春…。
霧雨が降ることが増えたが新緑が芽吹き始める時期。
それは出会いの季節。 何かの変わる節目。
柔らかな風と薄紅の花びらの舞う優しい季節。
はみ出し者の自分ですら、何だか知らないが心が躍る季節だったりする。 ああでも別に花見がしたといか…花が好きだとかそういう訳じゃ無い。
ただ何と言うのだろう…暖かな日差しと、心地よい春風がそんな気分を生み出すのだ。 言うなれば秋にセンチメンタルな気分になる様な…そんな気分と言うところだろう。
何でだろう…今年の…この季節に何かが変わりそうだなどと淡い期待を持ってしまう。 根拠の無い予感と言うヤツだ。 だからだろうか…直ぐ側に居る…(と言っても春原の部屋なんだが…)春原に声をかけていた。
「なぁ春原…」
「ん?何だよ」
「今年何か変わったりするとお前は思うか?」
脈略もない言葉に春原は少し顔を顰めてから口を動かした。
「何だよ藪から棒に」
春原は何時も通りの間の抜けたと言うか…気の抜けたと顔というか…まぁそんな表情を浮かべてそう言ってきた。 なので俺は何時も通りの口調で返す。
「いや何となく勘だ勘」
そう言いきる俺に、春原は小さく唸ってから…何かを思いついた様に顔を輝かせて言葉を紡ぎ出してきた。
「勘ね〜…。まぁ今年は稀に見るほどの桜が満開だって言うしな…何か良いことは起きそうとは思うけど」
言いながら窓ガラスを示して「ホラもう微妙に咲いてる」と春原は言う。 何となしに俺も黙って春原の言う窓を眺める。
すると目に映ったのは闇夜に浮かぶ薄紅色の花びらは、ハラハラ舞い落ち緩やかな花の雨のように見えた。
「綺麗だな」
思わず呟く言葉に春原も「ああ」と短く相打ちを打つ。
「なんつーのかね…最近霧雨とか雨とか降って気も滅入っていたから…余計綺麗だな。こりゃー良いこと有るぞ」
ウンウンと頷きながら春原は言う。 そんな脳天気春原じゃ無いが…俺も何だか暗闇の中から出られそうな…そんな予感が何故かした。
雨の代わりに降る…花雨に
桜舞い散る長い坂道
何気ない新学期の始まりに
何かの始まる…何かが変わる
そんな予感が何故だかした
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おわし
2005.2.10. From:Koumi Sunohara
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