動機と同期  


紆余曲折を経て、私は緑間君とは異なる高校へ進学することができた。
昨年新設した高校で、誠凛高校。

校舎もピカピカで真新しい、2年目だがほぼ新品に等しいと感じるほどの綺麗さである。

私がこの高校にした理由は、自身が所属していた部活…占星術部の先輩が面白い部活を立ち上げたからというのが大きい。

その名も超常現象研究会。

占星術からオカルト…超能力…など、不思議と感じた物を調べる部活。若干一部の教師陣営からの圧力の為、表の名前は『占星術部』と語っているが紛れも無く超常現象研究会なのである。

実際問題、中学時代の占星術部も超常現象研究会とほぼ変わらない事を裏ではしていた。占いの事も、様々な占いとかしていたけど、実は本物の視える人…言うならば霊感体質な人々の巣窟だったし、オカルトが好きな人の巣窟だったのである。

その事を知らずに、カルト集団に入ることを危惧した緑間君によって勧められた部活である。

(おは朝情報の収集の先兵にするつもりだったんだろうけど…後から頭を抱えていたっけね)

あの頃の緑間君を思い出しながら私はそんな事を思った。

緑間君と離れたといっても、人のサイクルはそうそう変わらない。

中学時代は朝出会い頭に、おは朝の占い結果を言われたものだが…高校では…おは朝占いの運勢は、緑間君が律儀に自分の分と、私の分の結果を毎日メールで送ってくる。メルマガ感覚である。

ラッキーアイテムの催促なのかと思ったけれど、そうではなく彼自身も習慣が抜けないのか…相変わらずの人見知りで友人が出来にくいのか不明だけど、毎日続いている。その所為か、高校別れた筈なのに何だか別れたような気がしない不思議な感じである。

私は普通にクラスに馴染みつつ、超常現象研究会での一時を楽しんでいる。

それと驚いたことに、誠凛には中学時代の同級生の黒子君も在籍していた。
相変わらずの忍者かと思うほどの気配の薄さに、人類の不思議を感じずにはいられないけど…。

真顔で一度黒子君に直接言ったら…。

「そんな事を考えるのはさんぐらいですよ」

とやんわりと返された。

「黒子君、君さえよければ我が部と兼部してみないかい?」

「ありがとう御座います。ですが、丁重にお断りいたします」

「うん。相変わらずだね。知ってたけど」

黒子君の切り返しに私はそう返すと、黒子君は少し目を見開いた。

「知ってた?」

「ん…全中以降でバスケを辞めた黒子君なら、勧誘にのるかな?と少し淡い期待はあったんだけどね」

「はぁ」

「目を見えれば分かるよ。好きなものに真っ直ぐな目をしてるんだから、浮気するわけないでしょ」

私がそう言えば、黒子君は少しだけやわらかく笑った。

「アレだよアレ。立場は違えど志は同じでござるな!みたいな」

さん…どこぞの剣客ですか」

「まぁ。バスケ馬鹿な目って奴だよ。私はオカルト馬鹿だけど。ジャンルは違うけど、好きなものに真摯なのは同じでしょ。ぶれていない人に浮気は無理でしょ黒子君」

「そういった所なんでしょうね。緑間君と上手くいくところは」

「上手くいってるかな?」

「ええ。緑間君は嫌いな人間は側に置きません。高校に誘ったぐらいさんとは親しいと思いますよ」

確信に満ちた表情でそう告げる黒子君。

「同姓同士であれば、つける名前は親友でしょうか…異性だと恋人…まぁさんと緑間君はその枠には嵌まらない不思議な関係でしょうけどね」

「黒子君」

「何ですか?」

「そっくりそのまま黒子君に返すよ。緑間君は黒子君の事が嫌いなわけでも…バスケが嫌いな訳でも無い。キセキの人達って変人ばかりだけど…仲間という枠に嵌まらない不思議な関係だと思う。前に黒子君聞いたよね。“緑間君が変わったと思いませんか?”って。そして私は言ったよね。この世には不変的な物は無いよ…同じようであっても日々つねに何かが変わっている、人の成長も時間もだと」

「はい。言ってましたね」

「何時か。黒子君達が過ごしたような日になるかは分からないけど。違う形でも共に歩める日は来るかもよ。それに、黒子君イグナイトだかで…拳で語り合うじゃない。拳で語り合う友情もあるらしいしね」

「ん?イグナイトは、パスに使うのであって、攻撃じゃないんですけどね…まぁ…落ち込ます予定がありますから、彼が落ち込んでいたら慰めて上げて下さい」

思い出したようにそう告げる黒子君に、私はニヤリと笑みを返す。

「泣き言を言ったら考えるよ。一先ず、おは朝だけじゃ超えれない壁があると言ってあげるけどね」

「お手柔らかに」

「こちらこそ」

そう言って私は黒子君と会話を終わらせた。

その後、普通に昼を取って…午後の授業に出て、部活で過ごして。
学生の日常を過ごしつつ、不意に思う。

(緑間君か…黒子君が全中から姿を消してから、何気に覇気が無くなったし、荒行になっても緑間君には良い事かもね。緑間君風に言うなら…“良薬口に苦しなのだよ”ってね)

黒子君の下剋上を思い描きながら、下剋上された側の緑間君を想像する。

中々想像するのは厳しい感じはするが、世の中何が起きるか分からない。
明日突然世界は滅亡するかもしれないことを思えば、緑間君が黒子君に成敗される…説教を受ける事の方が現実的である。

(まぁ…変な人と言われても…結構居心地がよかったし…ここは、一つ黒子君に頑張ってもらわないと)

そう思いながら、不意に思う。

(人付き合い苦手な緑間君…高校でボッチだったらどうしよう)

緑間君の誘いを蹴って、誠凛に来た私は不意にそんな事を過った。

(たまには…私から連絡してみようか…)

私は、緑間君が帰宅したであろう時間を見計らって電話をすることにしたのである。


「部活お疲れ様緑間君今大丈夫かい?」

「ふん。か今更なんなのだよ」

毎日メールをよこす割に安定的なツンツンモードの緑間君に私は、こっそり笑ってしまう。

(本当に気位が高い猫みたい)

息を整えながら私は言葉を紡ぐ。

「まだ、根に持ってるの?ちなみに、私は占星術部にいるよって報告と、そちらの近況確認かな?」

「まったく。成績ならギリギリいけただろうが。そもそも、お前が秀徳を蹴って今高校にしたのは、占星術部関連であるのは明らかなのだよ」

「でも、そのお陰でおは朝グッツの恩恵にあずかれたんだから、良いじゃん。第一薦めたの緑間君だよ」

私がそう返せば、緑間君はグゥの根も出せなかった。

(きっと苦虫をかみしめた顔してるんだろうな)

なんて思いながら緑間君の言葉を待つ。

「占いだけなら文句はないのだよ。ただ、の部活はソレを隠れ蓑にしたオカルト集団ではないか。そのうち、魔物の償還やら宇宙人でも呼ぶのでは無いかと気が気じゃないのだよ」

「そんな召喚とか出来ないから」

「されたら、困るのだよ」

「まぁ、確実にムーに載るよね。でもさ、ラノベじゃないんだから無いよ。感化されすぎだよ緑間君」

がライトノベルを勧めるのが悪いのだよ」

「えーっ。何だかんだ言いながら続きをせがんでくるぐらい割りと気にいってる癖に」

「悪くないものもあるのだよ」

「相変わらずのツンデレさんめ」

「ツンデレ?そう言えば高尾もそんな事を言っていたのだよ」

「ふーん。緑間君のツンデレ具合を分かるとは通だね」

「軽く腹が立つのは何故だ」

「想像通りだからじゃないかな?」

「まったく。高尾に言われるより腹が立たないのは付き合いの長さなのか…何なのか…」

溜息混じりに紡ぐ緑間君に、私は何だかホッとした。

(人付き合い得意じゃないから…本気でボッチになるのではと思ったけど…友人できたみたいで何よりだわ)

「何はともあれ、緑間君も高校生ライフ順調そうで何よりだよ」

そう言って私は、通話を終わらせた。

私の高校生活は始まったばかりである。緑間君関連で新たな出会いが起きる事になるとは、この時はまだ想像もしていなかったのである。


おわし


2014.6.22.(web拍手掲載:2014.4.6.〜)From:Koumi Sunohara

-Powered by HTML DWARF-