
街の一番目立つ所に存在する巨大クリスマスツリー。それらの準備が始まると、クリスマスが近づくとしみじみ感じるのは、日本人ならではかもしれない。
宗教としては、キリスト教という訳では無いが日本ではイベントとしてのクリスマスが主流であろう。
かくゆ俺もクリスマスはイベントとしか感じていない人間の一人だったりする。とは言うが、俺の住む研究所は山奥で先程のクリスマスソングやらイルミネーションやら、飾りやらモニュメントなんかとは無縁である。
精々、ロボット工学を教えている、グンマとシンタローが話す内容でクリスマスだと感じる程だ。隠居した仙人というか、世捨て人と言うのか、そんな生活と元々研究者だったりガンマ団に所属した為かあまり気にしない事が多かった。
しかしながら、そうも言っていられなくなった。
まぁ何だ、アレだよアレ…グンマとシンタローが一般的な子供の感覚が薄いって事に気づいた所為だ。元々、あの二人はガンマ団の総帥の息子と甥である。
普通とはかけはなれていると言える。
俺だって元ガンマ団員である訳で、普通とは言えないかもしれないが、一応一般家庭で育った為、ある程度一般人の感覚はあると思う。シンタローやグンマに比べるとだが。この二人は色々、常識はずれである。育てるのが総帥と竹馬の友のマットサイエンティストで、親バカでグンマ馬鹿な訳で、ドロドロに甘やかす、総帥と竹馬の友が目に浮かぶ。
覇王の子供なのだから、多少の甘やかしは仕方が無い事ではあるだろうが…覇王になるのなら、厳しさや普通の事も知らねばならないと俺は思う。
女や金…欲に溺れて、玉座から転落した王は歴史の中に幾人も存在する。
賢王と呼ばれる人でさえ、一歩間違えば愚王になるのだ。
まだ柔軟な子供時代の教育が、彼らが大人になる時にかならず影響を与える。
まぁ…俺としては、別に俺の子じゃ無いからどうなろうと直接関係無い。関係無いんだが…あれだよ…あれ…一度関わってしまったら、何かにつけて気になるって性分な訳で…少しでも、俺がどうにか出来れば良いと思ってしまうんだ。
(つったく…損な役回りちゅーか…性分だな俺って)
そんな事を思いながら、俺はどうしたものかと思案する。
(そもそも…シンタローとグンマ…クリスマスの事分かってるのか?ハロウィン時の事もあるしなぁ〜…そうだ、今度の勉強会のテーマをクリスマスにしよう)
俺は、次回の勉強のテーマをクリスマスにして少しでも子供らしい事を自覚してもらいたいと思っていたのである。
----勉強会の日。
何時も通りに集まった、二人を研究所で出迎え、俺は早速本題へと移った。
「んじゃ。クリスマスについて、シンタローとグンマの分かる事を言ってみな」
「さん、俺知ってるぜ」
「ん?じゃあシンタロー答えてみろ」
俺がそう言うとシンタローは自信に満ちた表情で答えを紡いだ。
「サンタクロースと親父が俺の欲しい物をくれる日だ」
胸を張り自信に満ちたシンタローの答えに俺は小さくため息を吐いた。
(やっぱりか…まぁ、この位の年代の子供はプレゼントでいっぱいだよな)
「まぁ…半分正解」
「えーっ半分かよ」
俺の答えに文句言いたげにシンタローは言い返す。そんなシンタローは置いて置いて、俺はグンマにも尋ねる。
「グンマはどうだい?」
そう尋ねるとグンマがおずおずと口を開いた。
「チキンとかクリスマスケーキとかご馳走を食べて、クリスマスツリーを飾って、枕元に靴下をかけます」
指を折ながら答えるグンマ。
(シンタローに比べたら普通に子供らしい解答だ。マットサイエンティストの割にはちゃんと教えてるんだな高松の奴)
俺は少しだけ竹馬の友を見直した。
「そうだな。日本のクリスマスはそんな感じだ」
「やったー!高松が教えてくれたの」
「そうか。まぁソレもありなんだが、クリスマスは…簡単に説明するとキリストの誕生日だ。キリスト教徒がメインの行事といってもいい。で、サンタクロースって奴は、教父聖ニコラオスていうのがモデルになってると言われてる。でだ…貧しさのあまり、三人の娘を嫁がせることの出来ない家の存在を知った。ニコラウスは真夜中にその家を訪れ、屋根の上にある煙突から金貨を投げ入れる。それで、娘達は身売りをさけられたていう由来があるんだぞ
「何かむずかしいよさん。クリスマスはキリストの誕生日で、サンタは人助けした良い奴って事?」
「ざっくり言うとそうだな」
俺はそう肯定してから、続きの言葉を口にする。
「あくまで、先のはモデルって話だ。言い伝えが色々あるように、サンタに関するものも様々だぞ。シンタローやグンマの知ってるサンタの様に赤い服を着たプレゼントをくれる爺さんから、日本のなまはげみたいに、良い子にはプレゼントを悪い子には罰を与えるサンタも居る」
「「ええええ。ハーレム伯父(様)みたいなサンタ嫌だ」」
シンタローとグンマは声を揃えてそう言った。
(おい…ハーレム…お前の甥っ子達結構酷い事言ってるけど…お前なにしたよ)
心の中でそんな事を思う。
「ハーレムだったらケチだから物くれないんだぜ」
「うん。寧ろ何か取られちゃうよね」
「おいおい。例えだって。そもそもハーレムの話は置いておけって」
「でも先生。なまはげって」
「なまはげみたいなモノって言っただろ?良い子には褒美、悪い子には罰ってことだって話だ。別にサンタはなまはげじゃ無いぞ」
そう言葉にすると二人は、ホッとした表情になった。
「まぁアレだ。シンタローもグンマも良い子だったら心配無用って事だな」
ニッと笑ってそう言えば、二人はすぐに笑顔になった。
「だったら、絶対ハーレム伯父さんサンタさんからプレゼント貰った事無いぜ」
「そうだね。悪い子だもん」
そして思い出したようにシンタローとグンマはそう言った。
俺は乾いた笑いを浮かべつつ、二人に声をかける。
「どうかな?子供の頃だし…流石に子供の時からあんな感じじゃないと俺は思うんだけど」
「「良い子な訳ないよ」」
声を揃えてそう言う二人。
「まぁ…兎も角、今回はクリスマスに向けてシンタローとグンマには色々調べてもらいます。そして、クリスマスの準備を一緒にしよう」
俺がそう説明すると、二人は目を輝かせた。
「マジ?勉強は嫌いだけど…さんのするイベント面白いから俺頑張る」
「うん。僕も頑張る」
「そうか。そうか。でも、なるべく自分で調べるんだぞ。高松とかマジック総帥に極力聞かずにな。些細な事でも良いしな」
「「うん」」
「よし良い返事だ。でも、クリスマスは家族で過ごすだろうから、俺の所はイブイブだな」
「2回もクリスマス出来るしお得じゃん」
俺の言葉にそうシンタローは笑顔でそう言い、グンマも頷いた。
こうして、二人はクリスマスについて調べることとなった。
後日、調べた結果として…何故か、可愛らしいサンタの話では無く、悪い子に対するサンタの罰について発表される事になろうとはこの時の俺は知る由もなかったのである。ともあれ、子供らしいかはさておき…一般とはかけ離れているがクリスマスらしい事俺は二人に教える事が出来たのであった。
おわし
2012.12.13. From:Koumi Sunohara