エース様の親友
緑間真太郎を一言で言うと“キセキの世代NO1シューター”と言う言葉で終了する。
少し知り合いになれば…そこに、“おは朝信者”やら“変人”とか…まぁオプションは色々つく。
(ああ…あとツンデレとかかな?少し前に付き合わされた、同中の練習試合見に行ったりするし…)
そんな緑間真太郎のチームメイトで一応相棒を短い時間であるがやっているが、不意に思う事がある。
真ちゃんに部活以外の友達がいるのか?である。
失礼なのは百も承知だが、結構…人見知り気質でおは朝信者の真ちゃんと普通に接する人間を考えると、同中のキセキの世代とバスケ関係の一部の人間と家族ってイメージである。
実際クラスでも知的で格好良い緑間君から、美形だけど頭の良い変わり者ってイメージが変化しているらしい。
そんなツンデレおは朝信者のエース様のバスケ関係以外の友人に俺は興味があるわけだ。
こんな面白い事は、一人で楽しむのもナンセンスって訳で、怒ると怖いけど意外につきあいの良い先輩に話を持ちかけてみる事にした。
「てな訳何スけど宮地さん、真ちゃんの友達ってどんな感じなんですかね?」
「知るかよ。自分で聞け」
「えー…気にならないんですか?ツンデレでおは朝信者のエース様の友達ですよ」
「お前が知らないもん、俺が知るか。それより、ちゃんと練習しろよ高尾」
全然喰い付いてこない宮地さんに、口を尖らせる。
「そんな仕草しても全然可愛くねぇからな高尾」
「まったまた〜。照れ屋ですね宮地さん」
「本気で木村の軽トラで轢かれてぇみてぇだなお前」
凄む声がワントーン低くなった事に、俺は両手を上げて降参のポーズをとる。
(ヤベ。マジで怒ってるポイな…そろそろここが潮時って感じかね)
心の中でそう思いながら俺は、ヘラリと笑う。
「やっぱり真ちゃんに聞いてみまーす」
そう言うと逃げるように宮地さんの側をソロリと離れる。
(でも、本当は絶対に宮地さんだって気になるはずなんだけどな〜)
懲りずにそんな事を思いながら、俺は相棒の姿を探す。
すると、大坪さんと緑間が話をしている姿を見つけて俺はすぐさまそちらに向かった。
「問題ありません」
「そうか…なら良いが。確か、お前のラッキーアイテムはサイババの写真だと思ったのだか…持ってるのか?」
「ご心配有難うござます。友人がその手の類に伝手がありますので」
何でも無いような口調でサラリと言うエース様に、俺は吹き出しそうになる。
(ブホ…サイババの写真ってかなり前のオカルトの産物持ってるってどんな友達だよ)
そんな事など知る由も無いエース様は平気な顔をしているし、大坪さんは微妙な表情を浮かべている。
(うん。至極まともな反応だよ…さすが大坪さん常識人)
心の中でそう思いながら、俺はここだと言わんばかりに会話に乱入することにした。
「しーんちゃん。何々、超難易度高そうなおは朝アイテム手に入っちゃう感じなの?」
おどけた調子でそう口にすれば、眉を盛大に顰めていた。
「問題無いのだよ」
「まったまた〜。サイババだよ…無理しょ」
「おい、高尾…」
俺の言葉に大坪さんは、たしなめるように口にする。
「ふん。信じないなら別に構わないのだよ」
メガネのブリッチを軽く押し上げてそう言い切る相棒に俺は何だかイラッとした。
「何だよ、緑間。おは朝アイテムねぇとマジヤバいって分かってんの?相棒として心配してんだけど俺」
「今回のおは朝アイテムに関しては心配する必要が無いのだよ。この馬鹿め」
「馬鹿とは何だよ、心配してんだぜ」
何時もより語気を強めてそう口にすると、ギロリと睨まれる。
そんな俺達に大坪さんが、たしなめるように口を開く。
「落ち着け、高尾・緑間」
「「…」」
「まったく。緑間のアイテムが手に入るなら万々歳だろ高尾、何が不満なんだ?」
呆れ顔でそう口にする大坪さんに、俺は
「何時も振り回されてるエース様のおは朝アイテムが簡単に手に入るって何か怪しいって言うか」
そう口にする俺に、後ろから来た宮地さんが不意に言葉をはさむ。
「大坪、高尾はまだ見ぬ緑間の友人って奴に嫉妬してるだけだぞ」
「はぁ?宮地さん俺そんな事言ってないですって」
「ああん?大体そんな感じだろが!大方、今回のアイテムだってその緑間の友人関係の伝手だろ…それが面白くないだけだろ高尾」
「違いますって。簡単に手に入らないおは朝アイテムをヤバい筋から手に入れてたら心配つー話で…」
宮地さんの言葉に俺はそう返すと、緑間は大きな溜息を吐いた。
「ヤバい筋などでは無いのだよ。親友なのだよ。中学時代から俺のおは朝アイテムを気にかけてくれる気の良いヤツなのだよ」
キッパリと言い切るその様子に、先輩方を始め俺も目を丸くする。
「あれか…キセキの世代…」
木村先輩がそう言いかけた所で、エース様は大きく首を横に振る。
「違います。はバスケ部ではありません。純粋に俺の友人です」
「「友人?」」
「はい。おは朝の事にも理解のある同志と言っても間違いありません」
「エア友達とかではなく?」
「高尾!!」
俺の言動に、大坪さんは嗜めるように名前を呼ぶ。
するとエース様は徐に携帯電話を取出し、電話をかけ始める。
数回のコール音の後、電話の相手が出たようであった。
「大変なのだよ」
開口一番がその言葉なのにどうかと思い俺は聞き耳を立てていたところ、エース様は携帯の音声をスピーカー機能に瞬時に変え、相手の声も聞こえるようになった。
『何?緑間君、そんなに慌てて高校そうそう因縁でもつけられたの?』
呆れたようなそんな口調で電話先の相手がそう口にする。
(え?女子なわけ真ちゃんの友達って?)
エア友達じゃない事に安心しつつ、電話先の相手に驚く俺。
周りの先輩方も驚愕の表情で見つめていた。
しかし、そこは我らがエース様我関せずに会話を続ける。
「因縁などつけられてないのだよ」
『だったら、変質者でも出た?大変そうだったら、すぐに向かうけど』
「変質者でも無い。何というか…」
『どうしたの緑間君本当に。今日はおは朝の順位悪く無いし、アイテムも持ってるんでしょ…まさか…高校でイジメにあってるの?』
「苛められてないのだよ」
『そうなの?明日のおは朝アイテムのサイババの写真はちゃんと私が用意するから別に何の憂いも無いと思うんだけど…』
困惑気味に言葉を紡ぐその声音に、苦虫を噛み潰したような口調でエース様が今回のあらましを伝えると、大きな溜息が聞こえた。
『ふーっ…緑間君…タカオとやらに伝えてほしいんだけど、いい?』
「ああ」
『そんなに心狭いと、緑間の友達やってられないよ。それと、喧嘩なら2倍で買い取って4倍で返してあげるとでも伝えておいてね』
「ああ問題無い、ハンズフリーにしてるから聞こえてるはずなのだよ」
『相変わらず変な所、常識無いよね緑間君。あんまりそんな事をばかり、してたらオカルトグッツ流してあげなし、赤様に密告するよ』
「な…色々説明が面倒だったんから仕方がないのだよ、そもそもが秀徳に来ていればこんな事にはならなかったのだよ」
『また、それ?緑間君も相変わらずシツコイね。頭の出来が違うんだから仕方がないでしょ…それよりもう電話切るよ。ちゃんと部活しろよバスケットマン』
そう言って緑間の親友のさんとエース様の電話は終了した。
「で、納得したのか高尾」
「はははは。うん、まぁね。しかも…何気に俺へのあたりきつくない?」
「仕方がないのだよ。今日はが楽しみにしていた、オカルト雑誌の発売日なのだから」
「それって八つ当たり?」
俺の言葉に、宮地先輩が言葉をはさむ。
「ちげーな。ジャンルは違えど、俺もみゆみゆの載っている雑誌の発売日に邪魔されたら不機嫌にもなる。しかも、糞くだらない事だったら尚更な」
腕を組んで頷く先輩に、俺は何とも言えない気持ちになった。
こうして俺は、会ったことも無いエース様の親友様に敵認識されたのである。
(まぁ…エア友達じゃないってだけ収穫なんかね…)
若干、ほろ苦い気分になったのだった。
おわし
2016.3.7. From:Koumi Sunohara