苦手を克服する方法(2)

強靱な胃袋を持つ藤代の事を侮っていた、は信じられないモノを見るような目で藤代を見ていた。

(良く食べるな〜、何が「余ったモノで、良いから!」だ〜?これだけ食べても、スピード衰えないくせに…良く言ったモノだ)

未だに、衰えない藤代の食べぷりに、完全に呆れる 。
運動系部活所属という、事で食べるだろうと思った は一応、夕飯用のご飯も藤代に出した。

それが、どうだろう?フードファイか?と思う程食物はミルミル藤代の胃袋の中に収まってゆく。

「藤代誠二君、君は、昼飯食べ損ねたのか?」

兼ねてから疑問だった、事を は尋ねた。
目に涙を浮かべ、藤代は を見る。
まるで、「良くも、聞いてくれました!!」と言わんばかり表情で。
藤代は、事の経緯を話し始めた。

「成る程、大変だな部活も」

ふむ。
納得した顔で、藤代の食いぷりを見る

さん、旨いよコレ!!」

口に食べ物を詰めたままの、藤代が器用に話す。

「口のモノ、無くなってから話せ。しかも、人参残すな」

(それにしても、なんであの状態で話せるんだろう?)

呆れ半分、感心半分では、藤代に答える。
人参を残している、藤代は嫌そうな顔をする。

「人参嫌いか?」

母親が、子供に聞くような口調で聞く。
首を縦に振る、藤代。

「…分かった」

「助かった〜」と藤代は、 を見る。
でも、藤代は自分予想とうは相反する答えが返ってくるとは思っても見なかった。

「じゃー1番小さいので良いから食べろ」

(何ですと〜!!)

驚愕の表情の藤代を見て、面白い奴だなーと見返す 。

(そんな、ことでコロコロ表情が変わるんだな〜)

「人参は、体に良いんだから、食べた方が“サッカー選手”としては、有利な事と思うけど?」

わざと、“サッカー選手”を強調する。

「それに、全部とは言ってないだろ?それとも、そのくらいも食べれないのか?」

“情けない”とわざわざ煽る事も忘れない、。

「た…食べれるもん!!」

1番小さい人参を、口に放り込む。
何ともいえない、微笑を は、浮かべていた。
まるで、「やれば、出来るでしょ?」と言ってる様にも見える。

「…不味くないよコレ」

不思議そうに、見上げる藤代。

「それは、良かったな」

ほんの少し が、無意識に微笑む。

(うわぁ〜、今の顔滅茶苦茶可愛いなvvv)

おもわず、“まじまじ”と の顔を見てしまう藤代。

「冷めるぞ」

そう、呟かれて藤代は我に返って、食べ始めた。
食後のお茶を、貰い“のほほん”とお茶をすする藤代。

「変わってるな…藤代誠二君、君は」

まるで、独り言の様なつぶやきに藤代は不思議そうに を見つめる。

「何で?」

「私の所に来て、初対面にもかかわらずして、自分の意見を通しまくり、食べ物を要求しているところとか」

藤代は、少々面食らった顔をした。

「俺も変かもしれないけど、 さんだって、初対面の俺に「じゃー1番小さいので良いから食べろ」て言うのも、変わってると思うよ」

してやったり、と言った表情を浮かべる。

「先のこともだけど、私の名前を知っていると言うことは…私の噂も知ってるでしょ?」

「うん…、何となく知ってるよ」

少し曇った顔をして、言う藤代。
その様子を、曖昧な表情を浮かべて は、窓の外を見た。
は、この学園の中でも有名な人物だった。

進学クラスにおいても、不動の学年TOP。
学校始まって以来の、天才児。
しかし、感情をあまり見せない事と、人に対して淡泊を通りこしてドライなのである(男子に対して特に)。

その為、 は“コンピュータガール”と呼ばれている。
反面進学クラスや、女子生徒達は、 を“女教皇”と、慕う者達も多い。

というわけで、 はいわく付きの人物として、名を轟かしているのである。
本人の、気持ちとは関係なく。
だから、 は疑問におもったのである。

「だったら、余計変わっている。普通ならば、厄介な者に近づかないのが、無難だろ?」

溜息まじりに、呟く。

「そうゆう、もんなのかな?」

「一般的には」

(だから、変わってると言っているのに…)

振り返り、もう一度藤代をみる。
藤代は、何か思いついたのか“そうだ!!”とか、叫んでいる。

「誰かに似ていると思ったら、桜上水の不破に、似てるだよ さん」

“うんうん”と感心する藤代。
は、少し考えこんでいるように見えた。

さん…不破の事知らないだよな〜。しかも、不破に似てるて言うのは…恩知らずだよな〜俺)

が、言われたことに悩んでいると思い、ちょっと罪悪感にかられているようだ。
が、藤代を凝視する。

「ゴメン、先の忘れ…」

弁解の言葉は、 の溜め息によって、遮られる。

「不破か…少し似てるかもしれないな〜」

「へ?」

思わぬ の発言に間抜けな声をだしてしまう藤代。

(何で、 さんが“あの不破”を知ってるんだ〜)

藤代は、困惑しまくっていた。

(自分で言っておきながら、あんなに困惑されたら、私の立場ないな)

藤代を見て、 は苦笑する。

「チャット仲間だから、知ってるんだ…不破の事はね」

狐につままれた顔の藤代。
お構いなしに、 は話を続ける。

「不破と会話してると、どーも口調が移ってしまって…困るだよ」

クスクス笑う。
どんどん、表れる の意外な一面に藤代の顔もほころぶ。

(何だか、 さんて面白い人だな〜)

藤代はふと、そう思う。

(もっと、フレンドーリになりたいいな〜…、あっ!そうだ!!)

さん、お願いが有るんだけど」

無邪気に藤代が、尋ねた。

「何だ?」

嫌な予感を、感じつつも は聞く体制をとった。

「“藤代誠二君”じゃなくってさ、誠二て、呼んでよ!!!せっかく、仲良くなったんだし」

「仲良い?」

「そう!仲良くなったじゃん♪」

首を傾げる 。

(今日話しただけで、仲良し?…はて?)

「それに、フルネームの君付け、何か、嫌な感じがしたし…」

「スマン」

(確かに、フルネームの君付けは、失礼にあたるかもしれないが…何故、下の名前を呼んでほしいのだろうか?)

そんな意味を含めて、訝しそうに見てみても、相変わらず質問には、答えは無い。
それどころか、自分の意見を通す。

「だから〜誠二て呼んでよ」

(ヤレヤレ…またか、やはり私が折れないと終わらないのだな〜)

藤代誠二、本日何度目かの我が侭発動に、はすっかり慣れてしまったのか、すぐに答えを返してやる。

「では、藤代君と呼ばしてもらおう。面識が無いのに、呼び捨てと言うのは慣れなくてな」

少し困った顔で、藤代を見やる 。
本当に苦手らしい。

さんにも…苦手なモノが有るなんて、親しみ沸くな〜)

「えー、藤代君じゃなくて、せめて、誠二君て呼んでよ」

また、駄々子モードの藤代。
は眉間に皺を寄せる。

「藤代君…君は良く我が侭て言われるだろ?」

「うーん、そうかもね♪」

脱力する、
そして大きな溜息一つ吐いた後に、は妥協案を口にする。

「時間がかかっても、良いならな」

少し、譲歩してあげるあたり、 は実に大人だと思う。

「OK!じゃー、俺も名前の方で呼んでも良い?」

楽しそうに、聞く藤代。

(駄目て、言っても言うだろな〜)

そう思った、 は頷く。

「じゃー、 さんvvv今日は、本当に助かったよ!サンキュー」

曇りのない笑顔。
対して は、呆れているというか、疲れた表情で返す

キーンコン、カ−ンーコン

昼休み終了の、10分前の予鈴が鳴り響く。
調理室のドアに向けて、藤代は歩き出す。
そして、突然振り返り1言。

「ね〜ね〜、 さん何時もココに居るの?」

「まぁ、居ることが多いが」

「ふーん、そっか」

“ニッコリ”笑って藤代は「またね」と言って、調理室を出ていった。
その様子を は、“ぼーっ”と見ていた。
どうやら、藤代パワーに少疲れたようである。

(藤代君は、「またね」て、また来る気なのか?)

と思いながら、ちょっと複雑な表情をした、が溜息をついた。

(次の授業、寝てようかな…)

そんな事をぼんやりと思うであった。
    
2001.4.21.From:Koumi Sunohara

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