Believe Me



狂気に似た行動をとる兄をただ見ていることしか出来なかった

止めようと思った時には事はすで遅かった

自分がもっと強ければ…


そう思って後悔ばかりして私は兄の狂気を見つめていただけだった




でも気が付いた。
自分が見ているだけで何も行動を起こしていたいない事実に。
だから私は、待つのではなく動いて何とか兄の狂気を止めることにしたのだった。



流れ出した流水は、止まることを知らない

津波や、洪水を止めることが出来ないように


だから私のしようとしていることも、きっとソレと同じ事なのかも知れない。
兄様の狂気を止めること…。
それでも狂気には狂気の様に、私は止める事を決意した。


「こんな事は馬鹿げている」


ベルン国内の宰相や家庭教師の先生が私の考えを聞いたら、きっとそう言うに違いない。
それでも、私はただ見ているだけだなんて出来なくて…行動を起こすことを心に決めた。
その時側にいてくれたエレンと共に…。

初めは、彼女にも馬鹿げたことだと思うわれると思っていた。
けれど私付きのシスターであるエレンは、こんな馬鹿げた話に賛同してくれた。
それは彼女自身がシスターで…少しでも人の命を助けれたらという私と同じ思いがあったからかもしれない。

だけど…ミレディには言えなかった。

別に彼女の忠誠心を信じていない訳では無い。
寧ろ、世間知らずな私と…シスターであるエレンの二人旅よりも、ミレディが居てくれた方が私にとって心強い。
でも彼女は騎士。誇り高きベルン騎士。

幾ら私に忠誠を誓っているとはいえ、彼女は騎士であることを願い騎士の宣誓をしていると思う。
私の我が儘の為に、ミレディを巻き込むことは良いこととは言えない。


(それでももしも私が言えば付いてきてくれたのだろうか?)


不意に浮かぶ思い。

私を信じて…。

そう言い切れない自分の弱さと、地下に閉じこめられている現状に私は苦笑を浮かべる。
全て煮え切らない自分の不甲斐なさが蒔いた種。


(せめて…隙を見て脱出したエレンが無事だと良いのだけど)


巻き込んでしまった、心優しいシスターを思う。


どれくらたっただろう。
城内は騒然としていたが、不意に静けさを取り戻した。

そして気が付けば、安否を心配していたエレンと…見覚えのない少年が私の前に現れた。
解放されたのだと思ったのと、もう一つ彼女の無事に髪に感謝した。


(嗚呼神様有り難う…エレンを無事でいさせてくれて)


切に思う想いに浸るまもなく、助けてくれた少年はリキアの関係者で…重要人物だと言うことを知った。
そして私は、言うか言わぬか悩んだ。
だけど、曖昧にしても偽りをついてもきっと上手くいかないと思った。
だから、ミレディに言えなかった思いをぶつけるようにロイ様に事の真相を口にしたのだった。




ロイ様は真剣に話を聞き、彼の従人に咎められるのも気にせずに私の手をとってくれた。
それは、本当に奇跡と言っても良かった。だって私は、敵国の王女なのだから。

だけど彼は私を信じて向かい入れてくれた。

私はそんな懐大きな少年に感嘆し、出会ったばかりだというのに自然と話しかけていた。


「ロイ様」


「何でしょうか?」


やんわりと聞き返すロイ様に、私はゆっくりと言葉を紡ぎ出した。


「私本当の事を言うと、貴方に信じて貰えたことが奇跡に思えたのです」


「そうですか?ボクは戦いは無いに超したことは無いと思っています。傷つくのは力のない民だから…だから僅かな光明であったとしてもボクはそれに賭けたいと思いますよ」


「ですが。常識で考えればおかしな事です。それでも私をリキア同盟に連れて行って下さる事は感謝してもしたりません」


「そんな事を言うならボクも、貴方に会えたからこそ…戦いをさけることが出来るかもしれない奇跡に感謝してますよ。それに姫は、強い意志をお持ちです…その逆境を変えようとする思いに心を打たれたのかも知れません」


そう言われた私は、ミレディの事や事の経緯を詳細にロイ様にお話していた。



黙って私の話を聞いていたロイ様は、少し間をあけた後のんびりとした口調で言葉を紡いだ。


「何時かその方に会えたときに、姫の本当の気持ちを伝えれば…きっと分かってくれますよ」


優しく笑ってロイ様はそう言った。


「人に信じてもらいたいなら。自分の道を信じて、誠意を見せるべきです。ボクは貴方が信じて欲しいと言った言葉に心を打たれたしその瞳には偽りがなかった…ボクは姫の言葉を信じたいと思った…だから共に行動してるんです。だからその姫が大事に思ってる人も、きっとそうだと思うんです」


「ロイ様…有り難う御座います。目から鱗が落ちる思いですわ」


ロイ様の言葉に私は、心底そう思いながら言葉を紡いだ。
するとロイ様は…。


「ボクは寧ろ感謝した。今のことが無ければボクもきっと、貴方と同じ事をしたでしょうから…」


そう言ってロイ様は、彼の使える騎士達を眺めながらそう言った。
私はそれを見て、後悔ばかりの自分に勇気をもって向き直ろうと思った。


もしもこの先ミレディに会うことに成った時、私は今度こそ伝えようと思う。


「どうか私を信じて付いてきて欲しい」


その言葉を胸に秘め、私は私の出来ることをやり遂げようと心に誓った。




END


2005.1.19. From:Koumi Sunohara






★後書き+言い訳★
私的に思う、ギネヴィア王女の胸の内です。
特にミレディと王女との会話で、きっとあの時こうだったんじゃと思い立って出来た話です。
時間軸としてロイと行動する少し前から行動しはじめる辺りの感じです。
でも本当にこういった話って少ないんですよね…マイナー街道まっしぐらでしょうかね。
取りあえずおつき合い頂有り難う御座いました。


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