夕 立 、 雷 。

−それを時に休息と呼ぶのかもしれない−

夏の天気は爽やか。
手で掴めそうな真っ青な青空に、絵に描いたよう飛行機雲。
照りつける太陽は、キラキラと眩しい。

けれど…その反面日本の夏は、梅雨と言う季節が存在するし…台風だってやってくる。
凄く晴れていて…雨なんか降る要素は見れないけれど…ハラリと空から降ってくる時もある。
勿論…その雨の中に雷が鳴ることだってある。

女心と秋の空って言葉が有るけれど。
秋の季節も変わりやすいけど、夏は何時だって突然だ。


仕事が何となく捗らない、それでも仕事があるのが社会人の悲しい宿命。
晴れ渡る青空…仕事するのが馬鹿らしいほど天気が良くて…(こんな日は公園の噴水側でアイスを食べたら美味しいのに…室内で仕事か…)と内心ぼやきながら仕事をしていた私に、神様は「じゃ…晴れ止めるか?」と思ったのか、突然午後から大雨になった。
まぁ実際問題、そんな理由で雨になったとは思えないけれど。

バケツをひっくり返した様に、降る雨。
幸い放課後の割と遅い時間だった為に、校舎に残る生徒はほぼ居なく…雨に不幸にあたる者は少ないように思う。


理不尽にもそんな事を思ってしまうのは、やっぱり私は我が儘なんだろうな〜としみじみ思う。
だから何となく、愚痴のようなぼやきの様に呟いてしまった言葉は…まぁ仕方がないのだと思いたい。

「これから変えるのに突然の雨なんて…秋じゃないんだからね…止めて欲しいわ」

小さな溜息を吐きながら思わず零れたそんな言葉。
私は勿論その言葉に返される言葉など、期待などしていなかった。
なのに…。

「何ださしずめ“女心と夏の空”か?」

「え?金澤…聞こえてたの?」

「まぁ…お前さんの独り言がでかすぎてな」

肩を竦める同僚のこの男に「悪かったね」と憮然と言えば金澤は、相変わらず気怠そうに言葉を紡ぐ。

「別に悪くは無いさ。それに天気はころころ変わるんだし気にしすぎだぜ。大方タマさんが顔でも洗ったんだろう」

「猫が顔洗う度に雨降っても困るけど…。そう言う事じゃなくて…夏なのよ秋じゃ無いの」

「そう言うもんかね〜」

「秋はね…何となく、納得できるのよ。だから傘だって持ってきたりするし」

言い訳じみた言葉を、雨に濡れる窓ガラスを見ながら呟く私。

「降るものは降るだろう。その内晴れるって」

煙草を口に銜えながら金澤は、お気楽極楽にそう返してくる。

「だってあれだけ晴れていたのに。詐欺だわ…天気予報だって雨が降るって一言も言ってなかったのに」

恨みがましく、止む気配の無い雨を見る。

「仕方がないだろ夕立ってやつなんだし。きっと遠くで雷もなってるぞ…少し音がするからな」

「音?雨の音しか聞こえないけど…やっぱり腐っても音楽教師なのね」

しみじみ言う私に、金澤は苦笑を浮かべた。

「腐ってもてね…何気に酷いこと言うよねお前さん。まぁソレがの良いところだけどさ」

「ソレは誉めてないと思う」

「まぁまぁ怒りなさんな。たまにわさ。こんなゆっくり何もしない日も必要なんじゃねぇの?とくに…お前さんの様な仕事の虫には尚のことな。だから雨が上がるまで、ゆっくりするのも悪く無いだろ。珈琲煎れてやるからさ」

言って私の横をすり抜けて、珈琲を煎れに行った金澤を見て私は少し気が晴れた様な気がした。
小休止のような夕立も…たまにわ悪くないのかもしれない。


おわし


2007.7.18.From:Koumi Sunohara


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