お月見の必要事項  


夏の空から、秋の空に変わる頃。
少し、残暑を残しつつも夕方の風は少し冷ややかさを感じる。

空を見上げれば、少し星の位置が変わり季節の移り変わりを示しているようだった。

8月が終わり9月と言えば、イベントは少ないがイベントはある。
そう十五夜である。

今でこそ、お月見をする人は減ってきているがけしてこのイベントをやらない人間が居ないわけではない。

オカルト大好きは、何気に日本固有の行事が好きな人種だったりする。
春は花見…夏祭り…お盆…大なり小なり、知っているイベントは外すことなくこなしている。

基本は自分の家の家族や友達…中学に上がってからは、不思議な縁で結ばれた…おは朝信者の友人の緑間真太郎と…嫌だとか良いとか関係無く、緑間を巻き込んで行っている。

まぁ…そんな巻き込まれる緑間も満更でも無いのだけど…。

そんな訳で、秋空の元と緑間は顔を突き合わせながら今月の行事…お月見について話し合いをしていたのである。

「緑間君、お月見を今回は本格的にやってみようと思うのだけど」

「そうだな。だが、何を懸念してる?」

「団子とか…準備は別に良いんだけど…折角本格的に用意するなら…起こりうるイベントのフラグも回収したいんだけど…このご時世で団子をつまみ食いする奴がいるか心配でね」

「成程…だが、適任が居るのだよ」

「え?青峰君とか?」

「確かに青峰もその可能性はあるが、違うのだよ」

緑間の言葉にが首を傾げると、不意に別口から声がかかる。

「灰崎だろ?」

声の方を振り返れば、其処には緑間の部活の先輩が其処に居た。

「虹村先輩」

緑間の反応に、は疑問符を浮かべながら乱入者を見やる。

「よう、緑間。十五夜の準備とは…イメージねぇな」

「俺に対してどんなイメージなんですか先輩」

「ん?生意気なハイスペックな後輩?」

その言葉に緑間は眉間を抑える。

「まぁ…考えれば、お前らも中学生なんだし…可愛気のあるところもあるかもしれないけどな。似合わねぇな」

「…」

「おいおい。緑間そんな顔すんなって」

肩を竦めて虹村そう言うが、緑間の眉間に刻まれた皺は実に深かった。

(凄くご機嫌斜めだ…おは朝の順位も5位って微妙だって愚痴ってたし…)

先輩後輩のやりとりに、は緑間に対して考察していた。

そんな中、と虹村の視線がかち合う。

(おっと…そういえば挨拶してなかった)

不意に現れた、緑間の先輩に挨拶をしていなかった事に気が付いたは慌てて、あいさつの言葉をつむいだ。

「えっと…と言います。1年生です…虹村先輩?」

「そっか、か。ああ俺が緑間のバスケ部の先輩の虹村だ」

にサラッと答えた、虹村は小柄なの頭を軽く撫でると、何時もより和らげた表情で言葉を紡いだ。

「でだ、何で灰崎かって言うとだな。青峰は基本的に優しいからな。所謂一つのガキ大将タイプ」

虹村の言葉に、緑間とは「ああ成るほど」と納得の表情を浮かべた。

「それに比べて、灰崎は…人でなしで悪がきだからな」

眉を寄せてそう口にする虹村の表情は実に苦い。

「えっと…やんちゃ童か…山賊ぐらいの差って事かな緑間君?」

虹村の言葉には自分なりの答えを緑間に尋ねる。

それは…」

緑間が言いかけた言葉に虹村が、笑いを噛みしめて被せてきた。

「ぷっ…、お前最高だぜ。良い例えだぜ大体、的を得てる」

親指をグッと立てて、虹村はを見る。

「女、子供に優しい青峰に対して…破落戸って感じで人のモノを盗る灰崎だからな…本当には的を得ているな。でもな…あいつがお月見のお供え食べるとは思えないって所だな」

「それは…」

虹村の言葉に緑間は口ごもる。
それを見ていたは、何か思い出したように口にする。

「灰崎クンって…あの何時も色んな女の子と付き合っている人であってるよね」

「「ああ」」

「それだったら、私に考えがあるよ」

ニヤリと笑っては二人にそう口にした。

「何だ妙案でもあるのか?」

「えっとね…この間食堂で…」

「「食堂で?」」

の言葉を促す様に二人はに尋ねる。
それに応える様に、は口にする。

「私じゃないけど、灰崎君と思わしき人が…人さまの肉だんごを横取りして食べてたんだ。だ

から、積肉団子を設置しておけばきっと食べるんじゃないかなって」

「確かにあいつ、肉団子を好んで食べてるが…流石に食べるとは思えないのだよ」

「肉団子ね…流石に盗み食いするか微妙だぞ」

渋顔を作って緑間と虹村は言葉を紡ぐ。

「その点も抜かりないよ」

ニヤリと笑うに緑間と虹村は首を傾げる。

「後は、魔王様にご神託を頂くからね」

「「魔王様?」」

の突拍子もない言葉に疑問符を浮かべる二人。
そこに…。

…魔王ってもしかして俺の事かな?」

効果音と効果にブリザードをおきそうなほど、冷ややかな声でその人はの後ろから声を掛けた。
は機械仕掛けの人形が錆びついた様に、ギギギギと声の方に首を向けた。

「あ…赤様…嫌だな〜はははははは」

乾いた笑いを浮かべ、すさまじい勢いでスライディング土下座を行う。

「失礼しました。赤司様。後生ですのでお許しを」

「ふーっ。俺の何処を見て魔王なのかは…の頭の中を見ないと意味が分からないが…オカルトマニアである事を免じて、聞かなかった事にしておくよ」

「有難うございます。赤様」

「まぁ…赤様って言うのもどうか思うけど、魔王よりはましだからね」

「いや〜懐の広いお方で。ハハハハハ」

突如乱入してきた、赤司ととのやり取りを、緑間と虹村は驚愕の表情で見つめていた。

「あれ?緑間君…どうしたのハトが豆鉄砲をくらった顔をして…後、先輩も?」

やけに静かな両者には不思議そうにそう言葉を紡いだ。

「ふふふ。緑間も虹村先輩のそんな顔は初めてみるね」

「へ〜同じ部活だから、結構見る機会あるんじゃないの赤様」

「バスケばかりだからな。こんな二人を見るのは稀だよ

「ふーん」

「大方、俺ととのやり取りに驚いたんじゃないか?」

赤司の言葉には納得いったと頷いた。

「緑間…驚かせてしまったようだが、と俺はひょんなことで知り合った知人だ…そんなに驚かないでくれ」

「驚くなって方が難しいと思うぞ赤司」

肩を竦めて赤司にそう口にする虹村に赤司は少しだけ意外そうな顔をした。

「それを貴方が言いますか虹村先輩」

「ん?俺?」

「俺以上にとの関係があると思えないのが先輩ですよ」

「ああ。まぁな…つーか、さっき知り合ったばっかりだし」

「成程…でも、との相性は悪くないと…そういう所ですか」

赤司はそう一人で納得すると、今度は緑間を見やる。

「緑間が不思議に思っているところ悪いが。話が長くなりそうだから、後日にしてもらってもいいか?」

「ああ。別に構わないのだよ」

「ありがとう。緑間。虹村先輩もそれで良いでしょうか?」

「ん?ああ」

3人のやりとりを見ては思う。

(最後に来た筈なのに、赤様完全に主導権を握っておる)

勢力の縮図をはそこに見たと思った。

「で…赤様。どのようにして灰崎君に食べさせるの?高級肉団子でも用意すればいいの?」

「いや。食堂の肉団子や市販のお惣菜での肉団子で構わないよ」

「え?そんなので良いの?じゃぁどうするの?」

「簡単だよ。お月見のお供えに貼り紙しておけばよいんだ」

「おう。食べるべからず的な?」

「それで、灰崎君食べるかな?」

「安心しろ。必ずあいつなら食べるぞ」

の問いに虹村は自信満々に言う。

(どんだけ人の物を欲しがり屋さんなんだろ灰崎君って)

赤司と虹村のやり取りを見ては思う。

「ねぇねぇ…緑間君。本当に大丈夫かな?」

コソコソとは緑間にそう尋ねると、緑間も同様に答える。

「ほぼ間違いなく、灰崎なら可能性はあるのだよ」

「そ…そうなんだ。まぁ何はともあれ、安泰って事だよね」

少し顔を引きつらせたものの、はすぐに切り替えてそう口にした。

こうして、緑間とそして赤司監修のお月見の準備は幕を開けたのであった。


結果としては、別に灰崎仕様のお月見肉団子を用意しなくても、団子泥棒が出たとという…そんなお月見だったと、後には語るのであった。


おわし

2015.12.3.(WEB拍手掲載:2015.9.17.)From:Koumi Sunohara

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