異文化コミニュケーションとクリスマス  

初めは一人きりの研究所で、悠々自適な研究ライフをしていた俺であるが、山の中で不便な俺の研究所には、有り難いことに研究員が何人か存在する。

初めは、運悪く山の中で遭難した訳ありの青年がどういう訳か居候になり…ガンマ団側から戦争の際に怪我をしたが、研究者であると言う理由での再就職先に何故か紹介されたりで、ポツポツと山の中の研究所に人が増えていった。

半ば自給自足に近い生活と、趣味の研究で給料は払えるのか不明だと言うのに、何故か研究員やいつくのだから良く分からない。

正直、ガンマ団を脱退したとしても客人は総帥の弟Sや怪しいマットサイエンティストの竹馬の友に…総帥の息子や甥っ子…特戦部隊の面々と言った、どう考えても一般人とは程遠いのにも関わらず、研究員になりたいと言うものが一般人からも来るのだから驚いてしまう。

別にハローワークやアルバイト情報誌に求人広告を出した訳でも、HPに場所を描いた訳でも無いのに、不思議と何かを嗅ぎつけて人は来る。

求人としての条件は極めて最悪なのに本当に不思議なのである。

何よりも、不思議なのが…一般人(一部ガンマ団からの再就職組がいるが)と現役ガンマ団関連の厳つい…そしてきな臭い連中とうちの連中が違和感無く過ごしている点である。

現在も…。

所長折角なので、研究所をイルミネーションで綺麗にしませんか?」

ニコニコとLEDライトの電飾を持った、女性の研究員が藪から棒にそんな事を口にする。

「え?こんな山奥にイルミネーション必要?」

突然の彼女の言葉に俺は首を傾げてそう口にすると、彼女は力コブを作って力説した。

「山の中だから綺麗なんじゃ無いんですか。そう思いませんかハーレムさん?」

たまたま、ただ飯を食べに来たハーレムに臆す事無く我が研究員の彼女は同意を求める。

「あ?電飾か…良いんじゃねぇの派手で」

ハーレムもハーレムで気を害する訳でも無く、そんな風に返す始末。

「ですよね。研究所内もツリーとか飾って賑やかにしようって皆で思っていたんですよ。ハーレムさんも賛成みたいだし。駄目ですか、所長?」

「うーん。って…皆やる気満々なのか?と言うか、クリスマスツリー何て無いぞ」

彼女の言葉と?皆”と言うワードに、内心(結構イベント好きだよなあいつ等)と思いながら、置いてあるはずの無いクリスマスツリーの事を思う。

(そもそも…クリスマスツリー無いしな…独身の研究所に立派なツリーがあっても如何なんだろう?買うのか?)

様々な想いにかられている俺に、いつの間にかやってきていたサービスが話に入って来た。

「クリスマスツリーなら、高松が用意するって言っていたから問題ないよ

「高松?グンマのお下がりってことか?って…サービス来てたのか」

「邪魔してるよ。快く、君の所の研究員が入れてくれたよ」

「そうか…まぁそれは良いんだけど…ハーレムも居るけどいいのか?」

「ん?ああ…獅子舞の事は気にしてないよ獅子舞だからね」

サラリと酷い事を言ってのけるサービスに、我が研究所の彼女は「あだ名つけあうぐらい仲が良いんですねサービスさんとハーレムさん」何て、本気の表情で言ってのける。
ある意味、一般人恐るべきである。

取りあえず、この双子については色々な意味でスルーなので、俺は先程のツリーの話を続けることにした。

「そもそも何で高松が、我が研究所のクリスマスツリーを用意するんだ?一番ケチなのに」

「ケケケ言えてるぜ。アイツ、サービスに4万借りたままだもんな」

「兄さんがにクリスマスらしいものプレゼントしたいって言いだしてね。クリスマスツリーを贈る事にしたんだけど、そのツリーを調達するのが高松の役目らしい。だから、高松はびた一文払わないけどね」

あっさりと、言いきる中に毒が含まれるのはやはり、4万円の所為なのかもしれない。

「つーか本当に兄貴はには甘いよな」

「まーね。この研究所もそうだし…破格な対応と良い確かに気にいってるよね。と言うより弟の一人にカウントしてるのかもしれないね」

兄弟そろってそんな言葉を口にする。

「だから、はクリスマスツリーの心配は無用て事だよ」

「でも、何か悪いよな」

少し唸りながら、俺はそう口にすると、少しばかり傍観者になっていた彼女が嬉しそうに口を開いた。

「良かったじゃないですか所長!!ツリーが貰えるなら、他の装飾とかご飯とか豪華に出来るんで節約になりますね」

ニコニコと笑うって言う彼女に、俺は少し頭痛を覚える。

(クリスマス装飾は最早決定事項なんだな…と言うかクリスマスパーティーに発展してるて一体)

「まぁ…良いんだけど。パーティーもする気何だ。と言うより、皆クリスマスは予定があるんじゃ無いのか?こんな山奥で過ごさんでも」

「皆さん問題無いですよ。ご家族も連れてくるって言ってる方も居ますし…ハーレムさん達も参加するって言ってましたし。あ…もしかして、所長デートだったりします?」

「いや…別に予定は無いが…」

「ああ良かった。所長には確認してなかったんで、すっかり失念してましたよ。これで、所長居なかったら、皆残念がりますし…盛り上がりますね。楽しみ」

我が道を行く彼女に結局、言い返せないまま俺は困った顔で他の研究者を見返すと「楽しみですね所長」と口々に言われる始末。

「浮いた分酒を沢山用意しておけよ

人の悪そうな顔をしながら、ハーレムはさも当然そうにそう言う。

(おおいおい、泣く子も黙るガンマ団特戦部隊隊長が一般人に交じってクリスマスパーティーかよ。ハーレムハーレムだけど、内の研究員も全然気にしてない所を見ると神経図太すぎなのか?)

自分の研究員のあんまりにも、気にしない様子に彼らの今後に一抹の不安を覚える。

「もしかして…サービスも参加するのか?」

恐る恐る尋ねる俺に、サービスは優雅な微笑みを浮かべた。

(ヤバ…何だか嫌な予感がする。この展開は…)

は知らないだろうけど、ここの研究員の提案でね、こういうイベントのために積み立てをしているからね、勿論参加するよ」

「え?積み立て」

「そう…夏祭りに、お盆…ハローウィンにクリスマス…正月…ひな祭り。細かいイベントから大きなイベントまでつつがなく、この研究所で楽しむために彼らが始めていたらしくてね。それに、俺や高松…珍しくハーレムも会費という名の積み立てをしていたんだ」

「知らなかった。そういえば、やけに最近はそういうイベントをしている気はしていたんだが」

「それ程、この場所とと言う存在が居心地が良いんだろうね。一般人とガンマ団関係者が、ごく普通に交流してしまうぐらいに」

「良いんだろうか?元の連中も居るけど…完全な一般人も居るんだけど」

サービスの言葉に、俺は納得しながらも心配になる。

「問題無いじゃねーの。が気にしてるより、結構あいつらもそれないりの覚悟でここで働いてるんだぜ。そもそも一般人がこんな研究所に来てる時点で肝座ってるぜ。元ガンマ団で…現総帥のお気に入りの、ロボット工学者であるの名前は色んな意味で有名だしな…それに、優男風の癖に俺らに遜色ない戦闘員だって事もな」

ハーレムが、俺の心情をさっしたらしくそう言った。

「んー前半は認めるけど…お前らと一緒にするなよ戦闘員に悪いだろう」

そう肩を竦めて口にしても、ハーレムは相変わらず人の悪い顔で笑い、サービスは少し肩を竦めた。そう言う仕草は本当に双子だと思う程よく似ている。

「癪だが…ハーレムの意見に同意するよ。は強いよ…戦闘能力は普通より上かもしれないけど戦略は目を見張るものがある。は敵に回したく無い存在だね。そう言う意味合いもあって、兄さんもを手放さないのかもしれないけど」

「ははは考え過ぎだし買いかぶりすぎだぜ」

「ふーん。まぁがそう思いたいならそれで良いんじゃないの」

「そうだな。だからこそ、此処に居る連中はと言う存在を求めた時点で一般人の枠からはみでてるんだろうよ。そこを埋める為に、お前に普通で居てほしいからきっとイベントするんじゃねーの?」

サービスの意味信な科白とハーレムの思いのほかまともな言葉に、俺はハッとした。

正直、普通の人間だと思い込んでいる俺自身も十分一般人とはかけ離れている事に気がつく。けして、綺麗な手では無い、直接的に手を染めてはいなくても…血なまぐさい自身…ガンマ団に所属して…社会の後ろ暗いものも見続けた目。凄すぎる人間が周りに居るせいで気がつかないが…何も知らない一般人にしてみれば俺も同じ穴の狢に過ぎない。

そんな俺の元に来た、ここに居る研究者達やその家族との交流自体が異文化コミニュケーションだと言うことを…。

(こんな時ばっかり鋭いんだよなハーレムは)

ハッとしつつそう感じた、俺は一つ溜息を吐いた。

「まぁ…辛気臭いよりは賑やかな方が良いしな。やるからには、ど派手にいくか」


そんなこんなで、俺を含めた一般人じゃ無い集団と一般人との異文化交流は一般人だと思っていた研究員達主導で繰り広げられたのである。

ある意味、一般人の方が色んな意味で強いのかもしれない。

おわし

2010.12.31. From:Koumi Sunohara

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