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緑間君と言う人は真面目が服を着て歩いている様な人である。
成績優秀、優等生…運動もできれば…ピアノも弾く。
そんでもっておまけに、メガネ男子だ。

ダサい眼鏡男子じゃない…美形なメガネ男子そのものである。

漫研の友人曰く…。

「漫画から具現化したメガネ男子…眼福」

「ドS、鬼畜だったら完璧だ!!」

かなりトリップしながら、腐った発言をしながら悶えていたのも記憶に新しい。

そんな彼の唯一の欠点がおは朝信者である事だ。
毎日肌身放さず身に着けるアイテムはかなり鬼畜な物ばかり。
それを集める彼は執念すら感じるものだ。

でも馬鹿にしてはいけない。
彼のおは朝アイテムはある意味命綱に匹敵する程の必須アイテムなのだ。

何の因果なのか…おは朝アイテムが緑間君のバイオリズムにかなり影響している。
最下位でアイテムの無い日など…命の危機かもしれない。

そんな話を占星術部の部員に話したら、流石に嘘だと切り捨てられた。

「いやいや…嘘じゃないよ…本当の話」

真顔に正座でそう告げれば、その内の一人が盛大に眉をゆがめた。

「実は呪いのアイテムでは無いのか?」

神妙な面持ちで告げる言葉に、私は即刻否定の言葉を紡ぐ。

「いやいや…アレ無いと寧ろ緑間君に危険しか起きないから、おまもりみたいなものかな?」

中学に入ってからほぼ一緒に居る緑間君を思い返しながら口にすると、ボソリと誰かが呟いた。

「天は二物与えないなんて嘘だと思ったが…こんな呪い染みたステータスを持つ者が存在するとは」

考え深げに口にした。

「ラノベでもネット小説の設定でも、ゲームでも無いから…リアルだよ事実だよ」

私がそう口にすると、一同目を輝かせた。

「素晴らしい。実に素晴らしいぞ神楽君」

「は?」

人の不幸を素晴らしいの一言で片づける事に理解が出来ずに…思わず先輩だろうが何だろうが関わらず、そんな風に返した。

「分からないのか?これぞリアル研究対象であろう!!」

「研究対象ですか?」

「人のバイオリズムが占いに左右されるケースを研究できるまたとないチャンスなんだぞ」

興奮気味に口にする部員に私は顔が引きつった。

(自分もそうとう変だと自覚しているけれど…ここは、さらに酷いかも…)

緑間君が最後まで、この部に入るの渋っていたのには訳がちゃんとあったんだんだとちょっぴり痛感する。

そんな私の心情など知らない先輩のテンションは上がる一方である。

「オカルトを探求する者にとって…実に興味深い存在じゃないのか?神楽」

「まぁ…そうとも…言うのかな?」

若干引き気味でそう口にすれば、先輩は凄く不満げな表情を浮かべる。

「神楽だってそう思ったからここで話をしたんじゃないのか?」

さも自分が同志であると言いたげにそう口にする、その部員に私は眉を顰めた。

(オカルトは好きだけど…友人を実験体にしようとは思ってないんだけど)

眉間に皺を寄せて反論にでようと言葉を紡ごうとした時、意外な所から助け舟が出た。

「お前と神楽じゃ考え方がまったく違うぞ」

「え?先輩何処が違うって言うですか?」

「ん?そもそも、神楽がその緑間君とやらの相談をしたのは、友人の為に少しでも助けになるための方法を探すためのに口にしただけで、研究したいと思わないって点だろ?」

シレット言い切る先輩の言葉に私は目を瞬かせた。

「何だよ神楽ハトが豆鉄砲くらったような顔になって」

「先輩もてっきり研究対象って言うのかと思って」

「おいおい。俺だって、神楽と同じ様にそこまで人間捨ててないってーの。一般人の中でオカルト楽しむにはある程度の、一般人の感覚が残っていないとまずいしな」

肩を竦めてそう口にする先輩。

(確かに…ある程度隠しながらじゃないと生きにくい世の中だよね。うん…ある程度の一般的な感覚はとっても大事…)

心のにそう思いつつ、人目をはばからずに…おは朝グッツを持ち歩く、緑な友人を思い浮かべて…先輩の言葉に納得する。

「で…少なくとも、少しは緑間のデーターあんだろ?ひとまずソレ出せ」

簡潔にそう口にしながら、私に手のひらをヒラヒラさせる先輩。

(データー…まぁ…確かに記録したものはあるけれど…)

先輩がさも当然に言う言葉に、思うことはあるけれど私は鞄からスケジュール帳を出した。
実はこれは、緑間君と関わるようになってから付けている緑間君とおは朝占いの簡単な記録を付けているのである。

(最初は、ラッキーアイテムの傾向と対策をって思って付けてたんだけどね…)

緑間日誌になってしまったスケジュール帳を先輩に渡しながら、私はこっそりそんな事を思った。

無言で緑間日誌を受け取りサッと目を通した先輩は、眉を寄せた。

「おは朝アイテム…マジで鬼畜だな…」

「本当に誰が占ってるんですかね」

先輩の言葉に私は、そう返す。

「そして、この占いに左右される緑間の今後の行く末が心配になる神楽の気持ちも分かった。これはかなり根深いぞ」

一息吐いてそう口にした先輩に、周りの部員も息をのむ。

「いっそうお祓いに行った方がいいかもな」

「えっと…」

「まさか神楽」

「はい。すでに、試したんですけど…駄目でした…湯島天神ですけど」

乾いた笑いを浮かべると全員一斉に固まった。

「学問の神様だとはいえ…雷神菅原道真公をもってしても駄目だと言うのか」

そう呟き先輩は部員を見渡し重い口を開く。

「諸君…聞いただろう。冗談じゃすまない…根深さを…これは神楽一人で対処するレベルは最早超えていると思わないか?」

「そうですが…我々で手に余る案件じゃないスかね?」

「まぁ…そうだが我々にもできる事があるだろ?」

「ん?」

「ラッキーアイテムを用意する事だ」

「おおお」

「ごく一般的なリア充には用意の出来ない品々は緑間氏には用意できないだろう」

「ついでに、彼のおは朝とバイオリズムチエックする必要もあるかと」

「おおお」

相談者の私を置いて、どんどん話は盛り上がっていく。

(結果オーライとはまさにこのことなんだろうか?)

とりあえず、こうして我が占星術部を巻き込んで緑間君のおは朝アイテム探しの部隊が完成したのである。
後に、この規模が拡大していくのだが…この時の私は知る由もなかったのである。


おわし


2018.7.26(web拍手掲載2016.6.21.) From:Koumi Sunohara
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