本気と書いてマジと読む

日韓開催の為時差も少ないのでWカップの開会式を藤代とはTVでリアルタイムで仲良く見ていた。

「やっぱ大舞台は違うな〜」

TVで華やかに行われているセレモニーをウットリと見ながら藤代はに言う。
その姿は王子様を夢見るような乙女を彷彿させるように…藤代の目は実に夢見がちな色が浮かんでいた。

は片眉を少しあげて呆れたような表情で藤代を見た。

(自分だって結構壮大な応援うけてるじゃない…何ウットリしているのだか)

強豪武蔵森のエースーストライカーにして、東京選抜に選ばれたり色々人様に羨ましがられる藤代のサッカーライフを思い出したは少し…いや心の中で完全にあきれかえっていた。
そんな表情を流石に読みとったのか、藤代はちょっとだけ不機嫌そうに口を開いた。

「な〜何呆れた顔しているんだよ

口を少し尖らせて藤代が抗議の声を上げてを見る。

(ヤレヤレまったく)とは心の中で思いながら溜息交じりに口を開いた。

「あのね〜誠二。向こうは世界各国の代表さん達の為の開会式なんだからあのくらい当然でしょ。それをウットリ夢見る乙女モードで見るのはいかがなものかしら?仮にも君は武蔵森のエースストライカーでしょうに」

米神を軽く押さえて、は言葉を紡ぎ出す。

「そんな事いったってさ〜サッカーやっている奴ならあの舞台に立ちたいって思うもんなんだぞ。それに俺は乙女じゃ無いだろ」

プクーッと頬を膨らませて藤代はに言い返す。

(そう言う態度がお子ちゃまと言うより、一昔前の少女漫画のヒロインぽいんだけどね…人参嫌いだし…)

普段の藤代の私生活を思い出して、は苦笑を浮かべる。

その間にも藤代の目は、うっとりと開会式を見つめていた。




しばらく藤代の話を軽く流しながら、はジュースを飲みながら雑誌に目を向けていると…。
藤代が突然ボソリと爆弾発言を漏らした。

「俺トルシエに日本代表に入ってくれって言われたらどうしょう」

クッションを抱えてボソリと言う藤代。

「ブッ」

藤代のとんでもない妄想的発言に、はおもわず飲みかけのジュースを少し吹き出してしまった。
お約束と言えばお約束なリアクションの

(な…今誠二何て言った?凄く笑えない様な冗談であって欲しい発言が聞こえたような気が…)

恐る恐るは藤代に目を向ける。

「何〜ジュース零してるんだよ。勿体ないだろ〜」

の持っているジュースのコップを指を示して言った。

(勿体ないって…普通なら…“ジュース吹き出す何て汚ね〜だろ!”と突っ込む所を…勿体ないですか…そんなに食べ物が大事なのかね君は)

眩暈を覚えながらは、トランス状態の藤代に目を向ける。

「小野とか不調気味だしさ。一応俺も代表とかに選ばれてるじゃんか…声かかっても可笑しくないよな〜寧ろ声がかかるはずだよな」

一人勝手に納得しながら、藤代はに言う。

(妄想?…何で、自分が選ばれると思えるんだ?…FWとかMFとかより…守護神をどうにかするだろう普通は…寧ろ…どうやって連絡がくるんだ?それとも新手の冗談?)

藤代の発言に、は走馬燈のごとく一気に思考が巡らせれた。

「誠二それ本気で言っている訳じゃ無いよね?勿論冗談で言っているよね」

恐る恐ると言うより、危機迫る表情では藤代に尋ねる。
尋ね方はもはや、疑問系ではなく肯定で聞いている。
それぐらい、は目が本気だった。

「勿論…」

(そうだよね…流石に誠二だってそこまで、馬鹿じゃ無いわよね)

 一人勝手に納得するに、藤代はさらに爆弾を投下。

「結構本気♪」

ニパっと笑顔で藤代は留めの一撃。

ゴン。

は思わずテーブルに頭をぶつける。

(本気なのね…ホロリ…嗚呼私彼氏選ぶの早まったかも…)

「…で。もし…もしもトルシエに要請受けるとしてもだよ。どうやってトルシエが誠二に連絡するのよ!しかも相手はフランス人なのよ!分かってるの」

椎名翼のマシンガントークも真っ青な早さで、は言葉をまくし立てた。

「へへへ携帯にかかってくるんだよ」

ヘラっと藤代は脳天気に答える。
のまくし立てに一行に答えずに、笑顔の藤代。

「だから〜奴はフランス人だって言ってるでしょ!ムッシュ フジシロ コマンタレブー?(やぁ、藤代元気かい?)とか聞かれたって意味解るの?」
 
一瞬困ったように顔を顰めて藤代は唸る。

「ん〜っ笑顔で乗り切れるのだぁ〜っ!!」

突然何処のプロレスラーみたいに、突如立ち上がり雄叫びを挙げる藤代。

「ガッツ石松のCMじゃないんだから」

スパコーン。

どこから取り出したのか分からないハリセンで藤代の脳天を叩く

「良いじゃん希望持つぐらいタダだろ?」

頭をさすりながら、恨めしそうにに文句を言う藤代。

「誠二の場合、“希望”じゃなくて“野望”…寧ろ…凄まじい“妄想”」

パンパンと片手でハリセンを叩きながらは冷たく言い放つ。

「ヒデーよ。俺が代表に選ばれるの嬉しくないの?」

飼い主に捨てられる犬のごとく、藤代はシュンとした目でを見た。

「あのね〜そう言う問題じゃないでしょ?それ以前に話がすり替わってるし!!」

「はぁ〜ロシア戦ぐらいには、電話来るかな〜トルシエからさぁ」

ツッコミを軽く流して、藤代はまたうっとりと呟いた。

「だから〜来るわけ無いでしょに〜」

のツッコミが部屋中に木霊していた。


しばらくの間藤代が、“トルシシエ”ネタでを苛つかせたのはまた別の話。



おわし

2003.11.18 From:Koumi Sunohara

-Powered by HTML DWARF-