友チョコにそって想いを忍ばせて  

バレンタインが近づく季節。
私の心は憂鬱に沈む。

周りの同級生が、恋人の為やら片思いの相手にあげるチョコレートを考えるのに浮足立つ姿は、ほほえましい。

少し前の自分も恥ずかしながらそんな風に浮足立つっていた時期も有った。
けれど気が付いた事が有って、素直に楽しめなくなっていた。

バレンタインの力云々では無く、好きと伝える事のリスクに気がついてしまったのだ。
マイナスからのスタートなら、それ以上悪くならないから、ある意味勇気を持って行動できるけれど、変に良い良好な関係だったら話は別だと思う。

弱いと笑うかもしれないけれど、学生で同じ空間に居るのが後1年以上になれば関係を崩すのが怖い。
嫌でも苦しくても、1年以上は同じ空間に居なくてはいけない。

そんなリスクを背負っての告白何て怖すぎる。
しかも…始めから勝負何て決まりきっている。
私の好きな人は別の子を見ているから。

可愛くて、一生懸命で、頼りないように見えるけれど、ここぞと言う時に芯が一本通った…私の好きな土浦君に言わせる所の“骨の有る女"。
同性の私から見ても、日野香穂子と言う友人は良い女だと思う。
何より私と違って自分に正直で真っ直ぐだ。

学内コンクールにも参加して、あっと言う間に土浦君と距離を縮め…もう1度彼に音楽の道を進ませた人。

(どう考えたって言える訳ないよね)

思い浮かべて自嘲を浮かべる。
かってに相手を思うけれど、好きって感情は地味に傷みを伴う。

好きだけど好きとは言えないのは、今の関係を崩したくない私の弱さ。
彼にとって当たり障りも無く話せる女の同級生と言う、友人なのかも曖昧な関係を崩すのが私は怖い。

そんな訳で弱い私は、友チョコにほんの少しだけ想いを込めるという分かり難い弱気な事しか出来ないのだ。
それも…女の子には手作り…その他の男の友人sには市販の物と言う…そんな区分わけしか出来なかったりするのだ。

そして今年も…。


来てしまったバレンタインデーの日に私は、営業マンが名刺を配る如くチョコを配り歩いた。
勿論本命である…片思いの相手の、土浦君にも例にも漏れずにチョコを渡した。

「何だよ俺だけチロルチョコか?」

盛大に苦笑を浮かべて土浦君がそう言う。

「嫌だよ〜土浦君。貰えるだけ喜ばないと」

天羽ちゃんが至極真面目な顔でサラリと言い返す。

「貰えるだけは兎も角、チロルチョコもチョコだしね土浦君」

謎のフォローをする日野ちゃん。
そう言いながら、私のあげたチョコのパウンドケーキを食べながらそう言う。

「そうそう私や日野ちゃんと冬海ちゃんと同じ手作りを貰えると思う方がおこがましいってもんだよ。それに愛の差だよ愛」

「愛の差ってな…まぁそう言われると身も蓋も無いが…」

やや疲れ気味にそう紡ぐ、土浦君が少し不憫で私はフォローになるかは分からない言葉を紡いだ。

「いやね…土浦君は料理上手だから…渡す勇気は無いってもんだよ。だからチロル」

「ん?俺そんなに口うるさいか?」

「いや…勝手な思いこみかな」

若干引きつった表情ながらも私は必死に、土浦君に言葉を返す。
それに対して彼は、相変わらず竹を割ったようなスッパリと言葉を紡ぐ。

「特に辛口評価するつもりは無いからな。の事だから加地と志水には日野達と同じやつだろう…仲間はずれみたいだからさ…次は気にせず寄越せよ」

「ははは…そうするよ。その時はお手柔らかに頼むよ土浦君」

余りにも意外すぎた言葉に、私も考えずに返事を返した。
そんなやりとりをして自分があまりにも深く考えすぎていたのだと痛感した。
自分の好きな人は…色んな意味で懐が広いようだ。

来年は本人からの許可も出た事だから手作りを送ろうと思う。
友チョコに少しだけ…特別な想いを込めて。

2008.3.10. From:Koumi Sunohara
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★後書き+言い訳★
久しぶりにコルダ夢です。
友人で片思いは意外に厄介な代物な気がするのですが。
接点が無いのも色々切ない…人は結構我が儘に出来ていますね。
皆が幸せそれがベストですが上手くいかないものですね。


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